ミュージカル『東京ラブストーリー』を観て現代に生きる赤名リカを思う | to-be-physically-activeのブログ

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 ミュージカル『東京ラブストーリー』を観て来ました(刈谷市総合文化センター大ホール,愛知県)。夜の部は「空キャスト」で構成され,主な出演者は,柿澤勇人さん(永尾完治役),笹本玲奈さん(赤名リカ役),廣瀬友祐さん(三上健一役),夢咲ねねさん(関口さとみ役),綺咲愛里さん(長崎尚子役)の5名でした。今回のチケットは綺咲愛里FC枠で手配しました。ですので元星組トップ娘役同士の共演となった夢咲ねねさんと綺咲愛里さんの演技にも注目しながら,初の舞台化となった伝説のトレンディドラマを楽しみました。梅棒さんの舞台を観るチャンスを逃したので,久しぶりに綺咲さんの演技と歌(劇中歌「鏡の中の私」)をライブで聞けてよかったです。

 開演前の劇場内には微かに波の打ち寄せる音が効果音として響き,誰もいない砂浜を想定した舞台にダンサーの引間文佳さんが唐突に登場してソロダンスを披露するという前衛的な舞台演出で迎えられました。

 原作は柴門ふみさんの「東京ラブストーリー」(小学館「ビッグスピリッツコミックス」刊)ですが,なんといっても我々の世代にとって記憶に鮮やかなのは鈴木保奈美さんと織田裕二さん主演のフジテレビ系列で大ヒットとなった『東京ラブストーリー』です。放映されたのは1991年1月7日~3月18日とのことですが,当時は米国で研究生活を送っていたのでリアルタイムで視聴する機会はありませんでした。インターネットもない時代でしたので,外国に住んでいると日本語のテレビ番組が恋しくて,近所に住んでいた日本人研究者のご家族がVHSビデオ用に全編を録画したテープを持っておられたので,それをお借りして異国の地で『東京ラブストーリー』や『101回目のプロポーズ』を楽しみました。

 今回のミュージカル化された『東京ラブストーリー』。脚本家の佐藤万里さん,演出の豊田めぐみさんによって物語の設定が2018-19年に変更されていますが,テレビドラマのエピソードを最大限に活かしながら現代風にアレンジされた内容になっていました。テレビ版では赤名リカはアメリカ育ちの帰国子女という設定でしたが,舞台版ではジンバブエ出身で東京育ちという設定になっている点。さらに永尾完治と赤名リカが勤務するしまなみタオル東京本社の営業部長・和賀夏樹がテレビ版では西岡徳馬さんだったのが舞台版では高島礼子さんが演じる女性の上司になっている点が大きな変更でしょう。さすがに今の時代に部長と女性社員が会社内で従属的な愛人関係になっているのは不自然との判断なのかもしれません。

 テレビ版では,鈴木保奈美さん演じる赤名リカが時代の寵児のような女性像として支持を得ました。社会的な制約や倫理的自己規制を超越して自らの意思で自由に考え行動し,女性主導で恋愛にも積極的にチャレンジするリカの生き方に共鳴し,勇気づけられ,憧れを抱く女性が多かったことでしょう。その一方で今も昔も恋愛や結婚については,女性はしばしば受身の立場に甘んじなければならないことも事実です。社会的にはガラスの天井に阻まれ思うような活躍ができず,結婚や子育てという局面でもガラスの床が存在し,シングルマザーともなれば生活に困窮し会社での昇進もままならない危うい立場に追い込まれやすくなります。90年代初頭に赤名リカが置かれていた状況は,現在でもそれほど変わっていないのかなと思います。

 初恋の人・関口さとみ(夢咲ねね)への思いを断ち切れない永尾完治(柿澤勇人)に別れを告げた赤名リカ(笹本玲奈)が,その後どのような生き方を選択して人生を歩んだのか?ミュージカル『東京ラブストーリー』を見終わった後で様々な思いが去来しました。

 

公演記念キャンディー(Campo d'Oro, Fukuoka)