神々を彩る美 ~神社の宝 名品探訪~


いま上野の東京都博物館で

「国宝 大神社展」が行われている。

東儀秀樹オフィシャルブログ「SMILE」Powered by Ameba-神社展表紙
大神社展公式ホームページより

展示されているのは全国の神社に納められている御神宝であったり

御神体とされる神像。

これはとても興味深い。

仏教の世界だと仏像という偶像があって、象徴的に拝むべき対象がはっきりしている。

そして仏像には決まり事もしっかり有るからその統一性もある。

全国どこへ行ったって、例えば四天王や不動明王などはその持ち物や身につけるべきものや色は同じである。

光背があったり。

序列や位置関係もはっきりしている。

でも神道ではどうだろうか。

ご神像はあっても、もっとずっと素朴で、しかもいろいろなかたちである。


そもそも偶像を祭るかんがえが無かった。


でも御神体はある。

それは樹木であったり、岩であったり、滝であったり・・、

ご神木で作られた像であったり・・・。

さまざまで、そこに決まり事はない。

これこそ原始の日本の宗教観でもあるのだ。

山には山の神、海には海の神がいて・・・と自然界のありとあらゆるものに

神は宿っている、という

まさに自然崇拝の考え。

仏像を拝むという行為は、当初斬新なことだった。


そして、日本人はおおらかだから

大陸の様式にもすぐに反応して取り入れる。

「いいもの」似対しては素直に抵抗感をあまり持たずに。

だから神道でも大陸の、しかも仏教の音楽だった雅楽を、

みごとに取り入れて消化し、ものにした。


偶像にしても、神道的には具体的なものはなかったから、

仏式を取り入れていたりする。

神像だけど仏様の格好に近かったり、宝珠を掌にのせていたり。

まさに神仏習合の価値観だ。

↓ 仏式の要素を取り入れた(と僕は思う)神像

東儀秀樹オフィシャルブログ「SMILE」Powered by Ameba-神像(仏式)
写真は大神社展公式ホームページより


これこそ日本の美術なのかもしれない。

日本人の精神性や性格までもが物語られている、と僕は感じる。

それから神の姿を創造するのに比較的身近な感覚をもって表現しているケースも多い。

それだけ身の回りに一体となったところに神を表現したのかもしれない。

↓ 高貴な女性像がそのまま反映された(と僕は思う)神像

東儀秀樹オフィシャルブログ「SMILE」Powered by Ameba-女神像
大神社展公式ホームページより


この展覧会で目にするものに対して、

「仏なの?神なの?」という概念ははずすといい。

それを超越したところに日本人の意識があってその気持ちの一部分が

こうした「かたち」を生んでいるのだと思う。



とは言え、そこにある「ご神像」は「神」を重ねた像であるから、

めったに目にすることのできない貴重なものだ。



それから御神宝のひとつひとつをみても、

「神様に捧げるのに値するもの」として

人間の出来うる限りの技と労力を駆使して完成させた極みのものだ。

だから当然ながら美術品としての価値は絶大なのだけど、

それだけではなく、そこに「神に対する人間の想い」という価値観と歴史背景も投影されたもの、

というところが今回の展示物が訴える大きな見どころなのだと思う。

東儀秀樹オフィシャルブログ「SMILE」Powered by Ameba-化粧箱
大神社展公式ホームページより

ところで、これらの宝物のことが

NHK の 「日曜美術館」で放送される。

「神々を彩る美 ~神社の宝 名品探訪~」

Eテレ 4月28日(日) 朝9:00~10:00

(再放送 5月5日(日) 夜20:00~21:00)


僕はゲストとして出演し、作品や宝物に対する想いや想像を述べる。

それからこのために熊野を旅してさまざまな御神体や古神宝を目にした様子も紹介される。

一緒にこの日本美術を味わっていろいろ考えて楽しんでもらいたい。


東儀秀樹オフィシャルブログ「SMILE」Powered by Ameba-熊野2
熊野古道にて

東儀秀樹オフィシャルブログ「SMILE」Powered by Ameba-熊野那智
熊野那智の滝(ご神体)にて

東儀秀樹オフィシャルブログ「SMILE」Powered by Ameba-熊野1
熊野古道にて

TOGI