銀色薄 | 口遊〜鳴きウサギ〜

口遊〜鳴きウサギ〜

生きる為に 息をするのを忘れていた
わたしのまわりが 息をするには狭すぎる
野々草を摘んで 口遊みなが ゆっくり ゆっくり歩きたい
勝利者とは誰のこと?
居心地の悪いところに居たくはないの

ー銀色薄ー

車でね、うん
出かけたんだよ うん
君が初めてわたしを連れて行ってくれた
そう あの銀色の薄の見える山へさ うん

あんなに嫌がっていた 君の言いつけに背いてさ
わたしが運転してさ うん
君と別れて随分経つから うん
もう 許してくれるかと思って…

なんども道を間違えながら
どうにかこうにか辿り着いたよ うん
だけどね 思えば君がわたしに ハンドルを握らせ無い理由 やっと分かった気がしたよ うん

てんで 運転下手っぴだった
なんどもクラクション鳴らされて
その度 心臓が止まりそうになって
まるで 脱兎みたいに逃げるようにアクセル踏んで
今度はぶつかりそうになり 慌ててブレーキ 踏んでさ…

ねえ 危ないなあ…って言ってよ
ねえ 怖い顔して怒ってよ…

だけど 君と見たあの美しい銀色の薄
どこにも無かったんだよ
確かに同じ場所に行き 同じ場所に薄はあったのに
君と見た美しさなんか…

もう どこにも…無かったんだよ…

君の声が 聞きたい…あゝ…