私は、現在、ある特殊詐欺事件で首謀者だと疑われてしまった人の刑事裁判の弁護を担当しています。

 

その方の名前は、

 

児玉拓人さん

 

といいます。

 

私は、児玉さんは、無実であると信じています。

 

いわゆる「オレオレ詐欺」などと呼ばれている高齢者などからお金をだまし取る犯罪は社会問題となっていますが、児玉さんは、特殊詐欺事件に関与して有罪判決を受けた知人から詐欺グループの上位者(首謀者)であると名指しされてしまい逮捕されてしまい起訴されてしまいました。

 

しかし、児玉さんは犯人ではありません。

 

児玉さんを詐欺グループの首謀者(上位者)だと言っているのは、知人であるAさんの証言だけですが矛盾だらけで到底信用できるものではありません。

 

これまでの審理から、私は、弁護人として、知人であるAさんが警察での取調べの中で無関係である児玉さんを共犯者(上位者、首謀者)だと言わされた可能性が高いと考えています。

 

一般に、このような供述は「共犯者の供述」と呼ばれて信用性については慎重な検討を要すると言われているところです。

 

「共犯者の供述たとえば被告人と共に犯行をなした、あるいは被告人に教唆されて犯行をなした旨の供述は、第三者の供述と違って、警戒すべき点があるといわれている。それは、共犯者は自己の刑事責任を免れたり、軽減されんことを願って、おうおう仲間をひきずりこんだり、あるいは、責任を他に転嫁するなど虚偽の供述をするおそれがあること、共犯者自身は犯行体験を有し犯行を認めていることが多いから、真実と虚偽をまぜて供述することは比較的容易であることなどの点である。」(石井一正「刑事実務証拠法」319頁)

 

児玉さんのケースも、まさに、このような「共犯者の供述」の典型だと考えております。

 

判決は、2023年5月23日午前11時

 

さいたま地方裁判所熊谷支部

 

で言い渡されます。

 

先日、3月28日に私は最終弁論をしましたが、以下にその最後の部分をご紹介します。

 

 

【弁護人の最終弁論より】

 やや情緒的で観念的かもしれず、あまり上手な弁論ではないのかもしれませんが、最後は、こんな感じでしめました。判決は5月ですけど無罪が出ると信じてます。

 

第5 無実の者を罰してはならない

 

1 「無辜の不処罰」「疑わしいときは被告人の利益に」鉄則

 

 刑事裁判においては、無実の者を絶対に罰してはいけないという無辜の不処罰が基本とされなければなら  ないことは、いうまでもない。

 

 犯罪をやってもいないのに犯罪者との疑いをかけられ処罰されることは絶対にあってはならない。

 

 そのために憲法、刑事訴訟法は、適正手続を保障し、「疑わしいときは被告人の利益に」という原理を刑事裁判における「鉄則」(最決昭和50年5月20日刑集29巻5号177頁)として保障している。

 

 最判平成21年4月14日判決において那須弘平裁判官は、

 

「冤罪で国民を処罰するのは国家による人権侵害の最たるものであり,これを防止することは刑事裁判における最重要課題の一つである。刑事裁判の鉄則ともいわれる「疑わしきは被告人の利益に」の原則も,有罪判断に必要とされる「合理的な疑いを超えた証明」の基準の理論も,突き詰めれば冤罪防止のためのものであると考えられる。」(最高裁判所第三小法廷判決平成21年4月14日、刑集第63巻4号331頁那須補足意見)

 

と述べて、刑事裁判は冤罪を防止するための手続でなければならないことを力説している。

 

2 「合理的な疑いを超えた証明」

 

「刑事裁判における有罪の認定に当たっては、合理的な疑いを差し挟む余地のない程度の立証が必要である。」(最決平成19年10月16日刑集61巻7号677頁)

 

 したがって、裁判官は、検察官の立証が「合理的な疑い」を差し挟む余地のない程度に至っているかを慎重に吟味して判断しなければならない。

 そして、この合理的な疑いとは「単なる直感による『疑わしさ』の表明(『なんとなく変だ』『おかしい』)の域にとどまらず、論理的に筋の通った明確な言葉によって表示され、事実によって裏づけられたものであ」れば足りる(前掲那須補足意見)。

 なぜなら、この「合理的な疑い」について高度な疑い、客観的な証拠によって裏付けることができる疑いといったハイレベルな疑いでなければならないとしてしまえば、被告人に不可能を強いることにつながり、それは結局のところ被告人に無実の証明を求めることに他ならず、冤罪防止のための刑事裁判の諸原理、「疑わしいときは被告人の利益に」鉄則に真っ向から反するからである。

 

3 被告人は無罪である。

 被告人は、結婚して、最愛の妻と沖縄で暮らすことを考えて移住した矢先に本件によって逮捕されてしまったが、逮捕後から一貫して自己の無実を訴え続けている。

 

 当初は、弁護人による十分な弁護を受けられない中、被告人自身、必死の思いでなんとかして自分が無実であることをわかってもらいたいと記録を丹念に読み込み、証拠の矛盾やA供述の不合理性、供述の変遷や矛盾点を明らかにし、自らノートに何冊にもわたり詳細なメモを作成し続け、必死に自己の潔白を証明しようと努力し続けている。

 弁護人は、昨年2月から従前の弁護人にかわり弁護を担当しているが、被告人と面会を重ねれば重ねるほど、また、記録を読めば読むほど、被告人が、本件で主張されている一連の詐欺行為とは無関係であることがありありとわかり、無実であることを強く強く確信するに至って今日を迎えている。

 

 

「無実の人が誤って起訴され有罪とされることの不幸の大きさ、その驚き、怒り、苦しみ、辛さ、哀しさは、体験した者でなければ百万言を費やしても人に伝えることができない。それなのに、誤判を受けた人やその家族の人の無実の訴えはともすれば声が低く遠慮がちですらある。しかし、その訴えの中から能う限り真実を聴き分け、その苦悩を汲み取り、必要とあればその人々を援助し、誤判を匡すよう努力しなければならない。それは国民にとっての人間的な義務であり、裁判に携る裁判官、検察官、弁護士にとっての職業的な責務であると思う。」(小田中聡樹「誤判救済と再審」日本評論社1982年1頁)

 

 

  改めて、弁護人は、裁判官に訴えたい。

 

  被告人、児玉拓人さんは、本件の犯人ではありません。

 

  児玉拓人さんは、無罪です。

 

 

 

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 弁護士 戸舘 圭之 Yoshiyuki Todate/Attorney at Law

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