Facebook中心になって、そうとう更新しないままになっているこのブログ、それでも気まぐれに少しずつは記事を書くつもり。思いつきで我が家のいろいろなモノを少しずつ紹介してみようかな。

 

まずは雅楽ネタから。舞楽面!その中の「蘭陵王」面 !

 

 

 

我が家の蘭陵王面、いろいろな種類があります。

 

下の写真のものが極上モノです。

 

 

職人がこだわって彫り、彩色にもそうとう気を配った最高の本物なのです。

 

次の写真のものは実はレプリカ。

 

でもこれほどのいい出来のレプリカは他にありません。とてもいい出来です。実際充分使えます。

 

観察すると、最初のはウロコのひとつひとつ、羽の模様のきめ細かさ、コントラストが絶妙です。顔の金色も本物の金箔が使われているのでとても明るく輝くのです。

それから耳のあたりにちゃんと雲龍の飾りが彫られています。

このことと頭上の龍の高さの関係で面全体の上下左右のバランスがとてもいいのです。比べますとレプリカの方は耳のあたりの飾りがない分全体的に少し縦長に感じます。

羽も少し細めでペラっとしています。

そして本物のほうの龍の腕の張り具合も爪の立て具合もいい。見落としそうだけど後ろ足の踏ん張りもこちらの方が力を感じます。

龍の口の中も本物のほうは舌や牙の造形と色分けなども細かく表現しています。

 

こうして龍だけ観てもレプリカは龍が乗っかって落ち着いている感じで、本物のは立ち向かう気性が感じられます。

 

そしてレプリカにありがちなことなのですが、この場合、鼻先になりますが擦れて下地の黒がたくさん見えてきているというように仕上げてあります。日本の美学でよく言われる「わびさび」みたいなことですね。このように少し使い込まれた様子を「風格」として美徳として重宝がられることがあります。

現代の我々は古いものを目にするとき、ほとんど経年変化の古めかしさとともに観るばかりなのでそれを「いいもの」と思いがちなのですが、雅楽のものは貴族文化のものなのでいつでも「麗しく雅であること」が実は大事なのです。いつでも最高の状態を保って演じる(遊ぶ)のが本筋なのです。

そういう意味ではこちらのレプリカは江戸的(庶民的)美意識が少し反映されてしまっている、とも言えると思います。でもそれだからこその迫力も演出できている、ということもあります。その辺は趣味の問題かもしれません。

 

あとは舞う時のつけ心地なのですが、やはり本物のほうは顔に吸い付く感じでしかも軽くできているのです。レプリカのほうは少し重いです。素材の違いや厚みなどで違ってきます。

さあ、いかがでしか?ここで今一度見比べて観てください。おもしろいでしょ?見方が変わるかもしれませんね。でも本当にどちらも素敵なのです。

こうして二つを並べるといろいろと細かい違いを見ることができますが、片方ひとつだけを観ると、どちらも本当に魅力的です。レプリカと言ったって充分に本物と変わらず使える質の高さを備えているし、観入ってしまいます。感動します。

 

また面だけを比べるのではなく装束を着けた状態で見比べるとまた全然見えてくるものが違でしょう。本来はそうやって見比べるべきですね。面の形のバランスがより明確になります。また遠近にもよって感じ方がずいぶん変わります。

だから僕は場所や条件、照明の具合、それからその時の気分にもよって使い分けようと思うのです。

 

 

 ちなみに次の三番目の面はずっと簡易なレプリカ。

 

でもこれだけを観るとこれはこれで成り立つし実際に使えます。これだけを目にした人はとても迫力があると感じるでしょう。

でもこれだけしか知らない場合、陵王面とはこれなのだと認識してしまいます。それも間違いではないのですが、上には上があるのです。

 

比べることでいろいろなものの品格などがわかる物差しが備わっていいものがわかってくるのでおもしろいです。

これはすべてのことに言えることですね。

 

さておまけですが飾り物として作られたものもあるのでその写真も出しておきましょう。二つあるのですがどちらも奈良のお土産物屋にあったものです。(たぶん今はもうない)

 

これは僕がまだ宮内庁に勤めていた頃に見つけて手に入れたもの。これは飾り物と言えどもかなりいい出来栄えです。前述した三番目の使える面と形が酷似していますからこの飾り物を参考にあのレプリカが作られたのでしょう。そしてそれ以前にこの飾り物も実際の古い面を元にして作られたのでしょう。お土産物ものとしては結構高価だったけど、もしかしたら自分で色を塗り直したり工夫をすれば実際に便利に気軽に使えるものにできるかもしれない、と考えて頑張って買った記憶があります。でも練り物(粘土)で作られていて重く、とても舞えるものではありませんでした。それでも、雅楽のことならなんでも自分で作ってみようという、ワクワク感が当時からあったのを思い出します。

さらにもうひとつの飾り物。

 

これはずっと前(僕が生まれる以前?)から祖父がコレクションとして買ってあったものです。もっと簡易なお土産物です。今までのを見てくるとこれは本当にテキトーな作りですね(笑)。それでもそう言って微笑むことができるのはちゃんとしたものを知っていてこそなのです。これはこれで面白いのでちゃんと飾ってあります。観ているとこれを見つけて買おうと思った祖父の愛嬌に共感できるのです。同時に祖父の雅楽への想いも感じるのです。

 

 

「雅楽の美学」、おもしろいでしょ?またいつか気まぐれで別のものを紹介します。

 

 

さて、番外編のおまけエピソードをひとつ。

 

ずいぶん前の話しですが、ある公演で蘭陵王を舞うことになっていたのですが、運んだ装束や面の一式に牟子(むし)という、面を付けるときの頭巾のようなものが入っていなかったことが発覚したのです。本番直前で、近場で手に入れられるものでもないのでどうしようもありませんでした。でも牟子無しではとてもおかしなことになります。

そこでそのホールの倉庫や事務室などにあるなにかを利用して作ることはできないかと物色し、赤い布が見つかったのでそれを縫って形を作り、赤い紐があったので複数を撚り直して太くし、近くのホームセンターで金色の塗料を買って来て装飾し、なんとかそれらしく仕上げて本番に間に合わせたことがあるのです。

 

↑楽屋で作った即席の牟子

 

ヒヤヒヤだったけどなんとかなりました。普段から、「無いものは自分で創る」主義なので諦めること無くすぐに挑めたのです。その課程もおもしろがれるのです。

 

こちら↑のは本物の牟子(金の雲竜紋様)

 

 

それではまた!

 

TOGI

 

#蘭陵王 #陵王 #雅楽 #舞楽 #面