柳家小三治『落語名人会43 柳家小三治19』「文七元結」 | 落語探偵事務所

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柳家小三治『落語名人会43 柳家小三治19』ソニー・ミュージックレコーズ、1996年。

1990年10月31日、鈴本演芸場での「文七元結」を収録しています。

これを年末の夜に聴いて「ああ今年も暮れていく~」としみじみとした心持になりました。

マクラ(このマクラも面白いです)でこの年(1990年)の夏に北海道をオートバイでツーリングした話がでてきますが、ライナーノートの解説と合わせると、どうも小三治師匠はこのツーリングでの遠征先で何度も「文七」を演って、噺を練ったようです。

「文七元結」は謎の噺だと思います。

特に左官の長兵衛が文七に大金を投げつけるようにして渡すシーン。
死ぬの生きるので迷っているからといって、見ず知らずの他人に大金をあげられるものなのか。
「江戸っ子」気質といっても、これは無いんじゃないのか。
ここにリアリティはあるのか。

分かりません。
リアリティは無いように思うことのほうが多いです。

こうやってブログでこの噺について考えながら綴っていたりするとリアリティは感じないんですが、しかし、色々な口演を聴いていると、のめり込んで聴き入ってしまいます…。

この小三治師匠の口演もそうでした。

この問題のシーンは芝居臭さをごっそりと消し去っていて、長兵衛はあっさりとした人間に描かれていましたが、聴いている内はそれが自然に感じる…という不思議さがあります。

いわゆる「キャラ立ち」をかなり漫画的に演出することで、笑いを誘い、芝居臭さと不自然さ(リアリティの問題)を背景におしやっているのかもしれません。
これはこのシーンだけでなく、遊郭の女将が長兵衛にお金を貸すシーンの演出でも使われています。

マクラからサゲまでびっちり77分間。
かなりの長講ですが、聴いていても長くは感じませんでした。

いい落語を聴いて1年が暮れていくなぁ…としみじみしながらゆったりと聴きました。
もちろん、年末に限らずいつ聴いても楽しめる口演だと思います。

ぜんぜんまとまりがないですが、以上を新年一発目のブログ投稿といたします。m(_ _)m