やはり少年事件の実名報道といえば渕野先生ですね。

 

(5年前、2015年10月17日の日記より)

 

昼食にパンをかじりながら自由と正義の10月号の少年法特集を読んでました。どの論文もとても興味深いのですが渕野貴生先生の「少年の実名報道をめぐって」(17頁)を発見したのでまず読み始めたところ、うなりました。

 

少年の実名がインターネットで私人からも拡散される状況の下において、少年法61条の意義と表現の自由について真っ正面から検討し、少年の実名を公表する側の「正義」について根本から疑問を投げかけています。

 

渕野先生の論文を読んでいつも思うのですが、権利を根拠付けるための論証がとても具体的でわかりやすくて説得的な点は渕野先生の特徴的なスタイルではないかと思いました。

 

本稿でも、少年法61条が守ろうとしている社会復帰の利益について、社会復帰侵害が生じる過程を想像力豊かにリアルに語りながら、少年に固有の権利としての成長発達権、社会復帰権を基礎付けています。

 

その上で、表現の自由の優越性を前提とする憲法学の議論の仕方に疑問を投げかけ、少年の実名を公表する一般私人の動機は少年を社会から排除したいということに尽きるのが実態であり、そうであれば、そのような表現は「いじめ」に他ならず、「少年の身元特定報道は、学校内で行われるいじめを大々的に社会全体で行っているのと同じである。」と言い切っています。

 

とても平易な文章でありながら、理論的にもすきのない説得的な議論を展開している姿勢はいつもながら勉強になりました。

 

ゼミの指導教官で、少年法も刑訴法も刑事政策も先生の講義で初めて習った恩師的な先生なのでいろんなバイアスはあるんですが、ひいき目なしにみても、ふちりん先生すげえと思ってしまうのでした。