好きなことをしている人は、簡単には壊れない 『本好きの下剋上』に出てくる「身食い」は、 魔力を抱えきれずに命を縮めてしまう、とても重い状態として描かれています。
その中で印象的なのが、 好きなことや夢中になれるものがあると、 それが生きる力や踏ん張る力につながるように見えるところです。 だからこの設定は、 ただのファンタジーではなく、 「人は何に心を動かされるかで、生きる力が変わる」 という本質にも重なって見えます。
この考え方を人生に置き換えると、本質はかなりシンプルです。 人は「やらなければいけないこと」だけで生きていると、心が先に干上がります。 反対に、好きなこと、気になること、やっていると時間を忘れることがあると、心の内側に火が灯ります。 その火がある人は、しんどい時でも完全には折れにくいです。
つまり、 好きなことは娯楽ではなく、 命を内側から支える力です。 好きなことをしていると問題が消えるわけではありません。 疲れる時は疲れますし、落ち込む時は落ち込みます。 ただ、 「もう少し生きてみよう」 「もう少しやってみよう」 と思える理由になる。 これが大きいです。 人が本当に危うくなるのは、 忙しい時よりも、 好きなことを感じられなくなった時です。 何をしても楽しくない。 やりたいことが分からない。 気力が湧かない。 こういう状態は、心のエネルギーがかなり落ちている合図です。
だから人生では、 正しさよりも、 好きなものを失わないことが大事です。 立派かどうかより、 世間的に評価されるかどうかより、 自分の中で「これをしていると生き返る」と感じるものを持っているか。 そこが、その人の命の根になります。
東洋医学的に見ても、好きなことをしている時は「気」が巡りやすくなります。 逆に、嫌なことばかり我慢していると、気が滞り、胸が詰まる、食欲が落ちる、眠れない、無気力になる、といった形で出やすくなります。 心が喜ぶことは、単なる気分転換ではなく、気を動かす行為でもあります。
セルフケアとしては、まず大きなことを探さなくて大丈夫です。 「これをすると少し気が楽になる」 「これをしている時は自分に戻れる」 というものを、毎日少しでも触れることです。
本を読む。 静かな音楽を聴く。 散歩する。 お茶をゆっくり飲む。 好きな香りをかぐ。 手を動かして何か作る。 神社や自然の多い場所で深呼吸する。 こういう小さな“好き”でも十分です。
ポイントは、 役に立つかどうかではなく、 自分の命が少し戻るかどうかで選ぶことです。
もう一つ大事なのは、 好きなことをするときに罪悪感を持たないことです。 休んでいる場合じゃない。 こんなことして意味あるのか。 もっと頑張るべきでは。 こうやって自分を責めると、せっかく回復するはずの気まで閉じます。 好きなことは逃げではなく、 自分を立て直す行為です。 今つらい人ほど、 大きな目標を立てるより先に、 「自分が少し元気になること」を毎日ひとつ入れる方が大切です。 生きる力は、 気合いで出すものではなく、 好きなことによって自然に湧いてくるものだからです。