トイレで見た芸術作品~少年のナイーブな心 | こどもの心はミュージカル!

こどもの心はミュージカル!

こどもの心は喜びにあふれ、歌いたくて踊りたくて、ワクワクしているものです!それは『創造力』『表現力』があふれているから。
その力を、ミュージカルをはじめとする全身表現で、大きく膨らませたい!――― それが私の大きな夢。

こどもの心はミュージカル!

「本来の自分」を発揮するのはすばらしい!
「本来の自分」を発揮して、
それを受け止めてもらえると、
人に優しくなれる。

ボディートークが掲げる、表現活動の真の目的だと、
私は認識しています。

でも、本来の自分を発揮して、
それが馬鹿にされたり、笑われたりしたら、
どれほどの傷になるか。

それもまた、表現活動を促す指導者は、
よく理解していなくては、
その子を一生、表現嫌いにさせる可能性もあると思います。

私はたびたび、こどもの行動からそれを学ばせてもらっています。


夏休み前、たくさんのプリントや提出物を持ち帰るこどもたち。
私の大好きな中学年のちぃくん(仮名)も、
学校で描いた絵を持ち帰ってきました。

ちいくんは、周りの子に比べると、発達が少しゆっくりめで、
そのために、周りに馬鹿にされたりすることがあります。

でも、とても純粋で、優しくて、
感性豊かで、私は彼の感性にふれるたび、
あたたかさや感動をもらいます。

そこで、ちいくんに「絵を見せて!」とねだりました。

すると、彼は「のりちゃんなら、トイレでなら見ていいよ」と言います。

トイレ?
なんでかな、と、思い、「ここで見せて」というと、
近くにいた子も興味を持って、
「みたい!みたい!」と言い出しました。

ああ、そうか。
みんなに見られたくないんだ。

私は周りの声がおさまった頃、
トイレに絵を見に行きました。

それはそれは、楽しくて、彩りも華やか、
みんながニコニコしている
キャンプの思い出でした。

でも、周りの子が見たら、
そのすばらしさより、きっと、
彼の絵の配置や、色の使い方など、
アンバランスさを笑うのだろう。

だから、トイレだったのでしょう。

彼なりに、自分の感性を自分で守っていたのです。

私は彼のその思いに、胸が苦しくなりました。

…そんなとき、トイレを激しくノックする音が!

「入ってます!」と、答えても、
さらに激しくたたいています。

仕方なく扉を開けると、
ちいくんが恥ずかしそうに立っていました。

「ちいくん、すごくステキな絵だね!」
私は、私が思うステキな点を、
次々、彼に話しました。

彼もまた、絵の説明をいっぱいしてくれました。

日本社会では、まだまだ常識からはみ出すこどもや、
枠におさまらないこどもは、生きにくい。

私がこどもの時、自身がそうだったように。

「銀河鉄道の夜」を読んで、
地面を銀色に、夜空を七色に塗って、
みんなに笑われたことから、何も変わっていない。

でも、私はそんな感性を愛しいと思います。

感じたことを、ちゃんと表現できるちいくんを
心からステキと思うし、
それを感じられる自分でいたいです。