彼は以前職場の部下であった。とっても世話好きな男で、しかも太鼓持ち的なところがあり、宴会の段取りや盛り上げ役として、同僚の間で人気者であった。ただ、酒癖が悪いのが欠点で、40歳過ぎても未婚であった。家族はおらず、極めて気ままな生活を送っていた。
仕事場でもまめで、厄介な仕事を嫌な顔一つせずこなしてくれた。競馬が好きで、初心者の私にいろいろ指南してくれた。重賞レースの時は、阪神競馬場や京都競馬場へ案内してくれたものだ。
その後、私は退職し郷里を離れて北國の山深い田舎に転居した。
ある雪がしんしんと降る深夜に携帯が鳴った。携帯の画面には彼の名前が記されている。電話を取るが、何度呼びかけても無言である。酔った上での悪戯電話だろうと切った。
後日、彼の訃報を聞いた。脳出血で3年間意識がない状態だったと。詳しく聞くと電話を受けたその日、その時間に亡くなっていた。合掌🙏
信じようと信じまいと、これは事実である。