桜と烏と月と | 口遊〜鳴きウサギ〜

口遊〜鳴きウサギ〜

生きる為に 息をするのを忘れていた
わたしのまわりが 息をするには狭すぎる
野々草を摘んで 口遊みなが ゆっくり ゆっくり歩きたい
勝利者とは誰のこと?
居心地の悪いところに居たくはないの


ー句ー

昨日(きぞ)莟(つぼみ)けふ満開の桜哉



ー桜と烏と月とー

桜の影に 闇の落つ
ほとほとと 莟ほどけば 艶の雫は毀れるものの

胸の痛みと共するように
痛み伴う 花の 満開

狂気 正気
夜の闇を 身を捩らする木々の枝間に
月だけが 煌々と
素面のままで 見つめ続ける 

熱を被(こうむ)る身の火照り
噎(む)せ返るばかりの
花粉 花粉

金銀の 夢は千路に乱れて
至るところへ飛び惑ひ

嗚呼 桜 咲き散らかして 我が身の手首と同じ色する
蒼ざめし皮下の血管の薄い赤

思ゐ断つ術を知らねば
哀しき哉 うたも歌えね

如何に 此岸の荒野の土壌に
花と咲けば 花なるかと・・・
さながら 苦悩する意思を持つ生き物のやうである

花鮮やかにあれば あるほど
桜あはれ あはれ
咲くも 散るも あはれ あはれ・・・

夜の闇を切り裂き
月の明りを背負ふた 黒き濡れ羽色の烏
細き女の腕のような 桜の枝に・・・
鋭き爪を喰い込ませ・・・

薄様の薄紅の 桜の枝に 爪立てながら
今 一声 甲高く 啼ゐた・・・


ーうたー

苦もなくて明日をもなくて咲くごとき

  桜眺めむ我愚かなり


★ 今日のあたたかさは 関東では 花曇りでした
ゆえに桜は すっかり満開になったように思います もちろん一部のところだけでしょうが・・・思うより いっぺんに咲いて いっぺんに散ってしまうのではないかと・・・少し心配している ウサギです

    鳴兎    拝