グラジオラスの檻の中で
秘密めいた グラジオラスの群生に
身を潜めていて
息を殺している
わたしは 暫く太陽の下に
踊り出たくはないのよ…
多分世間は 外向き模様
花火打ち上がる 夜ともなれば
ダンスの輪は 繰り広げられ
罪の香りも些かはあれど
傷つく覚悟も百も承知のこと
それ以上の好奇心
抗えぬ真夏の夢…
それすらも 飽き果てた
乾いたわたしは
愉悦も享楽も堕落も憂鬱さえも
もう 離れた…もう 忘れた…
遠い記憶の彼方へ
痛みも感じない
今は青磁みたいな横顔のまま
心とやらが 動くのを待っている
鮮やかなグラジオラスの檻の中で
まあるく まるく
蹲って ただ眠る
本物の真夏の 夢を見てる
悪夢では 無い
夢が みたい…
おもひでを 拾ふことには
飽きてをり
それかといふて
心動くことも なかりせば
石像となり 今は夢を
微睡まむとおもふ
夏の逝くまで…