端境 | 口遊〜鳴きウサギ〜

口遊〜鳴きウサギ〜

生きる為に 息をするのを忘れていた
わたしのまわりが 息をするには狭すぎる
野々草を摘んで 口遊みなが ゆっくり ゆっくり歩きたい
勝利者とは誰のこと?
居心地の悪いところに居たくはないの

ー句ー

まつむしの音(ね)入り西窓たそがれぬ


ー端境ー

気の早い秋が きまぐれに
夏色の街を 高い熱から急に冷ましたから
人は皆どこかで 毒気を抜かれ
呆けたようにしゃがみこんで
わたしも あなたも 行き場所に戸惑ってる

昨日まで 当たり前に思えたことが
おかしなことに 大それたことだと思えました

まるで 夜長につらつらと書き連ねた
愚にもつかない恋文を読むみたいで
なにか いてもたっても居られない気持ちです

わたし 愚かなことを していませんか?
あなた わたしのことを 信じてますか?

揺るぎない昨日までの まぼろしを
秋は 打ち砕く 引き千切る 粉々に・・・

ねえ 破られたまぼろしの夏の日は
どんな絵が切り取られ 飾られてありましたか?
わたしに教えてくれますか?
 

花火の絵?向日葵の絵?青い渚?
あの日 ふたりで見た夕立の後の虹の橋?

季節が 人を変えるのか・・・
人が 季節に染まって うつりゆくのか・・・

あなたの指は いつまでも
とめどなく あたたかい筈だと信じてたのに

秋風の心地よい冷たさは
わたしたちの熱を 予想外に
奪ったね・・・

とりわけて 今年の秋色は
濃くなって行くようで 不安です


ーうたー

まぼろしの季は砕かれて追憶と成り果て鈍くたそがれる街