【OK牧場!】?
またまた、バリバリの手抜きなんですが、受けそうなのでアップ。
医師会の内科医誌(≒医報)の草稿を、掲載より先に。
【デイ・ドリーム その参】
「OK牧場!」?
西区 戸髙憲二
って言うと、やはり「ガッツ石松」でしょう。便利な言い回しだと感心したものです。
英語圏のヒトに話しかけられて、文字なら強いのに、会話だとからっきしダメなありがちな同胞たちが、なんでもかんでも「Yes、Yes」とあたふた答えたりするもんだから、とんでもない質問にOK出しちまってひどい状況に陥る。よりか、ずっとましな使い方をしてて、その場の皆の会話の雰囲気から、多分今なら「OK牧場!」と、親指立ててキメ。うまいと思いました。
で、外しますが、今回の「OK牧場」はそっちの方ではないのです。
心理学で使われてるレッキとした専門用語のそれです。覚えてらっしゃいますか、医学生の頃の講義の中にあったような。専門科の方は既に現役で使いつづけて飽きてらっしゃるかもしれませんが、ひと時耳を傾けてみて下さい。
返って、事の始まりは、ここ1、2年の小生の診察室にまつわるかかりつけの客(患者さんを、敢えて)の間での噂、定説です。約めると、「ここの院長は、無駄話(無駄でないのを味わいつつ)がスキだよね。」と聞き及び、そういえば自身、高血圧やら、高脂血症(高コレにしないとレセで困ることも)、喘息でさえも安定してきちまった患者さんとは、病状やら、今後の治療見込みとかで、改めて話題もなく。ともすれば、「体調はどうですか?」、「変わりないです。」とか「調子良いですよね。」、「はい、順調です。」とか、一瞬で空白の時が来かねない。
で、生来のおしゃべり、話し好きの小生は、何か一つでもお役に立つ話でもと、まるで噺家かとマゴウ如きに、ネタ探して一気にGO!癖のある医師だと思う、待合室は決して空っぽではないんですから、この分待ちが長くなってるのですから、ある種わがままやらせてもらってます。
その患者サービスの小噺の一つに、「OK牧場」がいつの頃からか仲間入りしたんです。
最近で言えば、喘息で当院にかかりつけになって2、3年立つ姉妹の真面目な方の妹さんがみえて、前回の検査結果の説明。一般的な生化学の20項目と血液学の方は、全くの健康体で問題なし。話題なし。で、追加の血中テオフィリン濃度が5.7μg/ml。これは、キサンチン系の気管支拡張剤(⇔β-2刺激剤)であるテオドールやテオロングが有効濃度と中毒濃度が近いタメに保険適用になってる代表的な薬剤で、主に中毒域になってないかの用途で、病棟特にICUとかで頻用される。専門的な話はちょっと於て、懐かしいところへ遡ると。
開業されたり、院長職になったために遠ざかってる先生方も多いかと存じますが、血中濃度といえば、ジゴキシン、テオフィリン、バルプロ酸Na他抗てんかん薬に、アミノグリコシド(トブラマイシン=これは製薬が頑張ってサービス)が兄弟で、濃度がとても大事でした。もちろん、今も頻繁にチェックしてる方も多いかと。
ついでに、少し毛色が違いますがトロンボテスト、PT・APTT、その誤差の補正でPT-INR(International normalized ratio国際標準化感度指数:字余り)、BNP(最近:心不全)。もっと広げれば、糖尿病のHbA1cなど、甲状腺をはじめとするホルモン指標。
要は上も下もカットオフ的なものが存在し、低ければいいって・高ければいいってもんじゃない類いのデータたちです(一部はおおまか)。小生はこの微調整がお気に入りの仕事の一つです、マニアックだと思う。
元に戻って、テオフィリンは一般に20以上で中毒域、症状が発現しやすい(個人差あり、25でも軽い方も)といわれて来ましたが、最近は15くらいを上限にしてるようです。もっとも喘息屋さんだった小生は、20年前は、15、17才くらいの青年たち(女性も)が、ボスミン0.3ml皮下注から0.05刻みに、ついには0.6という学会報告レベルまで使わざるを得なかった、吸入ステロイドの今の貢献のない時代。頼れるのは、ソルメドロールの1000mg・2000mg/日や血中濃度が25だろうが28だろうが、水溶性のキサンチンであるアミノフィリンを点内に足しつづけるしかなかった。勢い、彼ら・彼女らは、背中から突き上げられるような激しい嘔吐に見舞われます。吐く物がなくなって猛獣のような唸り声になってしまいます。が、そこまで来ると、喘息発作は十中八九治まります。コレしかなかったんで、しょうがないでしょう。
実際訊けば、水を張った洗面台に誰かから顔を突っ込まされる発作の、息が吸えない苦しさに比べたら、吐き気・嘔吐は目じゃないとの由。
大分専門的な話が続いて申しわけないのですが、もう少しお付き合い下さい。
最近は、テオフィリンの直接的な拡張効果だけでなく、ステロイドとも、抗ロイコトリエンとも違った気管支への抗炎症作用が認知され(機序は未解明)、従来の10-20でなく、学会員は5-15とか3-15を採用しています。中毒域には用心深くなってますが、替わりに、低濃度でキープすることによる長期的な慢性炎症(最近の喘息治療の首座:攣縮、過敏性も勘案しつつ)への改善を期待されてるのです。
お待たせしましたが、妹さんとの具体的なやり取りです。
彼女は、小生の後輩が店をたたむ時に、後をお願いしますと紹介してきた患者さんの一人です。やや悲しい思いとともに。うっかりしてたのですが、テオフィリンを少量だからいいかなとか思ったのか思わないのか、最近まで手付かず。
で、文頭の結果だったので、小生のいつもの説明。6前後だから、今100mgを2錠だから、いざという時は1日に3錠まで増やせるから安心だね。あと、まだ喘息の炎症が安定期にないときには、気管支まわりの細胞がどんどんテオフィリンを使うもんだらから、もっと低い2とか3になってたりする。だからそれほど低くない今は、とてもよい状態。と伝えた。
その時点で、彼女は「こんな説明初めて。○○先生のところで何回か測ったけれど、いつも、服薬してるかどうか(ご存知服薬コンプライアンス≒アドヒィアランス;言いにく~)の話だった。」と。服薬用量のゆとりとか、炎症のレベルの大まかな把握が出来ることに感激したようでした。
この件に関しては、余りえらそうなことを言うつもりはない。
小生だって、初期は0.5未満の数値を見ては、チャンと服薬してないことを咎めたり、少しテクニックが上がっても、面と向かって咎めない代わりにこちら側の戦略として、このヒトは不服薬(人間の本能としては正しく、要にされるべきもの)のグループに分類。いつだったか思い出せないのですが、この世故さから脱却した。
つまり、ここが「OK牧場」なのです。
白いA4用紙(別に!メモ帳でも可) -->