あの時のことを思い出しながら運転しました。
大怪我をしたシルバをテニスボールが一つ入るくらいの小さい箱に
入れて鳥専門病院へ向かいながら夢であってくれと思ったり、
何か特別な治療があって元気になってくれたらと思ったり・・・
でも、箱を覗くとシルバは口の周りが血まみれで、こちらを見ているのです。
夢ではないし、素人の私から見ても特別な治療が存在しないのは
明らかでした。
先生に診断を受ければ、残る選択肢は安楽死だけでした。
あの時ほど、時間が戻ることを念じたことはありません。
到着した病院では予想通り、厳しいという診断でした。
クチバシが脱落した状態では餌を食べれません。
安楽死という言葉を先生は発しませんでしたが、
ポジティブな言葉も一切ありませんでした。
将来の可能性がないということが、選択肢を
決定しているようでした。
でも、私たちは強制給餌を選択したのです。
これは、飼い主のエゴだったのかも知れません。
生きてくれればそれで良かったのかもしれません。
そんな中、病院で強制給餌のやり方を
教えていただきましたが、強制給餌のレクチャーを
受けている際にシルバは一時的に意識を失いました。
大きな痛みと疲労からだと思います。
先生は1~2日ほど入院して落ち着いてから
強制給餌を練習してみては?と言われました。
しかし、大怪我をして慣れない環境下にシルバを
残す勇気はなかったのです。
これもエゴなのかもしれません。
もしかしたら、朝を迎えられないかも?と思っていました。
だから、一緒に居たいと・・・
そして、シルバを連れ帰ってからの夕方、
何とか強制給餌を成功させて現在に至ります。
最初の2か月間は強制給餌のみで頑張ってくれたシルバ
でしたが、うつ状態がつづき、小さく弱いヒナの様でした。
体重は一時、18g(空腹時)まで減少して、たまに飛ぶ姿も弱々しく
今にして思えば、ただ目標もなく生きているだけという状態でした。
ところが、今から1か月前に突然、自分で餌を食べるようになり、
状況は一変したのです。
元来の暴君の姿になり、怒る突く、唄う、高速飛行をする。
クチバシを除けば、事故前と同等、いや事故前よりも元気に
強くなりました。
体重も今現在は23g(空腹時)前後を維持しています。
自ら餌を食べるようになった時期は、換羽の直前だったので、
もしかしたら、換羽を乗り越えるためにがんばったのかもしれません。
当初は餌を吸い込んでいるのかと思っていましたが、
調べると鳥に吸い込む能力は無いようです。
良く観察するとクチバシ右側下の残った土台部分と、
硬くなった舌を使って掘るようにして餌をそのうへ運んでいるようです。
信じられない技です。
そんなことを改めて思いながら、本日は鳥専門病院へいってきました。
目的はちゅらの通院と、シルバの健康診断です。
シルバに関しては、3か月前のあの事故の日以来の病院です。
シルバはカゴごと車に乗せたのですが、
道中、いつものように家人を呼んだり、唄ったり。
リラックスして元気、元気。
診察では・・・・
シルバが餌を自分で食べれるようになったことに
先生はただただ驚き喜んでいました。
そして、先生はカゴの中へ手を入れたのですが、
なかなか捕まえることができません。
今のシルバは、簡単に保定されるほど
のろまじゃないのです(笑)
それでも、相手はプロなので
とうとう保定され診察へ
念入りに露出した舌周辺を確認しつつ、
毛艶、肉付きも確認。
傷跡も綺麗だし、毛艶もいい
肉付きも問題なし。
糞も問題なし。
パーフェクトでした。
舌に関しては肉厚になってきているとのこと。
失ったクチバシを補完する役目に変化しているようです。
上のクチバシが脱落した小鳥が餌を食べることは
あるのですが、シルバの様に上下のクチバシが
ほぼ脱落した状態で、餌を自ら食べるということは
稀というか、無いようです。
それを聞いて
結局、救われたのは私たち家族だったのだと痛感しました。
クチバシを奪ってしまった私たちにシルバは奇跡を見せてくれたのです。
シルバには感謝しかありません。
私が言うべきことではないのは承知しているのですが、
このシルバの話が同じような状況に陥った方への
参考になればとも思っています。
シルバ 「おい!大丈夫か?元気になる方法教えてやろうか?」
ちゅら 「眠いだけだから、構わないでくれ」
シルバ 「ほんとに大丈夫か?なぁ、大丈夫か?」
ちゅら 「一人になりたい・・・」
一方のちゅらですが・・・
強制給餌をした方がいいかも?という診断でした。
多飲についても相談したところ、やはり肝臓由来の多飲とのことでしたので、
闘病はまだまだ続きます。
帰宅後、3ccの強制給餌を行い、様子を見ていますが
特に問題もなく毛繕いをしています。
餌は自分で食べているのですが、水の多飲があるので
すぐお腹いっぱいになる、つまり沢山食べれない。
食べれないから痩せていく、痩せて体力がないから体が回復しない。
まるで負のスパイラルです。
ならば、水を飲む前に強制給餌を行うことで満腹にして多飲の頻度を下げる。
タイミングを見計らい高カロリーのパウダーフードを使って、強制給餌を
実行するしかないようです。
心を鬼にして、ちゅらを支えていくしかありません。
追伸
診断でシルバの舌を初めて見た先生が発した言葉・・・
先生「なにか飛び出ているのは何ですか?」
私「それは、角質化している舌です」
えっ!?と思いましたが、獣医の先生でも角質化した舌を見るのは
初めての様でした。
おこがましい話ですが、
シルバを先生に見ていただくことで、先例をつくり
助かる小鳥が増えることも願っています。
長文をご覧いただきありがとうございました。