マンガでわかる 発達障害の子どもたち | 私のお薦め本コーナー 自閉症関連書籍

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自閉症・アスペルガー症候群および関連障害や福祉関係の書籍紹介です by:トチタロ

本田 秀夫:著  フクチ マミ:マンガ  SBクリエイティブ  定価1400円 + 税 (2023.10)

 

       私のお薦め度:★★★★★
 
先月号に引き続き、本田秀夫先生の近著(2023年10月6日:刊)の紹介です。
視覚優位と言われる我が子たちですが、見た方が分かりやすいのは、私たち親も同じ・・・・と言うよりは、古来から「百聞は一見に如かず」ということわざがあるように、万人に共通なのでしょう。

私はいままで20冊ほど発達障害に関連する書籍を上梓してきました。その多くは、発達障害について基礎的なことから順に整理して解説したものでした。理屈を学んで、それを個々の事例に当てはめて理解していただくという、講演などに近いスタイルです。
一方、この本では、具体的な事例から学んでいただくスタイルをとっています (20個のCASEは、私が出会った多くの子どもたちの実例をもとに、個人が特定されないよう話を再構成したものです)。
何よリマンガ化することで、理屈から入るよりも直観的に理解しやすくなったと思います。普段、私が診察室で話していること、また講演や活字では表現しきれなかった微妙なニュアンスが、よりリアルにお伝えできたのではないかと思います。 (「おわりに」より)


たしかに、専門書のように、活字でしか伝えられない理論的な話もありますが、発達障害かも? と心配していたり、診断は受けたけど、じゃあこれからどういった育て方をしていったらいいか? と悩まれている方には、こうしたマンガで表現してもらった方がイメージしやすくなると思います。

まずは、最初の発達障害についての説明、本田先生のとらえ方の説明のコーナーです。

「私は発達障害は病気というより 少数派の種族のようなものではないかととらえているんですよ」
多数派に合わせた現代の社会は、少数派には会わない部分が多く 二次的な問題を引き起こしてしまうことが多い


   【二次障害:うつ、不安、不登校、ひここもり、身体症状、自傷や他害など・・・のマンガ】

「ただ 二次的な問題そのものが特性ではありません」


   【「二次的な問題」・「特性」 特性とはわけて考える・・・のマンガ】


そしてたとえ困り事がなくなったとしても 特性は消えるわけではありません


   【特性をもったままで、すこやかに生きている青年・・・・のマンガ】


だからどんなに薄いグレーでも それは白ではなく薄い黒ととらえる必要があるんです


   【「薄いから白ってことで」・「イヤ、薄~い黒だよ」・・・との会話のマンガ】


「白を目指すのではなく グレーならグレーな大人になればいいと私は考えます」


   【そう解説する本田先生の似顔絵・・・のマンガ】

こんな風に「セリフの部分」は本田先生の言葉で、それを補足するのは地の部分、そして【マンガ】から本書の導入部分は始まります。

本題にはいると、20の事例のマンガと、それについての解説の形で進んでいきます。

マンガを文章で説明するのは難しいですが、それこそ「百聞は一見に如かず」、ぜひ本書を開いて見てください。

例えば、CASE-11「偏食があって、なかなか変わらない」の事例ですと、最初に偏食についてのマンガがあり、次のページから本田先生の解説です。偏食については悩まれている方も多いのでは、と思いますので、少し長くなりますが、一部を抜粋して紹介します。

「偏食には変わる部分と変わらない部分があります」


偏食は、大きく2種類に分けることができます。


①こだわりによる偏食
子どもがこだわりを持って、食事に一定のパターンを決めている場合が
あります。これは一時的なマイブームのようなもので、ある時期には絶対に食べなかったのに、突然食べ始めたりします。反対に、以前は大好物だったのに、ぱったりと食べなくなることもあります。自閉スペクトラムの特性がある子には、こだわりによる偏食がしばしば見られます。


②感覚の異常による偏食
お子さんが特定のものの味や食感などに感覚的な苦痛を感じるため、偏食になる場合があります。これも自閉スペクトラムの特性がある子によく見られることです。


①②どちらの場合でも、特に指導をする必要はありません。


こだわりの場合には親が特に何もしなくても、ふとした瞬間に食べるようになることがあります。こだわりは変わっていくからです。無理に変えようとして、「少しはほかのものも食べなさい」などと強制すると、子どもが抵抗を示して、かえってこだわりが強くなることもあります。


感覚の異常は先天的な特徴で、時間がたっても変わりません。感覚的な特徴というのは誰にでもあるものです。「大きな音が苦手」「ザラザラした感触が嫌」といった特徴は、変えられるようなものではないですよね。矯正しようとしてもできません。感覚の異常がある子に苦手なものを食べさせるのは、拷間に近い行為です。ですから指導をする必要はありません。食べられるもので栄養をとり、健康に過ごせばいいのです。

このように、丁寧に解説していただいているので、マンガのページと合わせて読めば、とても分かりやすくて不安も解消できるのではないでしょうか。


偏食については 「食べられるもので栄養をとり、健康に過ごせばいいのです」 だそうです。必要以上に心配することはないのでしょう。そういえば、幼少期にはポップコーンとコーラだけで、結構問題なく育った・・・という話を聞いたこともありました。

食事時間がギスギスしたものになりそうな取り越し苦労は止めて、自閉症児との日々の生活を楽しめるよう、心のゆとりを持てるといいですね。

そう言えば、先月号で紹介した本田先生の『「しなくてもいいこと」を決めると、人生が “一気に” ラクになる』の中で、挨拶について「挨拶だけはできるけど仕事ができない人と、仕事はできるけど挨拶だけはできない人、どちらが会社にとって役に立ちますか?」に続いて、対処法として「学校や会社で人とすれ違うときには、軽く目を伏せて自分の靴先を見ながらすれ違う」というくだりがありましたね。

あれは、比較的高機能の人の場合だと思うのですが、本書では挨拶について別の対処法が載っていました。

また、家族が見本を見せたり、親子で一緒に挨拶をしたりするのもいいと思います。

例えば診察室に入るときに、親が「せ―の」と言ってタイミングをとり、親子で一緒に「こんにちは」と言う。子どもに「ほら、なんて言うの?」 と問いかけるのではなく、適切なやり方を見せて、一緒にやって、教えていくのです。
帰宅時に「せ―の、ただいま!」と言うのもいいですね。自開スペクトラムの特性がある子は立場の違いを読み取るのが苦手で、帰宅時に「おかえり」と言われると「おかえり」と返してしまうところがあります。

それを「ただいまでしよ」と注意するのではなく、「ただいま」を一緒に実践する。お手本を見せるとわかりやすくなります。


そうですね、我が家の成人した息子・・・いまだに「ただいま」「おかえり」の立場が、完全には理解できていないようで、「おかえり」と言われて、「おかえり」と言ってしまうことがありますね。
今度は、「せーの、ただいま!」を試してみましょうか。

本書の副題は、「自閉スペクトラムの不可解な行動には理由がある」です。マンガで「不可解な行動」を、我が子にもアルアルとイメージできたら、本田先生の解説とその後のアドバイスをお聴きしましょう。

気軽に読めて、しかもたくさんのヒントをもらえる一冊として本書をお薦めします。

 

              (「育てる会 会報 306号」(2023.10) より)

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目次


   Prologue 1  「少数派」タイプの子どもたち
   Prologue 2  発達障害の子と 『みにくいアヒルの子』

   はじめに  誤解されやすい自開スペクトラムの子どもたち

CASE  1 なんにでも手を出して、勝手に遊んでしまう
        解説  先生によって、注目しているポイントが違います

CASE 2 特定の子と一緒になると、いつもケンカになる
        解説  この先生は「スペーシング」で問題を解決しています
     Column 1 学童期までは「トラブル回避」優先でかまわない

CASE 3 自分からは話しかけるのに、人の話は聞かない
        解説  会話を楽しむというよりは、趣味を楽しんでいます

CASE 4 いたずらして注意されると、むしろ調子に乗る
        解説  行動がパターン化している可能性があります

CASE 5 学校での生活に、いつまでたっても慣れない
        解説  自開スペクトラムの子の生活は、最初が肝心です

CASE 6 園に行くとき、いつも同じ道を通りたがる
        解説  「いつもと同じ」であることへの安心感が強いのかもしれません
     Column 2 自開スペクトラムの子の「考え方」にはどんな特徴がある? 056

CASE 7 外出先の病院などで、ちやんと挨拶しない
        解説  「この子は本当に挨拶ができないの?」と考えてみて
     Column 3  挨拶できるようになる時期を気にする必要はない

CASE  8 タンスに登って飛び降りるので、危ない
        解説  親が「安全なもの」「危険なもの」を区別しましょう

CASE 9 着替えや食事などの生活ルーティンが身につかない
        解説  その子にとって、わかりにくいやり方なのかもしれません
     Column 4 「視覚情報」で支援していて自立できる?

CASE 10 ささいなことで、かんじやくを起こす
        解説  「こだわり」と「かんしやく」を分けて考えましょう

CASE 11 偏食があって、なかなか変わらない
        解説  偏食には変わる部分と変わらない部分があります

CASE 12 真冬でも、半袖・半ズボンを着ている。
        解説  感覚過敏や感覚鈍麻、こだわりの可能性があります
     Column 5 「感覚過敏と感覚鈍麻」は克服できる?

CASE 13 学校で教室移動中に、廊下を走り出す
        解説  子どもの行動を予想できるかどうかが、ポイントになります

CASE 14 褒められたのに、先生の腕を嚙んでしまった
        解説  褒められてうれしいときと、恥ずかしいときがあります

CASE 15 大人に注意されると、腰砕けな答えを返す
        解説  暗黙の了解が読み取れず、人間とものを同列に見ています
     Column 6 自閉スペクトラムの子の「アタッチメント(愛着)」

CASE 16 文章の細かいところを気にしすぎる
        解説  授業でも「含み」がわからないと解けない問題があります
     Column 7 子どもが言外のメッセージに気づかなかったら

CASE 17 質問されると、すぐに「わからない」と言う 
        解説  「わからない」にはさまざまな理由が考えられます

CASE 18 話し方が変わっていて、同級生と打ち解けない
        解説  同級生の話し方よりも、テレビの解説を参考にしているのかも

CASE 19 自分の意見を言わず、まわりに合わせてしまう
        解説  期待に応えようと「過剰適応」をしているのかもしれません

CASE 20 元気に学校に行っていたのに「突然不登校」に
        解説  「無理をしているサイン」がそれまでに出ていたのかも

CASE まとめ 自閉スペクトラムタイプの子育ては「逆説的」なもの

  Epilogue 心の健康がすべての上台になる

  おわりに  子どもたちの微妙なニュアンスをよりリアルにお伝えしたい