春になった

あたたかな陽気


空もやさしく

霞んでいる

 

冬を耐えた植物は

次々と春を主張する


人はさくらの華やかさに心魅かれ

上を見た

 

ひとりの男はふと足をとめ、下を見た

人々は上を見ていた

 

男は小さく咲いた花に触れ

微笑んだ

 

それは小さな青い花だった

誰かがつけたへんてこな名前の

その名前さえきっと知らない、小さな

 

「きてごらん」

男は小さな男子を呼んだ

 

「かわいいね」

「星みたいだろう」

「青い星だね」

 

ほんとうは名前など どうでもよかった

ただ 誰かの特別な存在になりたかった

 



日が暮れて まだ肌寒い春

青い星は夜空を見た

 

暗い闇に 微かに瞬くものがある


青い星から 一粒の露が零れ落ちた

 

オオイヌノフグリ

 

 

 

 

 

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