私自身は便秘に悩んだことはないので,マグネシウム製剤などの下剤のお世話になったことはほとんどありません。むしろ急な下痢に襲われることが多くて,止痢剤をいつも旅行鞄に潜ませているくらいです。
しかし,年齢を問わず慢性便秘症の人はたくさんいて,習慣性の強いアロエ,センナ,ダイオウなどの生薬・漢方系下剤を服用していることも少なくありません。これらの大腸刺激性の強い下剤は一旦飲み始めると常習化して,常に大腸に過剰な負荷が加わった状態になります。そうなると粘膜が障害されて偽メラノーシスを生じたり,固有筋層が伸展・菲薄化して腸管運動能が低下して麻痺性腸閉塞を起こす例もあり,ときに外科的に大腸の一部を切除することにもなりかねません。
切除された腸管粘膜は真っ黒に変色し(メラノーシス),顕微鏡で観ると粘膜固有層に褐色の色素を貪食したマクロファージが集積しているのがわかります。これらの色素は教科書的にはリポフスチンと記載されていますが,それ以外にも胆汁由来のビリルビン系の色素なども含まれているようにも思えます。
高齢者は一般的に生薬・漢方系下剤なら安心と信じて服用している人も少なくありませんが,長期連用は思わぬ副作用をもたらすリスクがあるので注意が必要です。