おはこんにちばんは。4月16日に行われたまらしぃ様のソロライブの余韻に未だに浸り続けている、東北大学学友会卓球部、理学部物理系C2の佐藤凜征です。
皆がやるというブログなるものを始めて書くわけですが、何から書けばいいのか分からないわけで、というか書き方も知らないわけで。過去に先輩方が書いたことを見てみると想像以上に自由だったので私も自由に書くことにしました。自由過ぎるかもしれませんが。
なんて、この上なくありきたりな書き出しをしたのですが、私がテーマにするのは、これまでC2が書いてきたのとはかなり毛色が変わる「フリーホラーゲーム」です。
聞いたことがあるような無いような・・・って思う方が多いでしょうので、ネット上の定義(ガチガチの辞書に載ってる訳もなく)を引っ張り出してみます。
「フリーゲーム(ネット上で無料配布されているフリーウェアのコンピュータゲーム) の中でホラーゲームに該当するもののこと。」
(pixiv百科事典より)
「個人やサークルが制作した、無料で配布されているホラーゲーム」
(ニコニコ大百科より)
要は無料でできるホラーゲームのことですね。
「そうは言われても・・・あんまピンとこないんですけど。」
って言う方がいる筈なので、癪ではありますが最も有名なものとして「青鬼」を挙げておきます。多分この作品は知ってる方が多いと思うので詳細な解説は省きます。
が、一つだけ言わせてください。
「青鬼」は、「ホラーゲーム」じゃなくて、「アクションゲーム」です!!!(持論)
ということで、以下では次の作品のネタバレがふんだんに含まれます。プレイする予定のある方若しくはプレイ中の方若しくは実況を見てるところの方はご注意ください。
Ⅰ. Ib
Ⅱ. ママにあいたい
Ⅲ. オロホスの夢
Ⅳ. 魔女の家
あと、私の文才というか纏める能力がクソ雑魚なせいで、タイトル通り文字数いかれてるので飽きたらそっ閉じしてください。タイトルにもある通り、記事を分割するレベルです。察してください。一応、冨川主将には許可貰ってるのであしからず。
それに紹介するテーマの関係上、残酷な描写やショッキングな画像、筆者の精神的被虐・嗜虐嗜好を含むものとなっておりますので、そちらのほうもご注意ください。
Ⅰ. Ib
(1) 概要
フリーホラーゲームを語るにおいて絶対に外せないのがこの作品!!!もしかしたら聞いたことがある人がいるかもです。
この作品はkouri様が個人サイト「モノクロミュージアム」にて公開していて、2012年2月27日にVer1.00が公開され、最新版はVer1.07です。また、こちらは有料になりますがリメイク版が2022年4月11日にSTEAMにてリリースされたほか、このリメイク版が2023年3月9日にニンテンドースイッチへ移植され(無事購入!!!) 、2023年3月2日から12日に、本作品の舞台となる「ゲルテナ展」が渋谷PARCOで開催される (行 き た か っ た) など、10年以上前の作品ですが現在でも根強い人気があります。さらに、有志により英語版・韓国語版・中国語版簡体字・繁体字・ロシア語版・ドイツ語版・イタリア語版・ハンガリー語版が制作され、その人気が日本にとどまらないことが窺えます。
(2) ストーリー
「 両親と美術館に訪れた少女のイヴ。
色々な作品を観ていたイヴだが、ふと気がつくとひとりぼっちになっていた。
誰かいないか探し回っていると、美術館に異変が…… 」
(kouri様の個人サイトより)
イヴが訪れた美術館では、「ワイズ・ゲルテナ」という多数の絵画・彫刻などの美術品を世に残した芸術家の展覧会が行われていました。その中で出会ったある作品「絵空事の世界」と出会ったことをきっかけに美術館に異変が起き始めます。
壁や床に浮かび出てくる言葉に導かれ、ゲルテナが残した最大の作品「深海の世」に飛び込んだことで絵画の世界に迷い込んでしまいます。
その世界で、イヴは赤い薔薇を手に入れますが、どうやらこのバラが散ってしまったらイヴも死んでしまうよう。さらに美術館で見た作品「無個性」や「赤い服の女」なども動き出してイヴに襲い掛かってくる始末。
そんな中、
何故かオネェ口調でめっちゃビビりで、そのくせ頼れるし最高にイケメンな、青い薔薇を持つギャリー、
パレットナイフでマネキンをめった刺しにする、外の世界に出てお父さんに会いたいと言う、黄色い薔薇を持つ金髪碧眼のかわいらしい少女メアリー
と出会い、三人でこの世界を抜け出そうと先に進むのでした。
(3) bgm
この作品を語る上で絶対に外せないのが、美しくも不気味な世界を引き立たせるbgmです。
まずタイトルで出会い、イヴのテーマでもある、オルゴールによって奏でられる儚い旋律の「記憶」、
直撮り収録のクラシックギターで奏でられる落ち着いた旋律の、ギャリーのテーマである「かくれんぼ(Blind alley)」、
美しくもどこか狂気を感じるオルゴールによる旋律の、メアリーのテーマである「kugutu(傀儡道化)」
などなど、言おうと思えばいくらでも言えるのですが、まあ、どれを取っても最高なこと。もう最高過ぎて墓場まで持っていきたいくらいです。受験期は勉強用のbgmとして、今では作業や起床のbgmとしてお世話になっています。おかげの私の頭はゲルテナ展ですありがとうございます。
(4) 特に好きなところ
さて、一般的に、多くのフリーホラーゲームはマルチエンディング(複数の結末を持つ)であり、大体はハッピーエンド、複数のバッドエンド、そしてゲーム中のヒントや攻略サイトを見ないとわかるわけないトゥルーエンドがあります。
しかし、この作品は、ハッピーエンドも、バッドエンドも、トゥルーエンドもありません。ただ7個の結末があるだけです。その理由は後述します。また、このエンディングの分岐も、ほんの少しの行動の違い、会話の違いに依っており(それも割と序盤から)、全ての結末を見るには何周もすることが必要になります。
さて、全ての結末を語ろうとすると字数がえげつないことになるので、結論から言いますと、どのエンディングでも「全員で脱出する」ことはありません。
ある結末では花占いにギャリーの薔薇が使われ、ある結末では心が壊れた二人を置いてメアリーが念願の外の世界に出ようとするも閉じ込められ暗闇に一人ぼっちに、さらにある結末では偽物の母親に誘われ一人ぼっちになってしまうイヴ・・・実は、誰かが無事脱出できたとしても、必ず他の誰かが犠牲になるのです。これが先に述べた「この作品にはトゥルーエンドが存在しない」と考える理由です。
そして、私は、ここにIbという作品の最大の魅力が詰まっていると思うのです。
皆さんは「全員が助かる結末があってもいいんじゃないか」と思うかもしれません。
私はそうは思いません。この世界は、「入った人数と同じ分までしか出られない」というルールがあります。そのルールをぶち壊してデウスエクスマキナなんて、無粋が過ぎる。
何故私がここまで言うのか。それは、私が
「ただそう存在する(生きたい・帰りたい・夢を叶えたい)だけの無辜の人物が、努力とか過程とか苦労とか感情とか全部無視して、ただ理不尽に絶望させられる展開」
「誰かを理不尽に踏みつけにして初めて獲得できる幸福」
がこの上なく好きだからです。あ、創作のストーリーにおける話ですよ?現実においてはそうじゃないと・・・思い・・・ます・・・。だって(よっぽど嫌いな人じゃない限り)知ってる人にはある程度幸せになってほしいもんね。
この展開の何が素晴らしいかというと、どんなに頑張って幸せな結末に向かおうとも、心に虚ができることです。どんなに達成感で埋め尽くそうにも、絶対に埋まらない、晴れないこの靄が私を掴んで離さないのです。
幸せを掴んだはずなのに、どこか心に引っかかる感触。
そしてこの感触が、私がこれまで触れてきたどんな感触よりも心地いいのです。そして、自分でも本当にどうかと思うのですが、何よりも美しいものと思えてしまうのです。
(5) まとめ
ゲルテナやその作品達、花言葉について、ある人物の正体と夢と結末についてなど、正直まだまだ×∞語り足りませんが、文字数の関係で、ここまでにしておきます。この作品は、フリーホラーゲームの金字塔であり、ここで語るには空白があまりにも小さすぎるほどたくさんの魅力が詰まっており、リメイク前であれば無料でプレイできるので、ダウンロードしてその幻想的な世界を体験していただきたいです。
Ⅱ. ママにあいたい
(1) 概要
もうタイトルからして幸せになれなさそうな作品第一位(佐藤凜征脳内調べ)であるこのゲームは、野乃ノ之様の処女作でもあります。2018年4月22日にVer1.00が公開され、最新版はVer1.01Cです。現在はロシア語にも翻訳され、こちらも海外でも一定の人気があるのが分かります。このゲームも実況等で見たことがある人が少なくないかも?
(2) 登場人物
本作の独特な雰囲気をより味わっていただきたいため、先に登場人物の紹介に入ります。勿論、ネタバレをふんだんに含みます。
・6番目
本作の主人公。ストーリー開始時点で両腕と脳が無い。脳が無いため、はじめは理解できない言葉があったり、ことあるごとに馬鹿と笑われたりするが、とても優しい人物。性別は未定だったが、物語が進むにつれ男子として定義する。ママに会うため謎の空間を探索する。かわいい。純粋にかわいい。
・5番目(画像右)
6番目の双子の兄。ストーリー開始時点で両足が無い。しっかり者で、6番目に様々なアドバイスをしてくれる。双子の兄とは言うが、はやり性別は未定。それほど6番目に似てないかも・・・?イケメン。うん、単純にイケメン。
・1番目
長男。明るく、ふざけるのが好き。6番目を隠れん坊に誘ったりとムードメーカー的存在だが、実はいろいろ考えていたりする。長男とある通り男子で、年齢は生きていれば6歳。すでに死亡しており、ここにいるのは魂の存在。(つまり幽霊みたいなもん。この存在はみんな目が赤い。) 2つ目の画像のガチモードお兄ちゃん好き。
・2番目(1つ目の画像左。同画像右は1番目)
長女。冷静だがキツい性格で6番目や1番目に厳しく当たり、「きもい」が口癖。でもこの性格はママにされたことが原因なだけであり、根っこはとても兄弟思いで、特に妹である3番目のことを溺愛している。生きていれば4歳で、女性。1番目と同様死亡しており、魂として存在している。ツンデレっていいよね。
・3番目
次女で、6番目の姉。ストーリー登場時点(1つ目の画像)で、6番目と5番目を襲う「カンシ」により頭部以外を取られており溶けかけていたため、自身の脳を6番目に移植し、死亡する。その後、恋仲であった男性である「タネさん」と「くっついて」しまい、3番目の身体を持つタネさんとして6番目に協力する(2つ目の画像)。その特殊な生い立ち(?) により6番目からは「おねにいちゃん」と呼ばれる。敬語の常識人元気っ子見てるとこっちも元気になる。
・4番目
次男で、6番目の兄、3番目たちの弟。奇形で生まれてしまい、目が一つしかない。カンシとくっついており、4番目としての身体と意識と、カンシとしての身体と意識(6番目に「めだまさん」(下画像)と呼ばれる)を自由に入れ替えることができる。
自身を殺したママのことをひどく恨んでおり、同じくママの残酷さを知る2番目と「5、6番目を殺す(=ママに会わせないであげる)代わりに、5、6番目の体をもらう」という取引をし、双子を殺そうとしている。不気味。だがそれがいい。
(3) ストーリー
登場人物の紹介を見て、本作の世界に気づいた方もいるかもしれません。
固有名詞的な名前ではなく、「1番目」、「2番目」という機械的な名前、どこかで見た形の「タネ」、そしてどこか肉肉しい世界・・・
そう、この作品の舞台は「ある女性の胎内」なのです。そして主人公たち登場人物は皆「受精卵」であり、6番目の言う「ママにあいたい」というのは、出生したいということになります。
そして「カンシ」、即ち「監視」且つ「鉗子(=手術に用いる器具)」や、兄や姉が既に死んでいるという事実・・・これらから、ママは望まぬ妊娠と中絶を繰り返しており、今回も5番目と6番目を殺そうとしていることが分かります。また、中絶を繰り返しすぎたために母親の身体に限界が来ており、出生できても一人だけであることも発覚します。さらに4番目も殺そうとしてくるため、無事に出生するなんて夢のまた夢な状況ですが、1番目と3番目、なんやかんやで(ここかなり大事。実際にプレイしてほしい。) 改心した2番目の協力のもと、二人でママにあうことを目指していくのです。
(4) エンディング
本作もマルチエンディングとなっており、三つの結末と、ある結末にはちょっとしたその後のストーリーがあります。今回は、トゥルーエンドと、その後の話(条件も含めて)について書きます。
5番目の足を発見してくっつけ、ママへの道も開いたことで、当たると体を溶かす雨が降り、6番目の両腕が無いままですが、二人でママのもとへ向かうことになりました。また、ママもこの二人は、たとえどちらかしか産まれなくても、大切に育てたいと思うようになっていました。(ママの声は、道中にある口から聴くことができます。が、これ以外の聞こえてくる声は、私ですらここに載せるのを憚られるほど激鬱な罵詈雑言なので注意されたし。)
しかし産まれようとする道中、4番目と彼の操るカンシに襲われ、二人を庇い1番目、2番目、3番目が、二度目の死、とでも言うのでしょうか、を迎えてしまいます。さらにその最中に4番目も兄姉と一緒に逝き(ここもかなり感動。やはり実際にプレイしてみてほしい) 、ついにもう少しのところまでやってきました。(2つ目の画像の2番目大好き。やっぱツンデレっていいよね。)
しかしここで5番目が倒れこんでしまいます。どうやらくっつけたはずの足は既に腐り溶けかかっていたようです。加えて、5番目には心臓が無いこともここで明かされます。つまり、このまま産まれても5番目は即死、6番目は両腕が無い状態になるということです。
これではママにあえても幸せになれない、と、5番目は自分の腕を6番目に授けます。それでも二人で一緒にママのもとに行きたい、と訴える6番目に対し、
「なぁ 頼むオレの代わりとして
オレの腕を持って行って・・・
その腕でママを幸せにしてくれ・・・」
「はは! なんて顔しやがる
オレと似てるかっこいい顔がだいなしだぞ!
さぁ弟よ受け取ってくれ」
「またな」
こう告げて消えていきます。そして、6番目は一人、ママにあいに行くのでした。
これが、この作品のハッピーエンドでありトゥルーエンドとされます。というのも、他の二つのエンディングでは6番目は出生すらできないので必然これがハッピーエンドとなるわけです。一応、残りの結末のスクショをはっつけておきます。
また、ある二つのアイテムを持って、ある会話である選択肢をとった状態で、このエンディングに向かうと、その続きの物語を少しだけ見ることができます。
そのアイテムとは、「うねうね」と「ショウタ」。この二つが何を示すかは、ご想像にお任せします。ただ、普通にやってるだけじゃ「うねうね」は絶対に回収できません。そして回収しきったのが下の画像の状態です。
さて、エンディングを迎えた後、タイトルが表示されるわけですが、その画面がなんと、
このように滅茶苦茶バグリ散らかしています。そして「繝槭?縲√ヰ繧、繝舌う(文字化けを直すと『ママ、バイバイ』)」を選択すると、ムービーが流れます。
滴る血。
「どうして?」
血に染まる手と刃物を持つ少年の影。
「やっと 会えたのに」
赤い右目の笑顔の少年。
(5) まとめ
さあ最高に胸糞な展開と結末で興奮しすぎて文章をまともに打てるか不安ですがまとめていきます。
さて、この作品、中絶をテーマに添えた衝撃的な作品であり、一時期大きく話題になっていたのですが、やはり何度見ても「問題児」としか言いようがありません。しかし、独特ながら美麗なイラスト、どこか不気味な世界、そして鬱々しい展開には舌を巻くほかありません。
あと、カンシからの逃げも相当難易度が高い。というより、よくわからんアルゴリズムが組まれているせいで、まっすぐ逃げるのは無理。「遠回りこそが俺の最短の道だった」とでも言っておきます。(←ジョジョにわか)
純度の高い鬱を味わいたい人にはぜひぜひやってほしいですね。特に1番目、2番目、3番目、4番目の授精に至るまでの経緯やどう殺されるかは、結末に負けず劣らずの胸糞ですのでお勧めです。まあ、少しだけ教えるとすると、「鉄パイプ」とか「ハサミ」とかですね。
さらに、用いられるbgmも、フリーbgmが大半を占めますがそれでも世界をうまく表現しており、特に5番目が6番目に腕を渡すシーンの「オルゴールと弦楽のための小曲」は明るいながらも悲しい雰囲気を漂わせる素晴らしい曲になっておりますので、是非プレイする際はbgmにも耳を傾けてみてほしいです。
余談になりますが、この作品の世界観にかなり近しい(と勝手に思ってる)楽曲がありまして、こちらもかなりのお気に入りですので、そちらも一緒に紹介しておきます。カラオケで歌いたい。
「しう」MARETU様より
Ⅲ. オロホスの夢
(1) 概要
私が一番好きなフリーゲーム制作者の、やかろ様の作品です。ホラーがすべてを占めるわけではありませんが、どうしても紹介したかったので書くことにします。可愛らしいイラストともに描かれる、繊細なストーリーと細かい伏線が特徴的です。一通りクリアした後でも所々の要素に気づいて納得して、また深く見て・・・を繰り返してどんどんのめり込んでいくような作り方にはいつも感動させられています。
(2) ストーリー
「 ある部屋に置いてあった日記。
そこに書いてあったのは少年と少女のこと・・・そして誰かの夢の結末。 」
(やかろ様の個人サイトより)
誰もいない筈の大きな屋敷に訪れた一人の影。ある部屋に入ると、様々なものが散らかっており、そんな中で丁寧に置かれた日記を見つけます。片付けが苦手であろうこの部屋の持ち主の日記の記録を追体験することで物語は進行します。
「普段は誰も来ない私達の屋敷に、少年が訪れた」
大きな屋敷に訪れたのはユウという少年。なんでも、夢を叶えに来たのだそう。
出迎えた少女は父親にこの家に誰も入れるなと言いつけられたと言いますが、ユウは頑として帰ろうとしません。夢を叶えるためにこの屋敷の奥に行かないといけない、と。
そこで折れた少女は、自分も付いて行き、入ってはダメなところは止めると言い出します。父親の言いつけを守れてないのではと思いつつも、ユウは少女「オロホス」と屋敷を探索するのでした。
(3) 展開
さて、屋敷を探索することにしたはいいものの、これだけ広い屋敷なのに人の気配などなく、さらに子供の幽霊に何度も襲われるなど様々災難に遭います。さらに彼らはオロホスのことを異常に怖がったり、オロホスは元がふわふわしてるのもありますが、しょっちゅう要領を得ないことを言い、ユウを混乱させたりします。また、やっと人を見つけたと思ったら意味深なことをしか言ってくれないなど、なかなか一筋縄ではいきません。
それでも何とか子供たちの幽霊と和解し、着実に歩みを進めます。このあたりから、オロホスに考え方の変化、というか、ユウの夢とオロホスの父親の言いつけ、どちらを守るのかで葛藤するようになってきます。
ここで、オロホスはユウの夢は何なのかを尋ねます。
ここまで絆を深めてきたユウは、隠すことなく正直に語ります。
「変なことが村で起こっているんだ」
「皆がどんどん病気に罹っていってるんだ
誰も原因が分からなくて」
「僕のお母さんもその病気で死んじゃって
それに、今も村の人達は病気で苦しんでいるんだ」
「僕はその病気を無くしたい
それが僕の、夢だよ」
「皆が言ってたんだ、この屋敷が怪しいって
もしかしたら、病気を治す薬があるって思ったんだ」
このユウの告白に対し、私は分からない、と申し訳なさそうにするオロホスと共に屋敷の奥まで歩みを進めますが、そこで彼女が姉と呼ぶ「ソマン」と出会います。少しの問答を通し、彼女も父親の言いつけを守るためにユウを襲おうとしますが、オロホスの説得でなんとかその場を凌ぎます。その後も屋敷の奥にある、研究所、のような空間をまた別の幽霊やタブンに襲われながらも探索することになるのです。
そしてもう一人の姉である「タブン」に、揺さぶりをかけられるオロホス。「父親の夢」と「ユウの夢」、そのどちらを選ぶかで、この物語は分岐していきます。
ソマン姉さまかわi((殴
(4) エンディング・・・?
さて、ここからはこれまで通りにエンディングについてネタバレしたい・・・と思ったのですが、この作品の散りばめられた伏線や、どんでん返し、そして、私好みの結末、それらを此処で語るのは難しいと感じましたので、実際にプレイしてみてほしいと思います。(ずっとこればっか言ってんなこいつ。)
特に、伏線については本当にありとあらゆるところに散りばめられており、真実を知ったときに「あっ、あれはああいう・・・」という驚きと感動が幾重にも襲ってくる感覚を味わってほしいのです。びっくりするくらい細かいところまで作りこまれていて、筆舌に尽くしがたいです。
なんなら、その真実をじっくり考えながらプレイするのも一つの楽しみでしょう。一つ一つ考察しながら進めていくと、自力で真実にたどり着くことも十分に可能です。実際、同学年の後閑(私は彼がC2で一番博識だと思ってたり)がこのゲームを見た時、「ある真実」に一瞬でたどり着きました。ほんとに一瞬です。吃驚しました。因みに今ある情報だけでもその真実にたどり着けます。
(5) まとめ
さて、繰り返しになりますが、作者であるやかろ様の作品は
① 可愛らしいイラスト
② 細かく張り巡らせた数多の伏線
③ (私好みの)耐えがたい真実と美しい結末
が特徴であり、さらに多くの作品は、独自のゲームシステムを開発することで展開をより臨場感を持って味わえるように工夫されています。中盤から終盤にかけてのゲームシステム上の演出は、風邪を引いたのではないかと疑うくらい鳥肌が立ってしまうほど。その意図を理解したときの爽快感と絶望は、同時に数多の伏線がだんだんと回収され、少しずつ真実に気づき始めるころですので、相当なものです。本当にこれフリーゲームでいいの?ってよく思います。
また、やかろ様の作品のもう1つの大きな特徴として、悲劇の元凶も含めた登場人物の全てが、悪意の持たない、優しい人物であることが挙げられます。何なら、元凶の行動も(ただ無知であったり、人外であったり、人外になってしまったことにより視点が俯瞰的になったりしたため、価値観の違いはあるものの)善意であったり、ただの何でもない行為だったりと、理不尽としか言いようのない展開に悶絶してしまいます。あまりの絶望に闇落ちしちゃうキャラもいますが(だがそれも良き)、始まりは皆無辜であることが、ただ其処に其時にそのように生まれてしまっただけで悲劇が起こってしまうことが、真実を知ったプレイヤーの心をより深く抉りに来ます。しかし大好物なので私は興奮します。
私は見事にその鬱くしい世界に魅了されてしまっているので、やかろ様の他の作品を軽く紹介して締めさせていただきます。
(各紹介文はやかろ様の個人サイトより引用)
“1分で崩れ落ち、1分で埋もれ、1分で再生される。
ルールさえ守っていれば、この世界は壊れはしない。君の幸せはこの世界にあるよ。”
「星は吊られ、砂は。」
“誕生日プレゼントを買いにいった母親は子供達の元へ帰って来ませんでした。
全てを悟った少女は、”あなた”に手紙を送りました。”
「Human killing」
“上書きを繰り返す悲劇のお話”
「ウワガキアイ」
私がやかろ様に出会ったきっかけの、超大作にしてやかろ様の最高傑作。
“無慈悲に笑う者が泣いて、笑って、紡いで、壊して、呼んで、殺した、
そんなお話。”。
「無慈悲な笑顔」
特にこの作品は私のお気に入りで、各話のトゥルーエンドは、バッドエンドよりバッドな結末と表現するのが最も適しているとしか言えません。さらに、1、2話のトゥルーエンドでは先の「オルゴールと弦楽のための小曲」が流れるため、その悲惨さに拍車がかかっています。C2の武者若はこの作品でこの曲がトラウマになったそうです。稀に送り付けています。
しかもつい先日、フルボイスリメイク化が決定し、その完成が待ち遠しいところです。発表を見た直後は文字通り硬直してしまいました。授業直前に見ちゃったから全然集中できなかった。もう夜も寝れない。
さらに、やかろ様を支援することで入場できる「角兎図書館」も、フリープレイできるこれらの作品以上に心を抉ってくるので、精神的被虐嗜好の自覚のある人はこちらもお勧めです。特に、私のお気に入りの作品、「無慈悲な笑顔」の実質的な続きも描かれており、あの平穏はただの気休め、やっぱり彼女たちにはどこにも救いがないのかと狂喜乱舞してしまいましたね。各話を読むたびに悶絶しております。シャーデンフロイデ。ごちそうさまです。
私ですか?当然、支援しましたよ。一緒にアクキーも購入しました。かわいい。最高。しぬ。やっぱり賑やかな照様にはもっと泣いてほしいし、優しい色様にはもっと壊れていってほしい。心が強い四葉にはもっと頑張っていてほしいし、覚悟ガン決まりの雨にはもっと苦しんでいてほしい。
と、この辺で前編は終わりです。
こんな調子で後編も書いていくので、うわこいつきッつって思ったら無理に読まなくていいですよ。
じゃあ、ひとまずこの辺で。
CM入ります。