100分de名著『金子みすゞ詩集』 | to-be-physically-activeのブログ

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 NHK-Eテレの100分de名著『金子みすゞ詩集』(副題:心にこだまする言葉)は,松本侑子さんの丁寧な解説と石橋静河さんの朗読による童謡詩がたくさん紹介されとても心に残るよい企画でした。金子みすゞの人生の軌跡をたどりながら,時系列に沿って詩を読み返すとより深い洞察が得られそうです。

 松本侑子さんは昨年4月に新潮文庫から『みすゞと雅輔』という伝記小説を発表されています。金子みすゞの弟・上山雅輔の日記を丹念に読み解きながら,大正デモクラシーの時代に下関から童謡詩のジャンルでの詩の投稿を通じて中央の文壇へのデビューを志した金子みすゞの実像を描いた小説とのことです。まだ読んでいませんが,100分de名著の番組の中でも詳しく紹介されていました。

 みすゞについては,これまでその詩の内容から汚れなき聖女として描かれがちでしたが,実際には読書家で当時の文芸誌の流行にも敏感であり,様々な作家の作風を参考にしながら童謡詩を創作し児童文芸誌に投稿する意欲的な作家だったようです。師と仰ぐ西条八十の批評を頼りに,同世代の作家たちとも競い合いながら文学者としての自立を目指した女性であったことが番組でも強調されていました。

 時代の制約で童謡詩の流行の衰退の時期と重なり,また女性であるがゆえのジェンダーの壁にも阻まれ,みすゞは生前に自作の詩集の出版という夢は実現できませんでした。どのような逆境にあっても自らの心象風景を詩に託して表現しようとした金子みすゞの懸命な生きる姿が印象付けられました。

 

参考文献:100分de名著『金子みすゞ詩集』(副題:心にこだまする言葉),NHK出版,2022年1月刊。