星組東上公演『ザ・ジェントル・ライアー』の千秋楽 | to-be-physically-activeのブログ

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 瀬央ゆりあさん主演の星組東上公演ミュージカル・コメディ『ザ・ジェントル・ライアー ~英国的,紳士と淑女のゲーム~』(原作/オスカー・ワイルド,脚本・演出/田渕大輔)の千秋楽の舞台はとても感動的でした。オミクロン株による全国的な感染流行で,宝塚バウホール公演の全日程が中止という危機に直面しながら,KAAT神奈川芸術劇場での7日間,11回の公演に全力を傾注して公演を成功に導いたカンパニーに心から拍手を送ります。

 演出の田渕大輔さんが,アーサー役に抜擢したのが瀬央ゆりあさんです。田渕さんの言葉を引用すれば瀬央さんは「いつも剽軽でムード・メイカー的存在でありながら,どこかニヒルな影も匂わせる」ような存在とのことです(公演プログラムより引用)。お芝居の中でもその期待を裏切らない多面的な魅力に富む貴族アーサー・ゴーリング卿を演じ,まさにぴったりのキャラクターでした。

 愛とロマンをテーマにした宝塚作品に昇華させるために,衣装も豪華に仕立てられ様々な仕掛けが施されていました。原作の『理想の夫』(オスカー・ワイルド作)ではあまり具体的には描かれてはいませんでしたが,ゴーリング卿(アーサー)の青年時代の苦い恋の遍歴,友人の妻へのほのかな恋心,現実の結婚相手と惚れ込んだメイベル嬢との恋の駆け引きなどがコメディータッチに演じられ,とても愉快なお芝居の展開になっていました。

 瀬央さん以外では,お金目当てに次々と奸計によって男達を陥れようとするチーヴリー夫人(ローラ)を演じた紫りらさんの好演も特筆に値します。音波みのりさんから急に役を引き継いだ紫りらさんでしたが,狡猾で怪しげな魅力で男を誘惑するローラの役を表情豊かに演じていました。瀬央さんと紫さんは95期の同期であり,今回はいわば敵役同士のような関係でしたが短期間で息もぴったりのお芝居に仕上げていました。

 二十代の頃アーサーが片思いをしていたガートルード役の小桜ほのかさん。個人的には星組ではお気に入りの娘役さんです。お芝居の中では,アーサーの親友・ロバート・チルターン(綺城ひか理さん)の貞淑な妻におさまっていますが,理想の夫,清廉潔白な政治家と思い込んでしたロバートが実は外務秘書官当時に出世のために不正な蓄財をしていたという事実に憤慨し,よりにもよって学生時代の同級生でなにかと悪い噂のたえなかったチーヴリー夫人の奸計によってその不正があばかれようとしていることに動揺するガートルードをたくみに演じていました。

 最後にある意味,今回の公演で一番注目していたのが月組から星組に組み替えしたばかりの詩ちづるさんでした。月組ではそれほど長ゼリフのあるお芝居はしていなかったように思いますが,今回の『ザ・ジェントル・ライアー』では主役の瀬央さんと恋のチェースを演じて最後はハッピーエンドで結ばれる役をキュートに演じていました。衣装が変わるたびに月組カラーの黄色のドレスを着ていたのが印象的でした。

 最後は瀬央さんの音頭で“星組!パッション!!”と拳を上げて公演の成功を祝しました。不安だらけの2月でしたが,明るい兆しと春の到来を告げてくれるよい仕上がりの星組の舞台でした。