薮宏太さん演じるジョセフの魅力 | to-be-physically-activeのブログ

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 ゴールデンウィークの最後の締めくくりに,ミュージカル『Joseph and the Amazing Technicolor Dreamcoat』(松竹製作)の愛知公演(刈谷総合文化センター)の千秋楽を観劇できました。アンドリュー・ロイド=ウェバー作曲,ティム・ライス作詞の共作ミュージカルの原点となった作品です。

 日生劇場での舞台(4/7-4/29)を観るチャンスには恵まれませんでしたが,今回はシルビア・グラブさんの関係者の方から愛知公演の観劇の機会を与えていただきました。シルビア・グラブさんは,その美しく嫋やかな歌唱を活かし子どもたちにジョセフの成長の軌跡を物語るナレーターの役を演じました。単なるナレーションとしての役割だけでなく,歌やダンスを通して現代と古代エジプトが時空を超えてシンクロするような素敵な世界観を醸し出していました。

 主役のジョセフを演じるのは,Hey! Say! JUMPの薮宏太さんです。2年前に緊急事態宣言で公演が中止になった悔しさをバネに,今回は歌唱力にさらに磨きをかけ,物語への深い洞察力を養ったうえで,堂々たる演技を見せてくれました。全体にロックテイストの音楽が中心のなかで,薮宏太さんの歌のパートはゆったりした曲調でシナイ半島やエジプトを舞台にした西部劇を観ているような感覚を味わいました。ご本人も「ジョセフはいい意味で周りから浮いた存在であり,どこか異空間にいるような感じがあって・・・」とコメントしていますが,まさにその通りで,他者から超越した預言者のような存在感でした。フィナーレのシーンでホワイトコートを纏って舞台中央ですっくと立つ,その立ち姿がとても凛々しく美しかったです。2年間の雌伏の時を経て,技術面だけではなく座長を担うだけの責任感にも目覚めたようで,年齢層の幅広い今回のカンパニーの堅い絆の要の役割を十分果たしていました。

 Andrew Lloyd Weber作品ということで,オリジナリティあふれる多彩な音楽に魅せられました。今年観たミュージカルの中では音楽的にはベストかなと思います。薮くんやシルビアさんの歌うナイル河の流れのような優しいメロディがミュージカル全体の基調となっていますが,場面展開に応じてロックやカントリー&ウェスタン,アメリカンポップス,フレンチバラード,カリプソなどのリズムや手法がふんだんに取り入れられている,と演劇評論家の萩尾瞳さんの解説でも指摘されていました。確かに1960年代後半から70年代初頭の音楽のテイストが様々な形式で応用されていて,どこか懐かしさと郷愁を感じました。ほぼ二時間ぶっ通しの生演奏で舞台を彩ってくれた指揮者&キーボード奏者の田中葵さんとオーケストラのメンバーに拍手を送ります。