結局、土特に行かないという選択はしませんでした。ですが、9月〜12月の土曜は半分以上、病欠していました。


11月のSAPIXオープンは学校会場で受けました。第一志望校候補の学校でしたので、少しでもモチベーションアップになればと思いましたが、テストの感触はよくなかったようでした。

結果は10月と同じか、それより少し悪かったか…もう記憶にありません。

とにかく9月からジリジリと下がっていきました。


次男は家でキレて大暴れすることが増えました。

そんなことしている時間はないのに
1問でも多く問題を解いて、1つでも多く暗記しなければいけないのに
私の焦りは募る一方でした

頑張れば道は開けるかもしれないと次男に言い聞かせたところで、聞く耳は持ってくれません

どうしてわかってくれないのかと、私が感情的になって怒ってしまったら最後、大バトルになって収拾がつかなくなりました。

2人とも泣きながら荒れ狂ってました。

鉛筆、何本折ったでしょう?
テキストどれだけ破いたことか
母子で取っ組み合いのケンカになることもよくありました。

おさまるのに2時間ほどかかります
後に残るのは、激しい後悔と廃虚と化した部屋


こんなことしている場合じゃない。

感情的になっても状況は悪化するだけだとわかっていても、アリ地獄にハマったかのように抜けられませんでした。



これが中学受験の狂気

理性では制御できなかった




11月中旬のある日


サピの比較合判という模試が迫ってました。

昨年と同じ問題を解き、昨年の受験生の実績を参考に合格可能性を見るというテストです。


その日は塾のない日で、家で基礎トレをしていた時に次男が突如言いました。


「テスト、別にもう受けても意味ないし、受けるのやめる」


何を言い出すのかと思いました。

直前期に何度もテストを受けることによって、時間配分や解き方、問題の見極めなどを訓練する。

その結果を見て、志望校や併願校の選定を行うのです。


訓練の場やデータが少なければそれだけ本番に不安を残すことになります。

12月後半以降は模試はないわけですから、今ここで受けておかなければどうするのか!


「何言ってるの? 大事なテスト受けなくてどうするのよ!」


「何回受けても一緒だし。やっても無駄。意味ない」


次男のこの投げやりな考え方が、私はいつも許せませんでした。

努力することを嫌がって、逃げて何になるのか?

後に残るのは後悔だとわかっているだけに許すことはできませんでした。


押し問答の末に次男は暴れ出しました。

テーブルを倒し、そこらじゅうの物を投げまくりました。

このままではまた学習時間が潰れてしまう

11月も後半です。

私は次男をなだめながら投げ捨てられたテキストを拾い集めていました。

ですが一向に次男の怒りは収まりません


「もうわかったから、とにかく宿題しよ」

私は泣きながら次男を説得しました



「ただいま」

そこへ長男が帰って来ました。

涙をボロボロ流している私、めちゃくちゃに荒らされたリビング、ヒステリックな次男


長男はまたか…という顔で荷物を置いた後、次男のところへ行きました。

「おまえな、いい加減にしろよ!こんなことで時間潰してる場合じゃないだろ?」

「母さんの言うことが正しいのわかってんだろ?」


長男も中学受験時は11月に荒れていました。受験生の気持ちをわかった上での叱咤だったのでしょう。


ところが


「もういい、出て行く!」


次男は玄関に向かって走っていきました。

夜9時を回っていました。

部屋着姿で冷え切った外に飛び出すなど、体の弱い次男にとっては自殺行為です。


私は追いかけて、羽交い締めにして止めました。次男は暴れてましたが、絶対に離すわけにはいきません。


長男には、もういいわと、自室へ行くように促がしました。


放せよ!と暴れる次男を抑えながら、私は落ち着いた声で話しかけました。

「どうしたん? 何がそんなに嫌なの?」




「どうせまたテスト、悪いし」



次男のその一言を聞いて、ふと思いました




「テスト受けるの、怖いの…?」



暴れていた次男の体から力が抜けました

私の腕に体を預けてきました

彼は何も答えませんでした

ですがこの反応が、答えなのでしょう



「そっか、テスト怖かったのか」



私は後ろから次男をギュッと抱きしめました。次男は声を立てずに泣いていました。


「もういいよ。テスト受けるのやめよう。過去問をやればいいよ」


伸びない成績に誰より傷ついていた次男

そんな様子を微塵も見せず

誰にも弱音は吐けず

1人苦しんでいたのでしょう。



「気づけなくて、ごめん…」

ダメな母さんでごめんなさい…




「体冷えたね。お風呂入ろっか」

大暴れしていたのが嘘のように、次男は素直に従いました。

お風呂は毎日、長男と一緒に入っています。


長男の部屋に行き、テスト受けるのが怖かったらしいと伝えると、わかったという風にうなづいてました。


2人がお風呂に入っている間に私は急いで部屋を片付けました。

洗濯ものを出しに行った時、お風呂から長男の声が聞こえてきました。


「10月に〇〇塾で受けたテストはよかっただろ?」

〇〇塾は長男の通っていた塾です。次男も3年生の時はそこに通ってました。難関中にも多くの合格者を出していますが、SAPIXと違って上位校、中堅校にも合格者が多い塾です。


「おまえの志望校の〇〇中には、SAPIXより〇〇塾の方がたくさん合格してるんだから、〇〇塾の方が〇〇中の合格判定は正確だ。〇〇塾の成績を信じろ」


長男が次男を励ましてくれていました。

涙が出るほど有り難かったです。


〇〇塾の模試は夏以降、隔月で受けていました。10月は奇跡的に国語が良く、算理も調子良かったので前回より7ポイント上がっていました。


次男は長男を1番に信頼しています。

中学受験においても経験者であることから、同志だと思っていました。

私が長男と同じ話をしても次男には単なる気休めとしか受け取られなかったでしょう。

ですが実際に〇〇塾に通っていて、〇〇中の合格者も見てきた長男だったからこそ、次男に信憑性をもって受け止められたのだと思います。


次男はお風呂から上がった後、途中だった基礎トレを仕上げて、寝ました。


その後、長男に次男の本音を聞いてもらうよう頼んでみましたが

「あいつ、俺にも本音は話さんよ」

あきらめ顔でそう言われました。




そして12月

無常にもさらなる底が待っていたのです