目が覚めると
全くどこかわからないワンルームの中にいた。外から鍵は閉められていて中から開けられない構造になっている。カーテンが閉ざされていたのでカーテンを開けてみた。かなりの高層マンションでまわりは田園が広がっている。外の景色からは場所は特定できない。ただ一つ分かるのはここが東京の都心ではないってことだ。
部屋の中を観察してみると、いたってなんの変哲もない家具や食器、家電製品などが並べられている。メーカーもバラバラ、誰かが生活していた形跡もなく全く誰の家かもわからない。冷蔵庫の中には一週間は生活できそうな食料と使用済みのコンドーム、オロナインなどが冷やされていた。一際目立ったのは銀色に変色したブロッコリーだ。
謎が深まるまま、ポケットに入っていた残り7本しかないタバコに火をつけ、このワンルームでの生活が始まった。
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今年で三十路を迎えた。名前は西川慶次(にしかわ けいじ)
仕事場では、僕と同い年の同僚に比べればかなりのスピード出世で今は管理職の位置にいる。先輩からは厚い信頼感があり、後輩からいい先輩だと慕われている。まぁでも後輩からすれば、ただただ飯を奢ってくれる先輩だとしかみてないのであろう。
年収も同僚に比べれば200倍はありそこそこ稼いでいる。家も都心に構える高層マンション、つまりは億ションというやつだろう。買うときの値段なんてみていないから覚えてはいない。
45階にある僕のマンションの階には、スポーツ選手や医者、政治家から芸能人までいわゆる日本の大金持ちが住んでいる。たまにエレベーターで一緒になることもあり、TVショーにでている人物と会ってもなんのリアクションもとらない。むしろ普通すぎて挨拶程度だ。45階には6部屋しかないため、どこに誰が住んでいるか全て覚えている。4501には芸歴2年の若手ながらかなりスターの芸人が住んでいる。レギュラー番組2000本、CM1本、最近は「パナマ運河鉄道2〜薬指に違和感が〜」という映画を発表し、放映され大ヒットを記録している。
4502に住んでいるのは医者だ。世界にも自分の病院を設立し、今や日本も合わせて全世界には500件もの病院の医院長を務めている。担当は泌尿器科だ。TVショーでも何度か取り上げられ、有名ドキュメンタリー番組で「絶対止めてやる!その尿漏れ!」と発言し、この台詞が流行語にもなったくらいだ。
4503には僕が住んでいる。角部屋で日当たりも良い。日当たりが良すぎてベランダのコンクリートが若干溶けているくらいだ。
4504には大物政治家が住んでいる。内閣総理大臣補佐に240回なり準内閣総理大臣には150回、内閣総理大臣には1回任期は2週間もなった大物だ。今では新しい党、脱衣服党を立ち上げ国民から絶大なる信頼をよせている。
4505、ここにはプロ野球選手だ。現役こそは引退したものの、現役時代は輝かしい成績を残している。たしか僕の記憶では外国人選手だった。メジャーから助っ人で日本球界に入り、26試合出場打率.233、本塁打1本、打点7、そしてなんといっても死球12、26試合中12死球で出塁するという輝かしい成績を残した。ここまで言えばもうお分かりだろう。そうキンケードだ。
4506号室、最後の部屋だ。ここに住んでいるのは...
まてよ。誰だっけ?顔は出ているが名前が出てこない。人が住んでいるのは間違いない。ただこの45階に住んでいる人達は私を含め有名人ばかりだ。おかしい、最近見ていないから挨拶もろくにしていない。ただ一つ言えるのは有名人であることは間違いないということだ。
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車で30分走った都心の一等地に僕が働いている会社
「枝豆ホールディングス」がある。いわゆるベンチャー企業とゆうやつだ、サツマイモの開発に成功し会社として大企業の一員になった。
渋滞しているせいか移動距離が長く感じる。僕レベルになると10分や20分の遅刻はなんの影響もないのだがこの車の多さと通勤ラッシュには腹がたつ。自宅から120個目の赤信号に捕まっとき後輩の佐々並(さざなみ)から一本の電話がはいった。
「西川さん!おはようございます!朝から絶大なる信頼感を得ていますね!先ほど株式会社リモコンさんから連絡がきて、今度の全世界のブロッコリーを銀色にする会議の服装はストッキングを腕からぶら下げて、先っちょに人参を巻く予定でいる。だそうです!よかったですね!やりましたね!これで次の決算がたのしみですね!」そう言ってきたが、信頼感を得ていますね。の言葉以外ポルトガル語にしか聞こえなかったので、ほぼほぼ話を聞いていなかった。そもそも佐々並は普段からカモとしか扱っていないから話を聞く必要もない。とゆうより聞きたくない。関わりたくない。口が臭い。
無駄な時間を使ってしまった事に後悔しながら会社についた。受付の女の子の胸元を凝視しながらエレベーターに乗り、エレベーターに乗り込んできた女性社員のカバンに使用済みのコンドームを入れておいた。
僕専用の仕事部屋に入り、ルーティーンのラジオ体操をした。すると勢いよく、ノックもせずに佐々並が部屋に入ってきたので構わずに腹部に練り込むような頭突きをかましてやった。しかし、流石26パックの腹筋を持つ佐々並はビクともせず、軽い骨折をしただけだ。すると開口一番に佐々並は「いいちこより二階堂派です!」そういって部屋を出て行ったので結局何をしに来たのか全くわからない。ラジオ体操も終わり、残り12本あるタバコに火をつけて秘書がもってきた高そうなコーヒーを啜った。
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もうクーラーを付けなくてもいいくらい涼しくなってきて、緑色だった木々も黄色く染まってきている。
気がつけば昼飯の時間だ。
かかとの皮膚を削っていたらこんなに時間がたっていた。削りすぎえ流血してしまうくらいだ。秘書がオロナインを渡してくれたので、愛液を腹部にかけた。腹が減ったので昼飯は何を食べるか話をしてオムカレーに決定した。昼飯を食べ終わると何か憂鬱になる。この世が終わったかのような気分だ。この世の終わり。つまり世界の終わり。END of the WORLD セカイノオワリ。なんていい名前だ、何かファンタジーソングを作れそうだ。曲名はRPGなんてどうだ!大ヒットする気しかしないな!日本を代表するアーティストになりそうだ!今度僕がプロデュースをしよう!こんなアーティストはまだ日本にはいないはずだ!この話を誰かに聞いてもらいたい!そう思い秘書に話した。秘書はうなずきながら、「一周回って携帯はiPhone3が1番使いやすいなぁ」と大賛成してくれたので、僕の会社と技術提供をしている「Dベックス」に相談してた。プロデュースの話も上手くいき、Dベックスの社長と長電話しているともう夕方になっていた。僕の勤務時間は16時まで、毎日このような感じで会社での時間が終わってしまう。僕がスピード出世をしたのもこのような仕事内容が評価されてである。酒でも飲んで帰るか。秘書に残りの仕事は任して、夜の歌舞伎町へ出る事にした。
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週末だけあって夜の歌舞伎町は賑わいを隠せない。道を歩くだけで両端に立っているボーイ達から次々と声をかけられ店に勧誘してくる。そんな声を振りほどき僕はいつも行くBARへと向かった。ここのオーナーとは生後2ヶ月からの知り合いで、まぁくされ縁みたいなものだ。一本何百万円もするワインを次々と開けていい気分になっていると、3mほど離れた個室の席から聞き覚えのある声が聞こえてきた。顔ははっきりと思い出せないが、声は聞いたことがある。恐らく男女のアベックだ。どうでも良かったのでオーナーと世間話をしながら酒を飲み進めた。酒も回ってきて、お互い呂律が回っていない。まだ個室には先ほどのアベックがいるのだろう。数時間前とは変わらないテンションで愚痴をこぼしあっている。仕事の同僚か付き合っているのか、興味もないしどうでもいい。記憶が曖昧になるくらい飲んでしまっている。ワインからウイスキーに変えてから今なにを飲んでいるかすらわからないくらいだ。その時だった、急に眠気がした。オーナーに助けを求め用としたが、オーナーも爆睡してしまっていた。後ろから笑い声がする。力を振り絞り、後ろを見ると、見覚えのある男と女がカプセルを持って微笑んでいる。とゆうよりは爆笑しているようにも見えた。目線が合わない。寝てしまいそうだ。声も出ず、誰かわからないまま、まぶたが閉じていくのは鮮明に覚えている。
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目が覚めると
全くどこかわからないワンルームの中にいた。外から鍵は閉められていて中から開けられない構造になっている。カーテンが閉ざされていたのでカーテンを開けてみた。かなりの高層マンションでまわりは田園が広がっている。外の景色からは場所は特定できない。ただ一つ分かるのはここが東京の都心ではないってことだ。
部屋の中を観察してみると、いたってなんの変哲もない家具や食器、家電製品などが並べられている。メーカーもバラバラ、誰かが生活していた形跡もなく全く誰の家かもわからない。冷蔵庫の中には一週間は生活できそうな食料と使用済みのコンドーム、オロナインなどが冷やされていた。一際目立ったのは銀色に変色したブロッコリーだ。
謎が深まるまま、ポケットに入っていた残り7本しかないタバコに火をつけ、このワンルームでの生活が始まった。
著者
覚野元気
「ワンルーム〜前編〜」より