今回も批判覚悟で長文を投稿する。パーキンソン病とレビー小体型認知症についてだ。レビ-小体型認知症とパーキンソン病は、実は同じ疾患であるとの考えかたがある。バック・トゥー・ザ・フューチャーに主演したマイケルJフォックスがパーキンソン病であることは有名だ。ヒットラーも死亡する数年前からパーキンソン病であった。パーキンソン病とは、指や上肢に振せんと呼ばれる震えの症状がでることが特徴で、精神的な緊張で振せんは増強する。アキネジアといわれる無動・安静時振戦・筋強剛・姿勢反射障害があり、最終的には認知症状を伴うことが多い病気だ。

 これに対し、レビー小体型認知症は、初期症状としては幻視が非常に特徴的であり、症状が1日の中で、あるいは日によって変わる症状の動揺性がレビ-小体型認知症の特徴だ。

 レビー小体型認知症では、最終的には、パーキンソン病の主症状である、手足のふるえ、筋肉のこわばり、ゆっくりとした動き、歩きづらさなどが発症し、両者ともに脳のレビ-小体に問題があるので、レビ-小体症候群といわれる。

 ところで、如何なる病気にも必ず原因がある。

 癌やあらゆる自己免疫疾患、パーキンソン病なども原因はあるのだが、西洋医学だけでは見つけることができない。

 なので、集学的医療である、東洋医学と西洋医学の包括、医学と歯科医学の融合が大切なのは私が繰り返し主張していることだ。

 さて、パーキンソン病もレビ-小体型認知症も、初発症状は臭覚異常と便秘と寝言から始まる。

 これは振せんなどの症状の10年から15年以上の前に実はおこっている。

 だが、臭覚異常は自覚していることが少なく、便秘もレビー症候群と自覚せず、下剤や浣腸などの対症療法でやり過ごしていることがとても多い。

 なので、気がついたときには病気が進行していた、ということになるのだ(図)。

 この、臭覚異常に実は咀嚼が大きく関係があるのだ。

 存歯数が認知症や寝たきりに大きく関係していることは既知の事実だ。

 毎日、健康に食べ物を咀嚼していると脳機能が正常に維持されていることが認知症を予防しているエビデンスが数多く出されている。

 人の脳の中で、記憶に関係する海馬と嗅覚に関係する脳室下層では、なんと神経が活発に新生しているのだ。

 旭川医科大学医学部の宇津木千鶴先生らのある実験において、粉末飼料を1ヶ月食べていたマウスは、脳室下層の神経新生が低下し、嗅覚機能が低下することが示されています。
Hard-Diet Feeding Recovers Neurogenesis in the Subventricular Zone and Olfactory Functions of Mice Impaired by Soft-Diet Feeding Chizuru Utsugi et.al, published: May 9,2014
doi.org/10.1371/journa…
  
 柔らかい餌を食べ続けていると匂いを嗅げなくなるのだ。

 そして、粉末飼料を固形飼料に換えて1ヶ月飼育しても、神経新生は低下したままで、嗅覚機能も低下したままだったのだ。

 これは一旦、嗅覚機能が低下するとすぐには回復しないことを示す。

 しかし、固形飼料を3ヶ月食べ続けたマウスは、神経新生がかなり回復し、嗅覚機能が回復するのだ。

 堅い飼料を食べると、三叉神経主知覚核、脚橋柀蓋核および黒質緻密部の神経活動が活発になり、それは以下のことを示す。
①口腔感覚の減少によって、三叉神経主知覚核の活動の低下が生る。
②これによって、大脳の視床、大脳皮質感覚野および運動野を経由した経路での脚橋柀蓋核の神経活動の低下が生じる。
③中脳の黒質緻密部の神経活動が低下する。
④黒質緻密部からのドーパミン作動性神経のドーパミン放出が低下し、脳室下層の神経新生が低下する。
⑤脳室下層からの新生神経の供給が減少したために、嗅球の神経細胞のにおい応答が低下しにおいの忌避などの嗅覚行動が障害された。

 つまり、早食いや丸呑み、かみ合わせが悪いなどの咀嚼不良によって臭覚異常が惹起され、パーキンソン病やレビ-小体型認知症に影響している可能性があるのだ。

 これは、歯が少ないことで認知症の発症率が多くなることと大いに関係がある。

 口腔医学を排除した西洋医学で解明できないことが、口腔医学では常識だったりすることがよくあるのだ。
 
 とくに、子供のうちから清涼飲料水のガブ飲みや、食事の前に水分の過量摂取は、認知症を発症させる遠因になりかねない。

 咬まない子供が増えていることに、わたしは本当に危機感をおぼえている。