鉄筋コンクリートの建造物を巡る旅・鉄コン其古卍 Part 32 、上田沢アパートです。

上田沢アパートの建築群を丘の上から見下ろした様子

常磐線小木津駅(日立駅の一つ先=福島寄り)の南西2.0kmほどの丘の上にある県営アパートです。既出・滑川アパートからも割と近いです。

コンクリートの地肌が連なる様は、
上田沢アパート

上田沢アパート
ブルータルで美しい。

コンクリートむき出しの建築をどう感じるかは、人によって大きく変わるのでしょう。わたしは、大好きです。ココは、経年変化の様子が見えるので尚更素晴らしいです。

供用開始は1979-83年。設計は、画像のような3階建の「タイプ1」が、山下和正建築研究所と現代計画研究所。5階建の「タイプ2」が、内井昭蔵建築設計事務所。内井昭蔵氏は、既出・国民宿舎鵜の岬を手掛けた方。

上田沢アパート

結構空室があるようでした。

上田沢アパート

タテヨコに対称性のある外観が想起させたのが↓コレ
雷文
ラーメンの器に描いてある渦巻き。これ、雷文(らいもん)というそうです。

簡明な基本構造の組み合わせと繰り返しによって、
上田沢アパート

機能性や美しさが構成されていくプロセスは、
上田沢アパート
音楽と通底するものがあるように感じました。

以下、点景をいくつか。

入り口の看板
「片割れ」型の棟の入り口の看板
ここの表記は「団地」。一方、茨城県住宅管理センターでの表記は専ら「アパート」。

「片割れ」型の
上田沢アパートの「片割れ」型の棟
棟もチラホラ

棟の側面の様子
棟の側面

黄色いドアが
棟の側面
良いアクセントに

裏側の様子
上田沢アパートの裏側など



上田沢アパートの裏側など

上田沢アパートの裏側など

上田沢アパートの裏側など

ときに、わたしが調べたかぎり、同様の建築が県内の他5箇所にありました。

1.ひたちなか市・三反田(みたんだ)アパート

1977-80に供用開始、設計は現代計画研究所・柴建築設計事務所設計共同企業体。規模は17棟、270戸。

2.水戸市・会神原(あいじんばら)アパート

1976年に供用開始。設計は現代計画(研究所)・三上設計(三上建築事務所?)共同企業体。規模は13棟、192戸。

3.水戸市・六番池アパート
六番池アパート
1975年に供用開始、設計は現代計画研究所。規模は7棟、90戸。

4.つくば市・大角豆(ささぎ)アパート

1979-80年に供用開始、設計は現代計画研究所と山下和正建築研究所。規模は7棟、156戸。

5.阿見町・阿見(あみ)アパート

1979-81年に供用開始。規模は5棟、102戸。設計者はトレースできませんでしたが、上田沢と上の1~4の状況からして、現代計画研究所とみるのが妥当でしょう。

6箇所とも、ほぼ同時に統一したデザインを採用した経緯には曰くがありそうすね。「新建築」1976年7月号で六番池団地が特集的に取り上げられているので、読んでみたい。けれど、県立図書館や大学図書館も含め、近辺の図書館の蔵書にはない…。うーむ、これはいよいよ国立国会図書館へ行けという天命なのか?

上田沢が特徴的なのは、その規模。「タイプ1」が22棟、306戸。加えて、2棟、60戸の「タイプ2」があります。タイプ1の棟数・戸数だけでも6つの中では最多です。

下はタイプ2
上田沢アパートのタイプ2

上田沢アパートのタイプ2

上田沢アパートのタイプ2

タイプ2は、フツーな感じですね。

最後に上田沢アパート全体の配置図をば

引用元:茨城県住宅管理センター

サムネの画像は、1号棟と11号棟の背中側から撮った感じ。タイプ2は12、13号棟。

敷地の中は、トーチカ群に入り込んだようで、不思議な感覚になれます。ブルータリズムが好きな方には超オススメです。

ただし、最後に一言。2017年10月、このアパートで大変痛ましい事件が起きました。見学する際は、心に留め置いてください。