鵜殿の蘆(ヨシ)が無くなると、僕の音も伝統雅楽の音も無くなる!


まだ全国的に知られていないかもしれないけれど、

大阪の高槻市の鵜殿のヨシ原が無くなるかもしれない。

国交省の方針でそこに高速道路を建設することになったから。

でもそれは文化にとっても生態系にとってもとてもひどい話なのです。

ご理解してくださる方、是非反対の声を上げてください。そしてこの事実をいろいろな方々にお知らせして、たくさんの理解者を作ってください。

お願いします!


そして、明日(11月19日)

僕は国土交通省にの羽田大臣とそのことについて

対談します。



以下が僕の抗議文です



『         地球規模の文化への冒涜!
    高速道路のために日本の文化が台無しになる!

いま国土交通省の高速道路建設のために大阪の高槻市の鵜殿の蘆原が埋め立てられようとしている。
このことで日本の文化の歴史が大きく崩れることになる。日本には世界無形遺産に制定されている雅楽という伝統芸術があり、それは千年以上にも渡り変わらぬ形で皇室、神社仏閣などの儀式に捧げられ続けて来た。そして雅楽は今や儀式のみならずいろいろな新表現も含めて日本を代表する音楽芸術表現として世界にも認められている。

それが高速道路の建設のためにその音色が継承されなくなる可能性が出て来たのである。雅楽の主旋律を担う篳篥の音色は古代から鵜殿の蘆が使われてきた。
鵜殿の地理的、地質学的、環境的なさまざまな条件がその最高の音色となる蘆を生んできた。太さや側の厚み、繊維の密度など、ほかの蘆とは比べ物にならないほどピンポイントでここの蘆は篳篥に向いているのである。だから太古の昔から鵜殿の蘆に限るとして継承されてきた。皇室の儀式で響く篳篥の音は鵜殿の蘆だからこその音色が捧げられてきた。

蘆なら他でも採れるだろうと考えられてしまうのだが、他の場所の蘆では平安時代から変わりなく続いてきた音にならなくなってしまう。文化が変わってしまうことになる。

雅楽を世界に語るとき、地球の他のどの国にも有り得ない、千年以上も変わらぬ音色を継承し続けている、という点で日本は誇りを持つことができた。それが高速道路のために、「ついこの間までは続いていたのだが・・」といういい訳を付け加えなければならなくなるのはとても悲しい。

ここまで、千年以上も続けてきた価値が、変わってしまう。変えてしまうということは海外にも国内にも、そして未来の日本人にとって、非常に恥ずかしい行為だ。もったいない、と言われてからではもう取り戻せないのである。

文化というのはいろいろなものが複雑に絡み合い、リンクしている。
雅楽の篳篥のリードに使われる鵜殿の蘆も、単に篳篥のリードとしての文化のみならず、鵜殿の蘆の独特の文化が絡んでいる。焼いて育てる工夫やその地域だからこその特徴であったり、生態系への影響にまでも細かくリンクする。雅楽が正統に昔ながらの形で生き続けるからこそ、鵜殿の蘆原はその土地の文化の象徴としての価値がある。日本の古代伝統文化、宮廷文化を支えた文化の誇りがそこにはある。
宮中の祭り事、神や仏に捧げる究極の形、音色、あるいは平安から続く貴族の美意識は世界に誇る日本文化であり、その一片鱗も濁ったり崩れたり、まして消滅してはならない。

雅楽は日本の遺産にとどまらず、世界のシルクロード文化の生き残りであり、その一部分でもないがしろにすることは世界規模での文化に対する冒涜となる。

便利さの発展だけのために文化をないがしろにする考えは日本の大きな恥となる。一度消滅したものは二度と同じ形で蘇ることも無く、1000年以上も同じ方法で継承して来た、と胸を張って誇りにして来た日本文化が目の前の便利さだけでそれが言えなくなってしまう。他のどの国にも千年変わらず生き続けていた文化はなく、そこが日本の自負すべき誇りであるのにも関わらず、いま千年の誇りが失われようとしているのは重大なことだ。世界に向けての汚点となる。

文化こそがその国の個性を最も物語ることができる。
国際的にみても日本にいま必要なのは文化力なのだ。
文化だけは他国とのバランスや気遣いなどを気にすることなくお互いに胸をはっていられるもの。それを自らの国民が傷つける行為は避けてもらわないといけない。

東儀秀樹  』




そして、下記が先日東京新聞に載った関連記事です。

 「世界的文化への冒とく」 篳篥のヨシ 消滅危機

雅楽の篳篥(ひちりき)に必要なヨシの唯一の産地、大阪府高槻市の「鵜殿(うどの)のヨシ原」が消滅の危機にひんしている問題で、各国の世界遺産を巡り演奏活動を続けてきた篳篥奏者・東儀秀樹は「もし、このヨシ原が失われるようなことがあれば、取り返しのつかない日本人の汚点となる」と警告、保全と日本の歴史的文化の重要性を強く訴える。 (小林泰介)
 「雅楽の全ての楽曲で、必ず全体を通し主旋律を演奏するのが篳篥。その吹き口(蘆舌(ろぜつ))に使用するヨシが世界で唯一、鵜殿のヨシ原に自生しています。ヨシの茎の太さ、肉の厚み、繊維の密度が良く、熱してつぶし削りだしたときにピンポイントで理想的な音を出してくれる」と東儀。
 良質なヨシ数千本から、わずか数個しか吹き口として満足できるものはできないという。その吹き口は演奏家自身が平安時代から代々受け継がれた技法で手作りし、「これが篳篥にしか見られない文化」と語る。
 「千年以上、一度も途絶えることなく続く伝統芸術は世界でも極めて少ない。これは日本の文化のみならず、世界的に誇れるもの。もしこれを失うことになれば、世界的文化への冒とくで、将来、日本人に汚点を残す」
 雅楽は単に音楽演奏のみならず、装束、舞、そして蘆舌も含めた総合芸術。それは、遠くシルクロードを通って伝来してきた当時のままを現代に残す希少な文化で、今やその形態は朝鮮半島、中国以西の国々にも残っていない。
 「いま、国民に広くアピールして工事再開を食い止めなければ、一大事が起きてしまう」と東儀は声を大にして呼びかける。
 


それから下記も関連記事です。


ユネスコの無形文化遺産で千年を超える歴史を持つ雅楽に欠かせない楽器、篳篥(ひちりき)に使う天然のヨシが危機にひんしている。篳篥用ヨシの唯一の産地、大阪府高槻市の「鵜殿(うどの)のヨシ原」の真上に、新名神高速道路の建設が決まったためだ。雅楽を担う宮内庁の楽部などからヨシの保全を求める声が上がり、地元でもこの七月、署名活動が始まった。 (小林泰介)
 ヨシ原は淀川河川敷に広がる約七十五ヘクタールで、甲子園球場の十八倍。ここで平安時代から採れるヨシの茎が加工され、篳篥の吹き口「蘆舌(ろぜつ)」になっている。江戸時代の古文書に鵜殿のヨシが最高と記録があり、宮内庁の楽部もここで採れたものだけを使っている。
 篳篥奏者の東儀秀樹さんによると、茎が太く、肉も厚く、繊維の密度も高く、世界で唯一の質。ここのヨシでも素材として満足できるものは千本に一本程度しかなく、他の場所のヨシでは代替はまず不可能という。
 国土交通省淀川河川事務所の淀川環境委員会委員、小山弘道・元大阪市大助手(植物生態学)によると、鵜殿には高さ五メートルもの太いヨシが、地下二メートルの肥沃(ひよく)な黒土に根を張っている。「大都市圏でこれほど保全されているのは奇跡的」という。
 小山さんは「工事が始まれば、ヨシの生育に欠かせない水を供給しているポンプは止められるだろう。害虫駆除のためにヨシ焼きが行われているが、真上に高速道路ができれば車の通行を妨げる煙害となり、焼けなくなる」と心配する。環境が変化しヨシ焼きができなくなれば、二、三年でヨシが全滅する恐れがある。
 新名神高速は無駄な公共事業として凍結されていたが、国交省は今年四月に着工を決断。これに対して宮内庁楽部は五月、「現地の保全と環境への配慮」を要望した。六月には首席楽長らの連名で「雅楽の篳篥のヨシを守るために」という声明を出した。
 地元ではヨシ原の保全を続けてきた人々を中心に、七月に「SAVE THE鵜殿ヨシ原~雅楽を未来へつなぐ~」実行委員会が設立され、全国規模の署名活動を始めた。他にも雅楽団体や研究者などが保全を求める動きもある。
 国交省は着工の理由に、名神高速の渋滞緩和や震災時の多重的な交通の確保などを挙げる。ただ工事の凍結解除を決めた前田武志・前国交相は「しっかり環境保全に努めているという認識だった」と雅楽との関係を知らなかった。国交省側も「雅楽がユネスコの無形文化遺産だと知らなかった。専門家と意見交換したい」(高速道路課)としている。





TOGI