ロンドン・バービカン劇場で2022年10月8日(土)~2023年1月21日(日)まで上演されたロイヤル・シェイクスピア・カンパニー(RSC)主催の舞台『となりのトトロ』(宮﨑駿・原作/日本テレビ制作協力)が好評だったようで,今年のローレンス・オリビエ賞の9部門(演出,主演女優,作曲・編曲,振付,舞台美術,衣装,照明,音響デザイン,エンタテインメント)にノミネートされているそうである。どの部門でも最優秀賞が獲れればいいなと思う。
この作品の海外での舞台化を発案したのは,久石譲さんとのことである。宮﨑駿作品の普遍的なテーマを演劇作品として広く喧伝したいという意図によるものだろう。『となりのトトロ』は昭和30年代の日本の田園地帯や里山を舞台にしたサツキとメイ姉妹と森の生き物トトロを主人公にした人間と自然の調和と根源的な人の優しさを主題にしたアニメ映画である。登場人物のキャラクターや祖霊のようなトトロやススワタリの姿はきわめて日本的であるが,これらをRSCの演出陣が原作に忠実に演劇作品に昇華した点がロンドンの観衆にも好意的に受け入れられたのであろう。
音楽については,ミュージカルのように俳優が演じながら歌うのではなく,専門の歌い手を舞台に配して歌唱を担わせるなど,俳優が演技だけに集中できるような演出が工夫されているらしい。Trailerも公開されているので実際にどのような舞台作品となっているのか確認したい。
何れにしても宮﨑駿さんのアニメ作品は,どれも普遍的な人と自然の交流や人と人の結びつきを丁寧に描いた名作が多いのでノーベル文学賞にノミネートされてもおかしくないように感じる。
引用文献:讀賣新聞2023年4月1日,週刊エンタメ記事。英ローレンス・オリビエ賞 舞台「となりのトトロ」9部門ノミネート(田上拓明記者).
舞台作品「となりのトトロ」のポスターを引用