乳頭腫というのはいわゆる「イボ」の事です。
その姿形が乳頭に似ているので乳頭腫と呼ばれています。
よくみられるありふれた疾患ですが、猫には殆ど見られず犬に多い良性腫瘍です。
老犬にできるものは非ウイルス性(単発型)のものが多く
頭やまぶた・肢に出来やすく特にオスに多い症状です。
若い・幼い犬にできるものはパピローマウイルス(多発型)によるものが多く
頭部、眼瞼、肢端、口腔に発生し、カリフラワー状になってしまう事もあります。
乳頭腫は目障りなこともありますが、切除する必要がある乳頭腫は出血や感染が起こっている場合や、
それ以外に問題がある場合のみです。
乳頭腫は治療をしなくても、自然に退縮します。
とは言え、極稀ではありますが、悪性化し、扁平上皮癌と変化していく場合もあります。
また、あまりにも腫瘍が大きい場合は切除することもあります。
今回の子は眼瞼にイボができてしまいました。
少しずつ大きくなっているとのことです。
以前、同じところにイボができました。
麻酔をかけ、イボの根元で切除、病理検査をした結果、
乳頭腫(ウイルス性の所見なし)と診断がついていました。
その3ヶ月後にまたイボが再発をしてしまったのです。
以前の病理検査から乳頭腫と診断がついていますので、基本的には再発と考え、
切除の必要はないと思われます。
しかし、可能性は低いかもしれませんが、
・別の腫瘍が同じ場所に偶然できた
・良性腫瘍の悪性化がおきている
可能性もあります。
また今回の場合はイボが角膜に当たって刺激してしまい、
角膜損傷、角膜浮腫、結膜炎、強膜炎など起こしています。
これはイボを切除しないと治りません。
よって切除しました。
以前のようにイボの根元の切除では再発する可能性が高いと考え、
根元を楔型に正常な皮膚ごと切除して眼瞼を縫合しました。
眼瞼を正確に整えないと、内反症や外反症、まつげが目を刺激するなど問題が起きる場合があります。
病理検査の結果今回も乳頭腫(ウイルス性所見なし)と診断がつきました。
他の腫瘍、悪性化ではなかったので安心です。
再発がないことを祈っています。
術後2週間で抜糸しました。
しこりが消えたため、眼への刺激がなくなり、角膜の浮腫、強膜炎、結膜炎が落ち着いてきました。
眼瞼も傷もきれいにくっついています。
毛が生えるのはもう少し時間がかかると思います。
眼への刺激が長くなると、涙の分泌量が少なくなるドライアイに進行している場合があります。
人間がコンタクトレンズをずっとつけているとドライアイになるのと一緒です。
折を見て、一度涙の量を測定してみる予定です。