「さとの詩」は高知・福留菊水堂の山桃をモチーフにした和菓子です。山桃は牧野富太郎博士の呼びかけで高知県の花に指定されており、その実は高知県の特産品として一時話題となったことがありました。


 子供の頃、伯父の家の庭に大きな山桃の木があり、梅雨の時期になると赤紫の実を付けていました。





 表面はざらざらした食感で青臭く、口に入れると顔が歪むほど苦味と酸味が強く、ごくわずかに甘味があるものの決して美味しいとは思えない果実でした。種が大きく実が少ないことも弱点でした。


 さらに実のなる頃には枝に毛虫がいる上に大きな青大将まで現れ、実が熟すとハエが集まるなど子供心に食べるにはかなりの勇気がいる代物でした。


 最近はシロップやジャムに加工され、山桃の風味を楽しめる高知県の土産物として販売されています。





 高知市に隣接する南国市十市(とおち)の山で山桃の原木が見つかり、その根元に歌碑が立てられました。

“吾が里のももの祖木ぞ標結うていく寿しかれと祈るなりけ里“

「さとの詩」はこの歌碑からヒントを得た山桃風味の菓子であると添えられた栞に書かれています。





 「さとの詩」は山桃風味の羊羹を伸ばして、表面を濃緑に彩色した粉末で固めて短冊状にした菓子です。山桃の酸味は少なく、しっとりした羊羹の甘味を楽しめるお茶菓子です。





 山桃を材料にした数少ない土佐の和菓子です。