
「本来の自分」を発揮するのはすばらしい!
「本来の自分」を発揮して、
それを受け止めてもらえると、
人に優しくなれる。
ボディートークが掲げる、表現活動の真の目的だと、
私は認識しています。
でも、本来の自分を発揮して、
それが馬鹿にされたり、笑われたりしたら、
どれほどの傷になるか。
それもまた、表現活動を促す指導者は、
よく理解していなくては、
その子を一生、表現嫌いにさせる可能性もあると思います。
私はたびたび、こどもの行動からそれを学ばせてもらっています。
夏休み前、たくさんのプリントや提出物を持ち帰るこどもたち。
私の大好きな中学年のちぃくん(仮名)も、
学校で描いた絵を持ち帰ってきました。
ちいくんは、周りの子に比べると、発達が少しゆっくりめで、
そのために、周りに馬鹿にされたりすることがあります。
でも、とても純粋で、優しくて、
感性豊かで、私は彼の感性にふれるたび、
あたたかさや感動をもらいます。
そこで、ちいくんに「絵を見せて!」とねだりました。
すると、彼は「のりちゃんなら、トイレでなら見ていいよ」と言います。
トイレ?
なんでかな、と、思い、「ここで見せて」というと、
近くにいた子も興味を持って、
「みたい!みたい!」と言い出しました。
ああ、そうか。
みんなに見られたくないんだ。
私は周りの声がおさまった頃、
トイレに絵を見に行きました。
それはそれは、楽しくて、彩りも華やか、
みんながニコニコしている
キャンプの思い出でした。
でも、周りの子が見たら、
そのすばらしさより、きっと、
彼の絵の配置や、色の使い方など、
アンバランスさを笑うのだろう。
だから、トイレだったのでしょう。
彼なりに、自分の感性を自分で守っていたのです。
私は彼のその思いに、胸が苦しくなりました。
…そんなとき、トイレを激しくノックする音が!
「入ってます!」と、答えても、
さらに激しくたたいています。
仕方なく扉を開けると、
ちいくんが恥ずかしそうに立っていました。
「ちいくん、すごくステキな絵だね!」
私は、私が思うステキな点を、
次々、彼に話しました。
彼もまた、絵の説明をいっぱいしてくれました。
日本社会では、まだまだ常識からはみ出すこどもや、
枠におさまらないこどもは、生きにくい。
私がこどもの時、自身がそうだったように。
「銀河鉄道の夜」を読んで、
地面を銀色に、夜空を七色に塗って、
みんなに笑われたことから、何も変わっていない。
でも、私はそんな感性を愛しいと思います。
感じたことを、ちゃんと表現できるちいくんを
心からステキと思うし、
それを感じられる自分でいたいです。