秋田県は初めて訪れる場所でもあり,地理に不案内なので1泊2日の観光コースをどこにしようか迷いましたが。秋田新幹線の田沢湖駅を起点に定番の田沢湖を巡り,泊まりは新玉川温泉にしました。温泉フリークではないので秘湯巡りで人気の高い乳頭温泉郷は避けました。
田沢湖まではJR田沢湖駅前の羽後交通のバスで15分ほどの距離でした。小学校の頃の社会科の授業でも,日本一の水深(423 m)を誇る湖と教えられた有名なカルデラ湖です。かつては摩周湖に次ぐ透明度だったそうですが,水力発電開発のために玉川から導入された酸性度の強い水の影響で水質は劣化し,国鱒(クニマス)などの固有種の魚も絶滅し透明度も失われたという黒歴史を背負った湖です。現在は酸性度の強い水にも適応できるウグイが多数生息していました。
白浜-潟尻-白浜の湖周回の観光船に乗って湖の風景を眺めましたが,ペルシアン・ブルーと称される藍色の湖面と遠くに聳える秋田駒ヶ岳の山容を臨むことができて幸いでした。台風一過の青空と太陽の恩恵に感謝しなければなりません。
観光船からは「辰子像」の近くには寄れないので,黄金に輝く辰子像の写真はWikipediaから拝借しました。昭和43年作とのことなので,設置されてから今年で55年になるのだなと思いながら船上から後ろ姿を拝んできました。
辰子伝説については,秋田県を中心に伝承される壮大なスケールの三湖伝説の中での物語が有名です。鄙にも稀な美貌だった辰子は,永遠の美を求めて観音菩薩に願掛けし,菩薩のお告げに従って山中の泉の水を飲んだところ,激しい口渇に苦しみ出します。ついに辰子は龍に変身して泉から湖となった田沢湖の龍神となってしまいます。そのような悲しい運命の辰子でしたが,八郎潟に棲む龍神である八郎太郎は田沢湖に潜む辰子に関心を抱きます。やがて辰子と八郎は厳冬期ごとに逢瀬を重ねて,龍神同士の仲睦まじいの恋人として永遠の愛を得たようです。恨みと悲しみをかかえた龍の宮物語のような物語を想像していたので,意外にもハッピーエンドな顛末には驚きです。結局は龍に化身しても美人は得だというお話なのかもしれません。