★Reincarnation〜アルトの神託〜
冥府へようこそ!
あたしは、ここで死生管理を担当するアルテミシアって言います。よかったら、アルトって呼んでくださいね☆
早速ですが、本題に入ります。
死んだ人は選択しなければならないのです。
あなたの生を繰り返すか。
それとも繰り返さないか。
繰り返すことを選べば、あなたは生を再び歩むことができます。
ただし、記憶などを引き継ぐことはできません。 あなたはあなたのまま、今回の生と同様に生まれ、育ち、生きることになります。
あなたの人格と環境はほぼ変わりませんので、まず間違いなくあなたは今回の生と同様に生き、死を迎えるでしょう。
繰り返さないことを選べば、あなたの魂は虚無へと還ります。あなた、という個の意識を失って、新しい魂の根源になります。
稀に、あなたの魂の形に程近い魂が生まれることもありますが、それでも、それはあなたでは有り得ません。
さっき、「まず間違いなく」今回の生を再び歩む、と言いましたよね。
あたしが、あなたの選択に従ってあなたの魂を再び現世に送り返す際に、あなたの「記憶」は全て剥奪させてもらいます。しかし、デジャヴのように記憶を取り戻す瞬間が訪れるかもしれません。
なにぶん人の一生分の記憶は様々な形で染み付いているので、あたしとしても完全に記憶を消去する術は持ってないんです。
過去にはそうやって運命を捩じ曲げた人もいましたよ。
それから、他の人が捩じ曲げた運命の作用を受けて、あなたの生も変化するかもしれません。
しかし、それはあなたにとっては反作用の場合もあります。運命を変えたいなら、やはりその兆しに貪欲に喰い付かなければならないでしょう。
あなたは、気付けるかどうかも解らない運命が変化する兆しを求めて、永い永い生を繰り返したいですか?
今回の生より好転する保証は、一切ありません。悲痛な生になったとしても、或いは何も変わらなかったとしても、あなたは次の生を全うしなければなりません。この選択は、ゲーム機のリセットスイッチのように簡単なものではありません。
さて、では改めてあなたに問います。
あなたは、繰り返しますか?
あたしは、ここで死生管理を担当するアルテミシアって言います。よかったら、アルトって呼んでくださいね☆
早速ですが、本題に入ります。
死んだ人は選択しなければならないのです。
あなたの生を繰り返すか。
それとも繰り返さないか。
繰り返すことを選べば、あなたは生を再び歩むことができます。
ただし、記憶などを引き継ぐことはできません。 あなたはあなたのまま、今回の生と同様に生まれ、育ち、生きることになります。
あなたの人格と環境はほぼ変わりませんので、まず間違いなくあなたは今回の生と同様に生き、死を迎えるでしょう。
繰り返さないことを選べば、あなたの魂は虚無へと還ります。あなた、という個の意識を失って、新しい魂の根源になります。
稀に、あなたの魂の形に程近い魂が生まれることもありますが、それでも、それはあなたでは有り得ません。
さっき、「まず間違いなく」今回の生を再び歩む、と言いましたよね。
あたしが、あなたの選択に従ってあなたの魂を再び現世に送り返す際に、あなたの「記憶」は全て剥奪させてもらいます。しかし、デジャヴのように記憶を取り戻す瞬間が訪れるかもしれません。
なにぶん人の一生分の記憶は様々な形で染み付いているので、あたしとしても完全に記憶を消去する術は持ってないんです。
過去にはそうやって運命を捩じ曲げた人もいましたよ。
それから、他の人が捩じ曲げた運命の作用を受けて、あなたの生も変化するかもしれません。
しかし、それはあなたにとっては反作用の場合もあります。運命を変えたいなら、やはりその兆しに貪欲に喰い付かなければならないでしょう。
あなたは、気付けるかどうかも解らない運命が変化する兆しを求めて、永い永い生を繰り返したいですか?
今回の生より好転する保証は、一切ありません。悲痛な生になったとしても、或いは何も変わらなかったとしても、あなたは次の生を全うしなければなりません。この選択は、ゲーム機のリセットスイッチのように簡単なものではありません。
さて、では改めてあなたに問います。
あなたは、繰り返しますか?
★Raison d'amour 登場人物紹介【随時更新】
綾瀬 実
あやせ みのり
学園四葉高校二年生。
実父にレイプされた経験を持つ。またこれを原因にした虐めにも遭っているが、本人は一切気にしていない。現在は祖父母の家に引き取られている。
目立つことを煩わしく思っており、本当は学力・運動神経とも抜群ながら、適度に手を抜いている。
印南 早百合
いなみ さゆり
学園四葉高校一年生。入学早々学生会に加入して話題を集めた。
明朗快活で、たとえ目上の人であろうとあまり遠慮をしない。スポーツ全般が得意だが、学力は平均程度。
考えるより早く行動する癖があり、時に失敗もする。
あやせ みのり
学園四葉高校二年生。
実父にレイプされた経験を持つ。またこれを原因にした虐めにも遭っているが、本人は一切気にしていない。現在は祖父母の家に引き取られている。
目立つことを煩わしく思っており、本当は学力・運動神経とも抜群ながら、適度に手を抜いている。
印南 早百合
いなみ さゆり
学園四葉高校一年生。入学早々学生会に加入して話題を集めた。
明朗快活で、たとえ目上の人であろうとあまり遠慮をしない。スポーツ全般が得意だが、学力は平均程度。
考えるより早く行動する癖があり、時に失敗もする。
★Raison d'amour/yeux[2]
橘学園大学附属四葉高等学校――通称、学園四葉高校は、学園都市たる橘市のまさに核とも言える。徹底的に自由な校風を謳っており、集団行動を要する学校行事などは全て希望制。授業時間も、進学補講(これもまた希望制)を除けば、必修時間の最小ラインに抑えられている。生徒は見積もられた多くの自由時間を、自分のために活用することができる。補講、部活動、バイト、或いは友人と街に繰り出したり、わたしのように無為に時間を浪費する贅沢を嗜むことも可能だ。もっとも今日はその贅沢を放棄したが。
なんとなく気になってしまったのだ。わたしを呼び出した一年生が、誰かを貶めて楽しむような人間には思えなかったから。いや、大人しそうな女子の中にも虐めに興じる者はいるが、だが、それでも。
別に授業後に過ごすのを自室から音楽室に変えたところで、大した不都合もない。ならば、相手の顔を拝んでみるのも悪くはないだろう。
音楽室に着いたところ、既に先方は到着していた。これで少なくとも「誰もいなくて無駄足」ということはなさそうだ。
「あなたが印南さん?」
「はい! お呼びだししてすみません」
わたしより幾分小柄な下級生は、小さく息を整えてわたしを見る。
「あのですね、綾瀬先……」
「待って」
相手が話を切り出す前に、一言挟んでおく。会話のイニシアティブを取られる前に、わたしのつまらなくて汚い牽制を済ませておきたかった。
「悪戯とか嫌がらせとか、そういうのだったら一切無駄よ」
「え、あの」
「わたしは、あなたみたいな子が人の過去を掘り返して楽しむような愚かな人間だとは思いたくないけど、でもあなたがそうだとしても驚かない。要するに期待してないの」
「あっ……」
目の前の少女は僅かにたじろぎ、視線を彷徨わせる。少し、言い過ぎただろうか。
「それでも、わたしに何か用かしら?」
理想的な先輩であるなら、ここで優しく笑いかけながら問うべきなのだろうが、事わたしに限ってはそんな配慮ができるはずもなく、詰問するような冷たい声が響いていた。
後輩の、わたしを見つめる目が怯えに染まる。嗚呼、悪辣を働ける人間ならこんな目はしない。見れば見るほど明らかなのに――わたしは、変われない。
それでも、彼女は目を逸らさなくて。
「強い、です」
まっすぐに、言い切った。
「先輩は、強いです」
怯えを上回る何かが、彼女の目に宿ってゆく。磁力のように、わたしの目を惹き付けて離さない。そして、その眼力に違わない鋭い一言が紡がれる。
「強くて、脆いです」
「……ッ」
「あたし、この学校に入った日に見ちゃったんです。先輩が、靴箱に詰め込まれた手紙を一瞥もくれずに捨てていくのを」
気にするべくもない、ほんの些細な日常の一片。お願い詮索しないで。わたしの小さな空間に踏み込まないで。
「中は……読んだの?」
「はい。気になって、一通だけ」
……そう。
善意であれ悪意であれ、やはり彼女はわたしを侵略するのだろう。
「『買いたいんですけど、いくらですか?笑』って、書いてありました」
わたしに宛てられる言葉の中でも、最悪の部類に入る一言だと思う。女性にとって、これに勝る侮蔑はないだろう。
「気持ちわるい?」
「いいえ、少しも」
一瞬、それはわたしを気遣う嘘だと思った。だが偽善に聞こえそうな言葉も、彼女の目は嘘を吐かない。
「むしろ、先輩がとても格好よく見えました」
ただ鋭かった視線が、少しだけ緩む。
「先輩の目には、クラスの生徒も、先生も、それから通学中にすれ違う人も、誰も映っていないですよね」
誰も見ない。それはわたしが生きるために必要だった技術。期待しない。信用しない。いつも自分を隔離して、守っていくための方法。彼女は、それを見破れたというのか。
「だから、っていうのも変なんですけど、先輩に見てほしいって思ったんです」
「嫌、と言ったら?」
出任せに過ぎない、力のない反撃。普段のわたしなら、嫌とも言わず無言で立ち去るだろう。
「これは同情でも侮蔑でもない、あたしのワガママです。だから、先輩があたしに失望しない限りはアタックし続けます」
「もう失望しているわ」
「嘘ですよね」
即断された。
「さっきから、ずっとあたしから視線を外さないじゃないですか」
「それは」
適当な口上が見当たらない。確かに、わたしは彼女をずっと見ていたから。
「あたしは、先輩が本心からあたしを突き放してくれたなら、引き下がります。叶わない恋だった、って諦められます」
「恋って、あなたね……」
一応、女同士だということは気にしないのか。わたしはそんな常識に耳を貸す気もないけど、人によっては一発で玉砕するだろうに。
「いけませんか? 先輩だから好きになりました。先輩の強さに憧れて。先輩の脆さを守りたくて」
正直なところ、余計な世話と言えばそうなのだと思う。けれど――困ったことに、少しだけ嬉しいと思ってしまった。
今の孤独に不満はない。それでも、彼女が見ていたわたしの姿は、とても惨めに思えた。それでも、彼女はわたしを好きと言ってくれたのだ。
「綾瀬先輩、好きです。付き合ってください」
決定的なフレーズを、彼女は口にした。澱み無く、誤魔化しようも無く。
そしてわたしは気付いた。これは面白い機会なのかもしれない、と。希望も失望もないだけのわたしが、少しだけ波乱を纏うためのチャンスだと。
間違いなく、彼女はわたしの現在を見てくれている。それはわたしが切望していたことで。だったら、わたしもそろそろ自らの殻を打ち破るべきじゃないだろうか。
「……『みのり』」
わたしを縛り付ける記憶を、過去にしてしまおう。
「えっ?」
「苗字は嫌いなの。わたしのことを呼ぶなら、名前で呼んで」
ほんとうは名前も嫌い。でも、わたしだけを示す大切な言葉だから。これから好きになりたいから。
「付き合うとか、恋とか、そんな形式は知らない。けれどあなたが――早百合が、わたしを欲しいというのなら、わたしはそれを拒まない」
こういうときにどんな仕草を、どんな台詞を用意すべきかもわからない。わからないけど、それがわたしなんだ。臆すことなんて、何もない。
吸い込まれていただけの瞳を、意志を籠めて見返す。
「よろしく、早百合」
「はいっ!」
力強く抱きしめられて、一瞬ドキッとして。
私は、早百合の背中に、腕を回した。
意味のある理由は、いつだって一つしかない。
あなたが正面から、わたしを見ていたから。
残る全てに、理由なんてない。
そんなあなたが、愛しかったから。
なんとなく気になってしまったのだ。わたしを呼び出した一年生が、誰かを貶めて楽しむような人間には思えなかったから。いや、大人しそうな女子の中にも虐めに興じる者はいるが、だが、それでも。
別に授業後に過ごすのを自室から音楽室に変えたところで、大した不都合もない。ならば、相手の顔を拝んでみるのも悪くはないだろう。
音楽室に着いたところ、既に先方は到着していた。これで少なくとも「誰もいなくて無駄足」ということはなさそうだ。
「あなたが印南さん?」
「はい! お呼びだししてすみません」
わたしより幾分小柄な下級生は、小さく息を整えてわたしを見る。
「あのですね、綾瀬先……」
「待って」
相手が話を切り出す前に、一言挟んでおく。会話のイニシアティブを取られる前に、わたしのつまらなくて汚い牽制を済ませておきたかった。
「悪戯とか嫌がらせとか、そういうのだったら一切無駄よ」
「え、あの」
「わたしは、あなたみたいな子が人の過去を掘り返して楽しむような愚かな人間だとは思いたくないけど、でもあなたがそうだとしても驚かない。要するに期待してないの」
「あっ……」
目の前の少女は僅かにたじろぎ、視線を彷徨わせる。少し、言い過ぎただろうか。
「それでも、わたしに何か用かしら?」
理想的な先輩であるなら、ここで優しく笑いかけながら問うべきなのだろうが、事わたしに限ってはそんな配慮ができるはずもなく、詰問するような冷たい声が響いていた。
後輩の、わたしを見つめる目が怯えに染まる。嗚呼、悪辣を働ける人間ならこんな目はしない。見れば見るほど明らかなのに――わたしは、変われない。
それでも、彼女は目を逸らさなくて。
「強い、です」
まっすぐに、言い切った。
「先輩は、強いです」
怯えを上回る何かが、彼女の目に宿ってゆく。磁力のように、わたしの目を惹き付けて離さない。そして、その眼力に違わない鋭い一言が紡がれる。
「強くて、脆いです」
「……ッ」
「あたし、この学校に入った日に見ちゃったんです。先輩が、靴箱に詰め込まれた手紙を一瞥もくれずに捨てていくのを」
気にするべくもない、ほんの些細な日常の一片。お願い詮索しないで。わたしの小さな空間に踏み込まないで。
「中は……読んだの?」
「はい。気になって、一通だけ」
……そう。
善意であれ悪意であれ、やはり彼女はわたしを侵略するのだろう。
「『買いたいんですけど、いくらですか?笑』って、書いてありました」
わたしに宛てられる言葉の中でも、最悪の部類に入る一言だと思う。女性にとって、これに勝る侮蔑はないだろう。
「気持ちわるい?」
「いいえ、少しも」
一瞬、それはわたしを気遣う嘘だと思った。だが偽善に聞こえそうな言葉も、彼女の目は嘘を吐かない。
「むしろ、先輩がとても格好よく見えました」
ただ鋭かった視線が、少しだけ緩む。
「先輩の目には、クラスの生徒も、先生も、それから通学中にすれ違う人も、誰も映っていないですよね」
誰も見ない。それはわたしが生きるために必要だった技術。期待しない。信用しない。いつも自分を隔離して、守っていくための方法。彼女は、それを見破れたというのか。
「だから、っていうのも変なんですけど、先輩に見てほしいって思ったんです」
「嫌、と言ったら?」
出任せに過ぎない、力のない反撃。普段のわたしなら、嫌とも言わず無言で立ち去るだろう。
「これは同情でも侮蔑でもない、あたしのワガママです。だから、先輩があたしに失望しない限りはアタックし続けます」
「もう失望しているわ」
「嘘ですよね」
即断された。
「さっきから、ずっとあたしから視線を外さないじゃないですか」
「それは」
適当な口上が見当たらない。確かに、わたしは彼女をずっと見ていたから。
「あたしは、先輩が本心からあたしを突き放してくれたなら、引き下がります。叶わない恋だった、って諦められます」
「恋って、あなたね……」
一応、女同士だということは気にしないのか。わたしはそんな常識に耳を貸す気もないけど、人によっては一発で玉砕するだろうに。
「いけませんか? 先輩だから好きになりました。先輩の強さに憧れて。先輩の脆さを守りたくて」
正直なところ、余計な世話と言えばそうなのだと思う。けれど――困ったことに、少しだけ嬉しいと思ってしまった。
今の孤独に不満はない。それでも、彼女が見ていたわたしの姿は、とても惨めに思えた。それでも、彼女はわたしを好きと言ってくれたのだ。
「綾瀬先輩、好きです。付き合ってください」
決定的なフレーズを、彼女は口にした。澱み無く、誤魔化しようも無く。
そしてわたしは気付いた。これは面白い機会なのかもしれない、と。希望も失望もないだけのわたしが、少しだけ波乱を纏うためのチャンスだと。
間違いなく、彼女はわたしの現在を見てくれている。それはわたしが切望していたことで。だったら、わたしもそろそろ自らの殻を打ち破るべきじゃないだろうか。
「……『みのり』」
わたしを縛り付ける記憶を、過去にしてしまおう。
「えっ?」
「苗字は嫌いなの。わたしのことを呼ぶなら、名前で呼んで」
ほんとうは名前も嫌い。でも、わたしだけを示す大切な言葉だから。これから好きになりたいから。
「付き合うとか、恋とか、そんな形式は知らない。けれどあなたが――早百合が、わたしを欲しいというのなら、わたしはそれを拒まない」
こういうときにどんな仕草を、どんな台詞を用意すべきかもわからない。わからないけど、それがわたしなんだ。臆すことなんて、何もない。
吸い込まれていただけの瞳を、意志を籠めて見返す。
「よろしく、早百合」
「はいっ!」
力強く抱きしめられて、一瞬ドキッとして。
私は、早百合の背中に、腕を回した。
意味のある理由は、いつだって一つしかない。
あなたが正面から、わたしを見ていたから。
残る全てに、理由なんてない。
そんなあなたが、愛しかったから。
