副腎腫瘍(フェレット)
副腎とは
腹空内に2つある米粒程の小さい臓器です。
左右2つの腎臓の頭側にそれぞれ1つずつあります。
副腎からは、生きていく上で重要な数種類のホルモンが分泌され、体の機能を調節しています。
フェレットの副腎腫瘍の症状
フェレットは、腫瘍化した副腎から分泌されるホルモンが犬や猫と異なります。
主に、性ホルモン(エストロゲン、アンドロゲン)が分泌され、それに伴った症状が現れます。
尾から腰または頭部から肩にかけての進行性の脱毛や乳首の発赤、メスの外陰部の腫大やオスの前立腺肥大に伴う排尿障害などです。
また、発情のような行動の変化や体臭の変化がみられる場合もあります。
長期間続くと、全身的な脱毛、外陰部のかぶれ、脂肪の蓄積、筋肉の衰弱、尿閉塞による腎不全、骨髄抑制による悪性貧血などが起こる場合もあります。
腫瘍が大きくなってくると、胃や腸を圧迫して食欲不振になったり、嘔吐がみられたりします。
また、腎障害・肝障害・循環障害になる場合もあります。
腫瘍が悪性であれば、転移を起こし、手の施しようがなくなることもあります。
治療法
フェレットの副腎腫瘍の治療は、第一選択肢が外科手術による摘出となります。
良性でも悪性でもお腹の中に腫瘍がある以上、手術ができる状態であれば、早めに腫瘍を取り除いた方が、後々問題になりにくいと考えられます。
ただし、手術が選択できない場合は、内科療法となります。
内科療法では酢酸リュープロレリンという薬を使用します。
この薬は脳下垂体に作用し、副腎から放出される性ホルモンの分泌量を減少させます。
その結果、脱毛や外陰部の腫大などの発情症状が改善されます。
また、骨髄抑制による貧血や前立腺肥大による排尿障害の回避にも有効であると思われます。
この薬は1ヶ月毎に投薬しないと効果が続きません。
根本的な治療にはならないので、1カ月に1度打ち続ける必要があります。
当院での症例
体の毛の脱毛を主訴に来院されました。
外部寄生虫を除外後、血液検査・レントゲン検査・エコー検査をしました。
検査では異常ありませんでした。
副腎のサイズも正常でした。
フェレットの副腎腫瘍は、数㎜のサイズの場合もある為、エコー検査でわからないこともあります。
症状から副腎腫瘍を疑い、確定診断には副腎摘出生検の必要性をお話しました。
オーナー様は外科的な手術は希望されませんでしたので、内科療法を実施しました。
陰部の腫脹もなくなりました。
リュープリン投薬2カ月後
体幹の毛はしっかり生えそろいました。
今後引き続き、リュープリンを1カ月に1度接種が必要です。
また定期的な副腎腫瘍のチェックと血液検査で経過を見ていく予定です。