古い暗号 | 口遊〜鳴きウサギ〜

口遊〜鳴きウサギ〜

生きる為に 息をするのを忘れていた
わたしのまわりが 息をするには狭すぎる
野々草を摘んで 口遊みなが ゆっくり ゆっくり歩きたい
勝利者とは誰のこと?
居心地の悪いところに居たくはないの

ー古い暗号ー

古い手紙を読み返し
アンダーラインを引いてみる
気にかかるあなたの言葉に…

言葉だけは
いつもどれだけ
年を経ても生きているのよ

君の姿が
まぶたの裏に
明滅しているよ…

声に出してしまったら
それだけでもう
叶わなくなりそうな 
願いだってあるんだ…

あなたは
いつだって境界線の
ギリギリに留まる鳥のようだった

わたしが
気にかかるのならば
気にしなくていいから
飛び立って行きなさいな

わたしは地の人
あなたは空を舞う人

所詮 離れるさだめなら
遠く鳥の目で
わたしを何処かで見ていて…

そんなやりとりをしたっけか…

懐かしい手紙は色褪せて
思い出すらもはや
香り立つこともない

だけど言葉だけは
生きていて 
会話を続けている

世界中の撚り糸の中で  
君を選んだ理由を
誰も知らなくても
僕らだけは知っていて
それが切れる理由も
また…

必要ない言葉は
使わないでね 
と…わたしは
あなたを遮って
お仕舞い…

境界線の鳥は
空高く舞い上がったあの日…