一六タルト


 関東に住むようになって、高知出身と自己紹介をすると、“四国ですか“に始まり“うどんが美味しい“とか“道後温泉に行ったことがある“とか“阿波踊りが見たい“とか“一六タルト美味しい“とか、返答に困るリアクションが返ってきます。




 四国四県はそれぞれの間に聳え立つ山々で遮られ、言葉、習慣、価値観などまったく異なります。時間距離は高知からいずれの県庁所在地に行くのにも2時間前後要し、東京へ行く距離感と同じです。


 したがって、松山出張の折にはお土産を購入します。「一六タルト」か「坊ちゃん団子」です。「一六タルト」は同名の菓舗が明治16年創業に由来する菓銘です。




 昔は餡をカステラで巻いた品物だけでしたが、現在はキャラメル、甘夏みかん、宇治抹茶、柚子など種類が多くなっています。


 今回はさいか屋藤沢店で「一六タルト・甘夏みかん」と「一六タルト・宇治抹茶」購入しました。甘夏みかんは愛媛県南部で取れるとっても甘いみかんで、本来ならみかんだけ食べたいのですが手に入らず、仕方なくタルトにした次第です。





 「一六タルト・甘夏みかん」をいただきました。わずかに黄色を帯びたカステラと餡は美しく、食欲を呼び起こします。


 ほのかに柑橘の香りが漂い、柔らかなカステラとしっとりした餡の歯応えが快く、適度に甘い餡の中に閉じ込められたみかんの皮が独特の風味を醸し出しています。




 高知在住の頃は“何だ、タルトか“と思っていた概念を払拭する美味しさでした。