むかしむかし、

山のふもとの小さな村に、

げんきなお爺さんがいました。

川にざぶん!と入ってバシャバシャ泳ぐお爺さん。

水面には夏の光が反射している。

お爺さんは子どものころ、

川で泳ぐのがだいすきでした。


ある夏の日のこと。


「よーし、今日は一番ながく泳いでみせるぞ!」


と、川にざぶん!と入ると、

水の中からにゅーっと手がのびてきました。

「わっ! だれだ!?」


にゅるり。

つるり。


でてきたのは

あたまにお皿をのせた、へんてこな生きもの。


「ぼく、河童(かっぱ)だよ!」



河童はにこにこと笑って、

「いっしょに遊ぼう!」と言いました。

お爺さんはびっくりしたけれど、

「いいとも!」とこたえて、

それから毎日のように川で遊ぶことになりました。



ふたりは、すいすい泳ぎっこをしたり、

川石をつんでお城をつくったり、

きゅうりをかじりながらお話したり。

「ぼくの頭のお皿、いつも水でいっぱいなんだ」

「ほんとだ! こぼしたらどうなるの?」

「ふふふ、ヒミツだよ」


ふしぎで楽しい時間が、いつまでも続きました。



けれど、ある日。

川に大きな雨がふって、

流れがごうごうと、こわいほど強くなりました。


お爺さんは流されそうになり

「助けて、かっぱー!」


すると河童は、ぐいっと手をのばして、

お爺さんを岸まで引っぱってくれたのです。

「ありがとう、河童!」


「これからも、ずっと友だちだよ!」


けれどそのあと、

河童はふっと水の中に消えてしまいました。

お爺さんは今でも、

川のせせらぎを聞くと、思い出します。


きらきら光る水のなかで、

いっしょに笑った、河童のことを。

「わしはな、むかし河童と遊んだんじゃよ」


お爺さんがそう話すと、

子どもたちは目をまるくして聞き入ります。


ほんとうかどうかは

川だけが知っている、ふしぎなお話です。



終わり