うつつ | 口遊〜鳴きウサギ〜

口遊〜鳴きウサギ〜

生きる為に 息をするのを忘れていた
わたしのまわりが 息をするには狭すぎる
野々草を摘んで 口遊みなが ゆっくり ゆっくり歩きたい
勝利者とは誰のこと?
居心地の悪いところに居たくはないの

主に貰ふた万華鏡
陽に透かしては夢うつつ
主ゃこのヨの人じゃああるまい
このからくりは 
ほんに散華じゃあありんせんか…
ありがたい…ありがたい…

やさぐれたこの身の上に
わっちゃ 色溢れたる形の中を
今しも飛び交う蝶になりんす…

   都々逸にもならない…泣

ーうつつー

長いこと 柳行李の中に蹲り
お蚕さまみたいに丸まって
桃源郷のような 朧な夢を
貪ってばかりいたものだから
わたしは 目覚めて
欠伸をひとつ…

大きな背伸びもひとつした…

隣で誰かが歌を歌っていてくれた気も
していたけれど…
あれも幻 夢の名残か…

わたしは 薄い衣を纏って
埃の溜まった床に降り立つ
微かな黴の匂いと時が また静かに
息をし始め 歯車は回転する

なんどか逃避を繰り返し
硬い殻に籠っては
傷を癒して再生する
月より賜る 変若水を飲んで…

今 何という時代の何時頃だろう…

やっと乾き始めた背中の羽根を
肩甲骨から 広げてみれば
もう そろそろ飛べるよう…

丸窓のガラス戸を開けて
ガタピシと錆びたガラス戸を開けて
ふわりと空へ舞い上がる

また傷つくだろう羽根と心を
そっと羽ばたかせながら…
それでも見たい 知りたいと…
好奇心に苛まれ…

傷つくための旅を始める…
わたしという 名も無い羽根を
持つ生き物…

夢の跡名残り惜しさは尽きねども
うつつも見たく知りたくもあり
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