暫く書いていませんでしたが、特に理由があったわけではありません。またちょっと復活しようかと思っています。

 先日最近近所にできたジョーシンのミニコンポのコーナーで偶然聞いてみたビクターのウッドコーンスピーカの音に魅せられて、ついつい10年以上振りにミニコンポを買ってしまいました。私としては久し振りに清水の舞台から飛び降りるような大きな買い物でした。(ネットの通販で安いのを見つける手間もかけました。)
 そのミニコンポが今朝到着。接続の儀もそこそこに早速試聴。色んな種類の音楽を試してみました。フルレンジという触れ込みではありますが、所詮は直径9センチの小型スピーカです。当然のことながらオーケストラの音に高望みはできません。私が期待していたのは、シンプルでアコースティックな響きの美しさです。ピアノとかヴァイオリン、チェロ、ヴォーカルなんかの。
 今日聞いた感じでは、弦とかヴォーカルは期待通りでした。ピアノは、やっぱり両手で和音叩きまくりみたいなところはやっぱりきつい。でもジャズピアノみないな比較的シンプルな響きは十分綺麗に出てました。久し振りにベートーヴェンの弦楽四重奏曲なんかも聞いてみましたが、印象が全然変わりました。持ってたハーゲンの演奏でちょっと聞いてみたのですが、鋭いというか厳しいというかとんがってるというか(もっと言えばギスギスしているというか)、ハーゲンの特徴でもあるのでしょうが、ベートーヴェンもまともな神経の持ち主じゃなかったんだな、ということがよくわかりました。オーケストラの曲を聞くより、室内楽を聞いたほうが、一つ一つの楽器の細かいニュアンスがよく聞き取れるという面白みがありますね。聞く機械が変わったことで聞く音楽のジャンルが変わってきそうです。
 ボーカルの曲も幾つか聞いてみたのですが、これまた持ってるCDの中から久し振りにジミー・スコットのジェラスガイを聞きました。元々好きな曲ですが、解像度の上がったスピーカで聞いてとても新鮮でした。実はずっと昔この人のライブ行ったことあるんですよ。あれは確か神戸だったか。今どうしてんのかなぁ、と思ってネットで調べてみると、何と今年の6月にお亡くなりになっていました。何という。知りませんでした。88歳だったとのこと。合掌。
 youtubeにあったJealous Guyを貼っておきます。この声の絶妙なかすれ具合。

I didn't mean to hurt you. I'm just a jealous guy.

聞いたことない方は是非ご一聴下さい。何度も繰り返して聞いてしまう曲の一つになるんじゃないでしょうか。
https://www.youtube.com/watch?v=co01iVLaRSc
 また年が一巡りしてしまいました。またしても無為な一年を過ごしてしまいました。それにしても何十年も生きて来て、充実した一年、なんて一度もなかった気がします。今までなかったということは、これからもないんでしょう。少年老い易く、学成り難し。歳をとったからといって、賢くなるわけではないことを実感する今日この頃です。
 年末は、深夜BSでスカラ座の「トリスタン」と「黄昏」を見てました。トリスタンの演出はパトリス・シェローでした。彼は去年(2013年)亡くなったんですね。まだ68歳ということでした。彼とブーレーズのリングは、いまだにあれを越える演出は出ていない、といっても過言ではない不滅の金字塔と言えるでしょう。その印象が強すぎるためか、「トリスタン」の演出は、もっといろいろやってもらいたかった、と思ってしまうくらい「普通」のものでした。注意深く見れば、細かいところではいろいろやってたんでしょうが。
 「黄昏」では、ヒーロー中のヒーロー、ジークフリートが、いいように操られ、あっけなく殺されてしまいます。リングは、ヴォータンを巡る話とも、ジークムント、ジークフリートを巡る話とも言えますが、最終的なヒーロー(というかヒロイン)はブリュンヒルデです。彼女が「賢く」なるために、ジークフリートが死んだ(犠牲になった)とも言えます。(リング全体をブリュンヒルデが真実を知るに至る物語として見ることもできるでしょう。)更に言えば、全てを知るに至ったブリュンヒルデの最後を見届けた人間族(観客である我々)が、最終的な生き残り者(証人)としてこの話を語り継ぐ役割を担うことになります。我々は(ブリュンヒルデ)とともに、この物語の全てを目撃し、賢くなったはずなのですが。古い年の黄昏から、新たな年の黎明へ。私たちは、いつになったら過去から学ぶようになるのでしょう。
 デボラ・ヴォイトのブリュンヒルデ。物凄い声量です。これではワルハラ城もひとたまりもないでしょう。何もしなくても新たな年はやってきますが、新しい時代がやってくるのはいつのことになるのでしょう。
http://www.youtube.com/watch?v=TMBHxG_RCnM
 今たまたまCSのザッピングをしているとミュージックチャンネルで中島みゆきの特集をやってました。今丁度『時代』の2010年ライブバージョンです。まわる、まわるよ、時代はまわる。今日は倒れた旅人たちも、生まれ変わって歩き出すよ。
 自分自身を託すことのできる歌手をただ一人選ぶとすると、私にとっては中島みゆきになるのかもしれません。
 この番組ではちょっと前にこれまた比較的最近の『歌姫』のライブバージョンも流してました。これは初見でした。この歌が入っている彼女のアルバム『寒水魚』は、私が高三の時発売され、京都での予備校時代死ぬほど聞いたものでした。

 ...女はいつも、嘘が好きだね。昨日よりも、明日よりも、嘘が好きだね...

初めて聞いてから何十年も経って、こんな歌詞の一節も心に沁みるようになりました。

 ...握りこぶしの中にあるように見せた夢を...

僕の握りこぶしの中には、まだ夢のかけらの少しでも残っているのでしょうか...

youtubeにもライブバージョンの『歌姫』がありました。コンサートの映像は写真に替っていますが、歌詞付きです。
http://www.youtube.com/watch?v=fTlgZY-q_Gs
 昨夜のBSプレミアムシアターは、この夏国立劇場で上演された、モーツァルトのコシでした。お目当てのミア・パーションに関しては、正直ちょっと老けたかな、という印象が拭い切れないものはありましたが(若い頃は可愛かった)、そんなことはおいておいて、やっぱりオペラは、演出が気になってしまいます。
 コシの場合、エンディングをどうするかってのが、話全体にかかわる大問題になってきます。男の側からすれば、恋人の貞節を試しておいて、女性陣をうまくとっちめたとはいえ、心変わりされてしまったことは事実なので、最後に全て冗談でした、って言ったって、そりゃ洒落になってないって。もう、元の恋人同士にはなれませんよ、ってことになってしまいます。
 今回の国立の演出では、最後には、(アルフォンソとデスピーナも含めて)3組6人の男女達はみんな、ばらばらになってしまいます。(哲学者アルフォンソだけが幕が降りる前、舞台に一人残ります。(残るのか、一人取り残されるのか、ってのもまた解釈のしようではありますが。)そしてみんなばらばらになった、と言ったところでしょうか。
 エンディングの場面では、「理性があればなんでも克服できる。」と、元気があれば何でもできるばりのいい加減なメッセージが歌い上げられますが、舞台上の演出はその歌詞を裏切るように、みんながてんでバラバラの方向に走り去ってしまいます。

 コシは、モーツァルトのオペラの中では、あまり内容に深みがないものとして、軽視されているように思えます。そんなことはない、考え出すと深すぎる内容を持ったオペラではないか、と密かに思っている私としては、これから暫く、コシについて語っていきたいと思っています。

 今日のところは、同じくミア・パーションがフィオルディリージを演じた動画があったので、これを貼っておくことにします。このバージョンのエンディングでは、2組のカップルは、元の組み合わせに戻ろうとしますが、どこかぎこちない微妙な感じになって終わるという、後味の悪いものとなっています。高い金払ってオペラ見て、何か後味の悪いものを残したまま劇場を後にする。これもまた人生。(でも、ミア・パーションは綺麗です。)
https://www.youtube.com/watch?v=8OUrafVroho
              - to be continued -
 うpされた方がタイトルにつけられた通り、最も「壮絶」なマラ6の演奏の一つでしょう。テンシュテットはイギリスではフルヴェンの再来とか呼ばれていたそうです。妙に人気が出てきたために、逆にかなりのプレッシャーを感じていたそうです。ヘビースモーカーでアル中だったという話も聞いたことがあります。プレッシャーがかかってる分、演奏にはものすごく力が入っちゃったんでしょう。まさに、全身全霊、というべき演奏です。出だしから、並の演奏とは緊迫感が違います。でも、さすがにこんな演奏ばっかり聞かされると、しんどくなってきます。いつも聞いていたいとは思いませんが、年に一回か二回は、どうしても聞きたくなる演奏です。
http://www.youtube.com/watch?v=LXMKq-S2E18
 今日新しいデスクトップパソコンが届きました。長年の間使ってきたNECのバリュースターが10月の一日、消費税引き上げの決定を待っていたかのように(本当何の因果が丁度この日に)ぶっ壊れてしまいました。(HDがいかれちゃったみたい。酷い使い方してごめんね。)
 というわけで、2回続けて(水冷式の)バリュースターだったのですが、今回は、少しネットで調べた結果、HPのEnvyをちょっとカスタマイズしたものにしました。windows8で、(10年使うつもりで思い切ってoffice2013を入れました。それにしてもXPからいきなり8に来ると、いろいろ戸惑います。シャットダウンの仕方も、ネットで調べないとわからないという。
 全体的には、当然のことながら、前よりずっと軽いし、安定しているし、まずは快適です。心機一転と言ったところでしょうか。

 私は、半沢もあまちゃんも一回も見なかったというくらいドラマを見ない人間なのですが、CSの海外ドラマ(の字幕版)は英語の勉強もかねてちょくちょく見たりします。(毎回必ず見る、ってわけじゃありませんが。)こないだチャックの最終回をやってました。特に好きな番組というわけではありませんが、最終回ということで見てしまいました。内容ははっきり言ってつまらない、というか、つまらないから終わって(打ち切りになって)しまうわけですが(そういえば、CSIマイアミも、最近ホレイショがあまりに臭すぎて(ありえないくらいの正義の味方過ぎて)見てるのがしんどくなってきたな、と思っていたら、やっぱり打ち切り、ってことになってしまったようです。)、最後の最後のエンディングでかかっていた曲がなかなかよかったので、歌詞も含めてチェックしてしまいました。

The Head and the HeartのRivers and Roads。さびの部分は、
Rivers and roads, rivers and roads, rivers and roads, till I reach you
のリフレインです。
 あなたに会うまでには、幾多の山々、道々を越えて行かねばならないのでしょう。(あなたとの間にはまだ、幾多の山々、道々があるのでしょう。)
 みたいな感じでしょうか。ここでの「あなた」とは、大事な人のことなんでしょうが、まだ出会っていない人(あるいは比喩的な意味での「神」)のことかもしれないし、失って(亡くして)しまった人を意味することもありえるでしょう。分かれてしまったけれども、またいつか会うかもしれない人。でもそれまでにはまだまだ越えていかなくてはならない長い道がある...

 女性のボーカルの声質は必聴ものです。この声持ってるだけで飯が食える、みたいな。さびの部分は一度聴いたら忘れません。いつまでも耳に残ります。名曲です。

 http://www.youtube.com/watch?v=ReQluucmH9A
 ずっと長いこと見たいと思っていた映像に、偶然にも今日ぶつかってしまいました。アナトール・ウゴルスキの1995オランダ運河コンサート。偶然NHKでこの野外コンサートの映像を見たのが(残念ながら途中からでしたが)、動くウゴルスキを見た最初でした。(デビュー盤のディアベリ変奏曲は、ドイツの難民キャンプに居た所を発掘され、50歳を過ぎてメジャーデビューした、という触れ込みに惹かれて購入してはいましたが。)
 とにかくこの運河での野外コンサートの印象が強烈に残ったので、冒頭部を見逃したこともあり、再放送を楽しみにしていたのですが、私の知る限り、再放送されることはありませんでした。またDVDにでもなっていないかと調べてみたこともありましたが、商品化されてはいないようでした。というわけで、今日になってこの映像をまた見ることができるとは、これは神様の思し召しか何かに違いない、とも思えるほどの感謝感激雨あられ、というところです。
 この映像に強烈にひきつけられた、ということがきっかけとなって、ウゴルスキの来日公演には必ず通うようになりました。当時私は大阪住まいでしたが、東京や鎌倉、名古屋、倉敷なんかにまで追っかけをしたこともありました。
 御茶ノ水博士の生まれ変わりとしか思えない風貌(髪型)。常人とは住んでる世界が違う、と言った感じの強烈なオーラ。(大阪でのコンサートの前に、ホール近くの交差点で信号待ちをしているウゴウゴに出くわしましたが、今まで他の人には感じたことがない強烈なオーラを感じました。一種の異次元感覚でしたね。)
 強靭なタッチと万華鏡のような音色。繊細さと野蛮。優しさと、恐ろしくなるような狂気の瞬間。まぁ、ちょっと聞いただけでもまともな人間の演奏ではないことは十分伝わってくるのではないでしょうか。
 最後に生で聞いた頃にはさすがにテクの衰えは如何ともしがたい状態でした。(元々ミスの多い人ではあったようですが。)この映像では、全盛時代、バリバリのウゴウゴを見ることが出来ます。とはいえ、コンサートの性格上スローでメローな曲が中心ではありますが。
 夕方始まったコンサートは、すぐに日も落ち、運河にたゆたう感じのいいムードが出来上がっていきます。(ブブゼラ吹いてる奴もいますが。)運河沿いに集まった観客は、すぐにウゴの世界に引き込まれ、愛の営みをむつみ始めるカップルもちらほら(?)。それでも時折ウゴが炸裂させる狂気の響きに急にビクっとなったりして。これなに、って。
 圧巻はやっぱり最後のペトルーシュカでしょう。(38分過ぎくらいから。)これは衝撃的な演奏です。ウゴのエッセンスがつまった演奏でしょう。やりたい放題です。ペトルーシュカ(ピアノ版)演奏史上に残る名演(快演)と言ってもいいのではないでしょうか。騙されたと思ってこの曲だけは是非聞いてみてください。仮にウゴのことを好きにはならなかったとしても、こんな演奏をするピアニストがいるんだ、という強烈な印象は必ず残ることと思います。本当、ウゴの全てが凝縮されたような一種異様な演奏です。私は生でこんな演奏が聞けるのなら、十分お金払ってコンサートに行く価値があると思います。私はこれを見てウゴウゴの追っかけになりました、と言っても過言ではない逸品です。
 http://www.youtube.com/watch?v=iFnwt031QPI

PS
1994年、まだ西側に亡命直後で、痩せていて貧相なみなりのウゴルスキのインタビュー映像がありました。ドイツ語で字幕もなく内容は皆目わかりませんが、どこの路上生活者かと見紛うばかりのウゴウゴの姿は一見の価値あり。後半にはディアベリ変奏曲の演奏風景の映像もあります。ウゴマニアのかたは是非どうぞ。

http://www.youtube.com/watch?v=QJOBO3x3Pq8
 ジュリアス・カッチェンというピアニスト。知りませんでした。今日たまたま昔買ってたエルネスト・ブール指揮、南西ドイツ放送交響楽団がバックの、プラームスのPコン(1番)を聞いていたら、これが妙によくて、ピアニストの名前を見るとカッチェンでした。ブール、南西ドイツ放送響の金属的で明晰な音響とよくマッチしています。
 60年代の演奏ですが、(録音はともかく)演奏には全く古さを感じません。驚くほど現代的な響きです。ブールはロスバウトの後任ですが、ギーレンへと受け継がれていくSWRサウンドの命脈を感じます。これは繰り返して聞きたくなる。
http://www.youtube.com/watch?v=GvdNlBjd2iY
 たまたま、日本語の字幕のついたジジェクのインタビューの動画を見つけました。2009年(リーマンショック後の金融危機のさなか)のものでちょっと古いですが面白さは新鮮です。動画再生、ってとこをクリックしてください。これであなたもジジェクのとりこになる。ジジェクもこの当時もう60くらいになってるはずです。例によって元気です。私も60になった時こんなジジイになっていたいものです。それにしてもジジェクだったらこの日本の笑おうにも笑えない選挙をどんな笑い話にしてくれるのでしょうか。選挙特番のコメンテータにでも呼んでもらいたいところです。
http://democracynow.jp/video/20091015-2/
 昔買ったCDをいろいろ聞いている今日この頃です。今日はアントン・バタゴフというピアニストが弾くメシアン(幼子)を聞いていました。異常に遅いテンポが(一部で)話題となった演奏です。私が持っている彼のCDはこれだけですが、彼の演奏は押しなべてどこか異常なもののようです。youtubeに彼が演奏するドビュッシーのライブ映像がありました。雪の上の足跡。私が個人的にも大好きな曲です。アファナシエフにもこの曲の個性的な演奏がありましたが、バタゴフの演奏はそれ以上と言っても良い独特のものです。異常に遅いテンポ。極めて集中した内省的な雰囲気。多様な音色の対比。こんなドビュッシーは聞いたことない、と言っても過言ではありません。
 バタゴフは作曲家でもあって(ポスト)ミニマル派、と呼ばれているそうです。このドビュッシーの演奏も正にミニマルアプローチと言えるのではないでしょうか。因みにこの人、天使になりたいと言ってチベットに行っちゃったそうですが、最近また社会復帰されたとのことです。
http://www.youtube.com/watch?v=mCXVQtKG8to