偽りの湖 | 口遊〜鳴きウサギ〜

口遊〜鳴きウサギ〜

生きる為に 息をするのを忘れていた
わたしのまわりが 息をするには狭すぎる
野々草を摘んで 口遊みなが ゆっくり ゆっくり歩きたい
勝利者とは誰のこと?
居心地の悪いところに居たくはないの


ー偽りの湖ー

むかし あなたは沢山の
メールとともに 愛をくれた

それは儚い電子文字の
ひとつひとつに織り込まれ
逢いたいの ひとことにすら
心が揺れていたものだった

距離が狭まるほどに
メールは 数が少なくなってゆき
あなたの乗せた思いの丈も
いつの間にか 風の間に間に
透明に散ってゆく

いまは誰かの為にだけ
懸命にメールを打つあなたの
横顔に浮かぶ微笑みを
見つけてしまったわたしは
手に入れることの無い
愛の言の葉を 
わたし宛では無い言の葉を
指をくわえてみているだけ

離れて遠くあなたを思い
近づいて厭うなら
あなたはいったいなにが欲しくて
わたしにメールを送ったのか?

消去してしまった電子文字
手紙でなんか無くて良かった

別れて跡形も残らない
情緒も風情も無い愛に
なんの思いが残るだろう

ママゴト遊びの残骸が
二人暮した 狭い部屋で
虚しくゴミの山になる

わたしは嘘ばかり吐こうと決めた
あなたはまことを話すけれど
あなたの言葉に実が無い

女は偽りという名の湖を
暗い暗い湖を抱く
誰にもほんとうは見せないし
誰にもほんとうはわからない

ただ 女の嘘に隠した実だけを
誰かに探して欲しくて
暗い湖に 手探りでも
掻い潜り 探し出して欲しいと願う
その人が最良
その人が生涯の愛

だからこそ 偽り続ける
だからこそ 化粧する
だからこそ 装うのに…

醜い部分を抱いたまま
無様な君がいいと言う人を
永遠に待っている

おそらくそれは空から来る人

わたしはあなただと  
信じていたけれど…どうやらまた…

ーうたー

いつはりの中にこそある真実に
     目を逸らしまた偽物の愛

女とは抱く湖の暗過ぎて
     水底深く光届かぬ

君がいふ言の葉なべて軽く舞ひ
   誓ひと呼べぬただの枯葉よ