素材として、段ボールを意識したのは、1997年に「手で作る本の教室」という名で、手工製本を教えだしてからです。
大きいカルチャーセンターにある手製本教室とは一線を画するようにしないとどうしようもないですから、
「なんでも好きなことしてくださいね!」
ということを強調していました。
結果、カルチャーセンターでは、持て余される、キャラの濃い人々が集まることになりました(その傾向は今でも、変わってないです)。
当時、私の教えられるネタは、古典的なフランス工芸製本一つで、とても心配でしたが、生徒さん方は、上の私の宣言通り、容赦なく、あんなのが作りたいこんなのが作りたいと言ってくださるので、作り方を考えるのが大変でした。
が、実はそれは、うれしい悲鳴、とういうやつで、実際、これが活路となっていったのです。
こういう初期生徒さんの中に、和井埜さんという生徒さんがいらっしゃって、私はこの方から特にたくさんのことを学びました。自由な発想が本当に面白かったです。
この和井埜さんが、段ボールを使っていたのが、素材として段ボールに出会った始めです。
これ↓は、ずいぶん後で和井埜さんのアイデアに、3つぐらい私のアイデアを添加して作った「封筒の本」です。
最初の段階の相談では、この「背」の見栄え、段ボールの断面を装飾として見せつつ厚みを出す、しかし、おさえたら簡単に潰れてしまうのはどうしたらいいか、ということでした。
薄い木の板を支って補強する、というのが、私の教えた解決対応でした。
和井埜さんにはアイデアがあり、私には構造理解がある、という感じでした。このように、ちゃんと自分にも役目があったのです(まあ、でなきゃ「教室」にならないですよね)。
程なくして、表裏交互に切り込みを入れると、蛇腹状のものが作れるということを発見しました。
こちらは当時作った試作。穴があるから、それも何かに使えないか?と毛糸を通したりしてみています(よく20年も取っておいたものだ、と思います)
和井埜さんは、他に、布表紙の芯を3枚くらい貼り合わせた段ボールにして、分厚いんだけど驚くほど、持ち軽みのする本、というのを作ったり、
お茶のお点前で使う「台子」という茶道具も段ボールで作った、と楽しそうにおっしゃってました。
このようにして、私は、自分の製本教室で鍛えられつつ、段ボールにも親しんでいったのです。