コロナが流行する以前の事だったと思う。
町内会の班長の順番が回ってきて、町内会費の集金に自宅を訪問した時だった。
歳は40代と思われる女性が玄関に出てきた。
小学生と中学生の子どもを持つ、母子家庭だと聞いていた。
笑顔を絶やさない、誰からも好かれそうな女性という印象だった。
彼女の人生に何があったのだろうか。
こんな素敵な女性と離婚した男の気持ちが分からない。いや、彼女が男を振ったかも知れないと思った。僕がもう少し若くて、独身だったら恋に落ちたような気がする。
二人の子どもを育てること、血の繋がっていない親子同士、果たしてうまくいくのか。きっと尻込みする自分の姿が想像できる。
血の繋がっていない3人の子どもを育てた男性が隣の家にいるのだ。
子どもたちは今ではりっぱな大人に成長している。
当初は、何で子連れの女性と結婚しなければならないのだ!と親に大反対されたそうだ。女は結婚する男で変わるけれど、男も結婚する女によって変わるのだと思う。
人生って不思議だ。結婚する相手によって人生は如何様にも変わるからだ。
彼女の絶やさない笑顔を見て家を出た時は、何となく複雑な気持ちがした。
彼女の人生がずっと幸せになってほしいとこんなにも強く思ったのは
初めての経験だった。
僕の目にうっすらと涙が出ていた。