ITやデジタル産業というと、アップルやグーグル、フェイスブックのような米国企業をつい思い浮かべてしまいます。しかし現状はやや異なりデジタル分野において実は中国系企業が急成長し、市場も米国に匹敵する巨大な先進市場へと急成長しています。今回の中国北京・天津での視察で実際に観て、聴いて、そのことを強く感じました。

 

私は、数字中国新時代国際会議”Digital China in New Era”にて中国のAIIOTビッグデータ分野の企業家の皆さまの前でスピーチを行い、そのあとに企業家の皆さんと意見交換させて頂きました。

 

たまたま、Amazonのセミナーも同じ会場で開催されておりましたが、トヨタをはじめとするものづくり企業が天津市には集結していて、北京・天津はじめ世界のAIIOTビッグデータ関連企業も中国に集まっています。

 

 

現地で聞いた話では、中国では世界AI会議を開催しているそうですが、日系企業はあまり来ないそうです。

 

中国政府は20177月に、「次世代AI発展計画」を発表しました。これは、2030年までに世界のAI産業におけるリーダー的存在となるために、音声認識やロボット、自動運転車、スマートフォンなど、関連産業を含めて1,500米ドル規模のAI市場の創出を目指すものとなっています。

 

昨年128日に、中国共産党は国家データ戦略の検討会合を開催し、習近平総書記は、ビッグデータ戦略の実施と、デジタルインフラ施設の整備を進めることを指示。1213日には、中国工業情報化部が、20182020年における『AI略』の詳細を発表。

具体的には、AI家電や自動運転車、ロボット、医療画像診断、翻訳など8つの項目にわたる主要製品の開発拡大、AIの基礎となるセンサーやチップの飛躍的な進歩、AI産業の支援システムの構築などが掲げました。

 

米国に比べると後発ですが、中国は人口規模や政策の後押しで企業が膨大なデータを活用できる優位性があります。

 

国際連合貿易開発会議が発表によると、B2CEC市場規模(2015年)は、中国が6,170億ドルで、日本の1,140億ドルやドイツの930億ドルをはるかに上回って米国の6,120ドルと並ぶ圧倒的な規模を誇ります。

 

また、2015年の中国AI市場は前年比40%増の69億元、2016年は96億元、2017年は1366000万元と高速成長を見せています。来たる2023年には、市場規模が1000元を上回る見通しです。

 

さらに、20183月に世界知的所有権機関が発表した2017年の国別国際特許出願件数によると、中国は初めて日本を抜いて2位に浮上しました。

 

中国の3IT企業と称される「BAT」(百度(バイドゥ)、アリババ、テンセント)は、中国国内はもちろんのこと、海外への投資も活発化させています。

 

BAT」は中国だけではなく、世界のイノベーターを含む197社のAI・ロボット関連やMaaSMobility as a Service:サービスとしてのモビリティ)関連、エンターテインメントなどの急成長分野に幅広く投資しているそうです。

 

政府主導の『AI戦略』の強い推進により、IT産業は今後の中国の経済発展の新しいエンジンになる可能性が非常に高いと強く感じました。

 

このように、中国は国策として国中のデジタル化を進めていますが、世界の中で大きくリードしている分野があります。日本の企業はじめ世界の企業との間でwin-winの関係を築いていくことが世界中の人々の利益に繋がります。

 

ではそのような中、日本の政府の取り組みはどうなのか。

総合科学技術・イノベーション会議(CSTI)は、内閣総理大臣、科学技術政策担当大臣のリーダーシップの下、各省より一段高い立場から、総合的・基本的な科学技術・イノベーション政策の企画立案及び総合調整を行うことを目的とした「重要政策に関する会議」の一つとして機能しています。CSTIが重要な技術政策として掲げるSociety 5.0AIが重要な要素技術になっています。

 

20164月に第5回「未来投資に向けた官民対話」が開催され、AI研究開発目標と産業化のロードマップを策定するため、産学官の知見を集めて、横断的に人工知能について考える「人工知能技術戦略会議」を創設することを安倍総理が指示しました。これが国としての人工知能技術推進の第一歩です。

 

人工知能技術戦略会議をトップとしてその傘下に関係省庁や、各研究機関での研究の総合調整や産学連携が図られています。

 

日本が有する強みを踏まえた上で、AI技術とその他関連技術による産業化を目指したロードマップで、研究開発から社会実装までの一貫した取組を進めていくとしています。重点的に述べられている分野は「生産性」「健康・介護」「空間の移動」の3点。それぞれにおける出口産業を所管する関係府庁が連係し、研究開発から社会実装までの一貫した取組を推進していくとしています。

 

今回の視察で、こうした現実を直視し、日本としての国家戦略を更にスピードアップする必要があると痛感しました。

 

早速、事務局長を務めるAIIOTビッグデータ利活用促進若手議員連盟として議論を行っていこうと思います。

 

AIIOTビッグデータ利活用促進若手議員連盟事務局長

衆議院議員 石崎徹