舒懐 | 口遊〜鳴きウサギ〜

口遊〜鳴きウサギ〜

生きる為に 息をするのを忘れていた
わたしのまわりが 息をするには狭すぎる
野々草を摘んで 口遊みなが ゆっくり ゆっくり歩きたい
勝利者とは誰のこと?
居心地の悪いところに居たくはないの


ー舒懷ー

あの人がいないなら
わたしの命などどれほどの
価値もないのだといい
甘っちょろいことを抜かすなと
まわりに酷く叱られて
それでも 諦められなくて
二度と敷居は跨ぐなと言われ
帰るもんかと捨て台詞して
故郷を後にした  
若い日もありました

熱に浮かされたような恋は
それでも多分
曲がりなりにも始めて好きと言う
思い…
そんな血眼な自分に
惚れたのかもしれぬ

あの人のことはぼんやりと
覚えているくらいで
自惚れた恋だった
文字通り自惚れた恋でした

跨ぐなと言われた敷居は
もっとも怒りの強かった人の死を境に
だんだんと低くはなったけれど
許される日は無いのでしょう

あの人もいない今
わたしはひとり
人生の長い螺旋階段に蹲り
見上げるに先の知れた 
天を見上げますと…

小さく開いた明かり取りの
小窓から
残照が差していて
それぞれの信仰する
ありがたいものが響いています

夜ともなれば
月に星の瞬きが
ちらちらとみえて
けれどこの上なく孤独で
この上なく無常であることを
物語っています

この螺旋階段を昇り続ける限り
もはや降りることは許さないし
何も持っていけないのだよと…
歌っているようです