求釈明書

 

 上記の者に対する上記被疑事件、被告事件に関する被疑者・被告人の勾留の理由について、次のとおり釈明を求める。勾留理由開示公判は、現状においては、被疑者・被告人、弁護人が勾留の基礎となった事実関係、証拠関係を把握できるほぼ唯一の手続きであり、被告人の防御権の行使の上で極めて重要な手続きである。かかる重要性に鑑み、憲法は34条において、公開の法廷での勾留理由開示を権利として保障している。

 本件勾留の裁判を行った裁判官は、かかる勾留理由開示公判の趣旨に鑑み、本件勾留の具体的かつ詳細な理由を開示し、現時点において、勾留の理由がないと判断したならば、速やかに被告人の身体を解放すべきである。

 

 

                                                                 記 

1 東京地裁においては勾留理由開示担当裁判官を他の裁判所とは異なり機械的に配点する方式を採用しているが事務分配上の裁量の問題であると考えたとしても、勾留状発付の裁判を行っていない裁判官が勾留理由の開示をすることが原則となっている東京地裁刑事14部の運用は、憲法が勾留理由開示を権利として保障している趣旨に反するのではないのか、例外的に勾留状を発付していない裁判官が勾留理由開示をすることが法律上許容されていると考える理由のみならず、東京地裁における上記機械的運用が勾留理由開示の趣旨を没却しているのではないかという点についても理由と共に明らかにされたい。

2 被疑者・被告人が「罪を犯したことを疑うに足りる相当な理由」があると判断した具体的な根拠を証拠とともに明らかにされたい。

3 被疑者・被告人がどのような証拠をどのような方法で隠滅すると疑うに足りる相当な理由があると言うのか明らかにされたい。

4 裁判官が、被疑者・被告人にそのような相当な理由があると判断した具体的な根拠を明らかにされたい。

5  被疑者・被告人が逃亡すると疑うに足りる相当な理由を肯定した根拠は何か。具体的に明らかにされたい。

6  被疑者・被告人に逃亡および罪証隠滅すると疑うに足りる相当な理由があることを証明する証拠として、検察官が裁判官に提出した一切の証拠の閲覧謄写を求める(勾留理由開示手続は証拠開示を行う手続ではないと考えるかもしれないが、刑訴法上、勾留理由開示手続において証拠の閲覧、謄写を禁止する規定はなく、上記勾留理由開示制度の趣旨に鑑みれば裁判官は積極的に証拠の閲覧謄写を行うべきである。もし許容しないのであれば許容できない法的根拠を示されたい[i]。)。

7 刑訴法81条は、勾留された被疑者・被告人につき接見等禁止を行うことができる旨定めるが、かかる接見禁止の制度は、被疑者・被告人が勾留されていることを前提とし、勾留だけでもまかないきれない逃亡又は罪証隠滅を防止するためのものである。以上の法の趣旨にてらせば、接見禁止が許される場合とは、勾留によっては達成できない程度の強度の逃亡又は罪証隠滅の可能性がある場合に限られる(大阪地決昭和34年2月17日下刑集1巻2号497頁参照)。

 本件において、仮に、勾留の要件としての罪証隠滅をすると疑うに足りる相当な理由があると裁判官が判断したとしても、なお、接見禁止等の裁判を正当化するに足りる罪証隠滅をすると疑うに足りる相当な理由は別途明らかにされなければならない。

 この点について具体的根拠とともに勾留の裁判におけるそれとの違いを明示しつつ明らかにされたい。

8 以上の他、開示公判における裁判官の回答内容次第ではさらに追加で求釈明を行う予定である。

 


[i] 平野龍一博士は「法廷において、裁判長は勾留の理由を告げなければならない(84条1項)。勾留の理由とは、広義のものをいう。60条1項各号のどれで勾留したのであるかを示すのでは足りないのは勿論、その事由を具体的に述べるだけでも十分でなく、その事由の存在を証明する証拠を示さなければならない。」(平野龍一「刑事訴訟法」(法律学全集)有斐閣、昭和32年101頁)と正当にも指摘する。

 

 

 

 

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