月下 | 口遊〜鳴きウサギ〜

口遊〜鳴きウサギ〜

生きる為に 息をするのを忘れていた
わたしのまわりが 息をするには狭すぎる
野々草を摘んで 口遊みなが ゆっくり ゆっくり歩きたい
勝利者とは誰のこと?
居心地の悪いところに居たくはないの


ー句ー

虫の音にさそはれてみる
     月の晩

ー月下ー

いつまでも幼いままでいられないのに
月夜には
まるで野うさぎのようにときめいている

昔聞いたうたを歌い
薄の伸びた道沿いを いつまでも
歩いていたい心地する

途切れぬ夢はいつになったら
わたしを大人びさせてくれるか

旅に出たような遠い目をして
はるか彼方を見やるとき
山の端や海の向こうに
君の姿があるようで…

快活な君の笑顔があるようで…
ほら もう駆け出したい

あれもしようね これもしたいね
叶わなかった約束を
今ならすぐさま叶えられそう…

童女のようなわたしがひとり
松虫を止めて 夜目の利く 
一羽の小さい鳥となり
羽ばたき出してしまいそう…

こんな大きな月の夜は…
眩しくないから 却ってそれが
少しだけ 秘密の野原

夢でいい
今宵は君へと続く道筋

ほんの夢路を
開けておいて…

童女に戻ったわたしの為に
月窓を  開いて於いて…

ーうたー

野の原を忍び笑いの吾はひとり
    踊るやうに歩く月の夜