糸巻き詩
紡いだばかりのまっすぐで
穢れない糸のように
純粋な愛を織りました
上面を撫でた愛でなくてよかったわ
それは遠い遠いむかし…
縫い上げる一枚の布には 至らなかったけれど
傷つくことも恐れず
切れる筈もないと信じて
誠実に縫い続けたことを
嬉しく思っていたわ
あの人はもはや彼方に
綺羅星として君臨し
わたしは 街の片隅の
小さなアパルトマンの
燻んだ部屋の片隅から
見上げる夜空の高いことを
まざまざと思い知らされ
意地悪い風に晒されては
時折 風邪を拗らせているけれど
分かっているのは あの人と
同じ場所にやがて帰結すること
欠けたお揃いのカップで
熱いお茶を啜りながら
今宵も あまり過ぎた糸を
巻取り続けるの
むかし ふたりして
旅先で出会った
ロマーノに習った詩…
♪あの人を思わない夜など
一日たりとも無い
もしも出会い叶えば
一言 恨み言を言いたい
そして出会えてよかった♪
そう口遊みながら…