名古屋市の日本特殊陶業市民会館で花組公演を観た後で,市営地下鉄の金山駅から2駅目の上前津駅で降りて大須の万松寺商店街に寄った。子どもの頃に母親が好きで,おやつによく食べていた今井総本家の天津甘栗を買うためである。かつては名古屋駅の近くでも売っていたが,最近は大須の本店でしか直接手に入らない(通販でも買うことはできる)。秋の新栗の入荷時期ということで,昔ながらの赤い袋に入った350 g入り(¥2,000)を買い求めた。老舗の甘栗なので少し値段は高いが,子どものころの懐かしの味には抗し難い。
天津甘栗というのは,日本の栗とは違う種類のいわゆるシナグリと呼ばれる種類のクリだそうである。石焼きした状態で比較的簡単に皮がむけて食べることができるのが特徴である。子どもの頃は,歯で殻を噛みながら皮をむいていたが,最近は栗爪が添えられていて上品に皮むきができるようになった。麦芽糖をまぶして栗を焼くので,昔は殻むきの後は指がベタベタになって茶色のおコゲがへばりついたが,最近は焼き方が工夫されているのか皮むきの後もほとんど指が汚れなくなった。天津甘栗の製法も進化しているようである。
天津甘栗という名前は,北京の隣の直隷省であった天津の港から輸出されていたことにちなんで「天津」の地名が冠されているが,実際には北京名物として知られているスナックである。現地では「炒栗子」と呼ばれているらしい。
雪組公演『蒼穹の昴』に登場する李玲玲や譚嗣同も北京の街角で売られている炒栗子を買って食べていたかもしれない。恋人が丁寧に殻を剥いてくれた焼き栗はさぞかし甘かろう。