恋愛なんて、たいてい勘違いから始まる。
「あれ? もしかして私のこと好きなのかな?」
目が合った。優しくされた。何気ない言葉が妙に心に残った。
そんな小さな出来事に勝手な意味を見いだして、心が動き始める。
勘違いかもしれない。でも、その勘違いがなければ始まらなかった恋も、きっとある。
人生だって、案外同じなのではないだろうか。
先日、YouTubeでタロット占いの動画を見ていた。
「11月の獅子座さんへ」
そんなタイトルの動画だった。
次々とめくられるカードを、占い師さんが丁寧に読み解いていく。カードの意味をひとつずつ説明するだけではなく、それらをつなぎ合わせ、ひとつの物語にしていく。
その途中で現れたのが、フェニックス。不死鳥のカードだった。
再生、生まれ変わり、新しい自分。
ちょうどその日、私は新しい働き方への扉を開こうとしていた。
なんというタイミング。渡りに船とは、まさにこのことだ。
占い師さんも興奮している。画面のこちら側にいる私も、すっかりその気になっている。
そして、最後の最後。
なんと、再びフェニックスが現れた。
フェニックス、2回。
おいおい、出来すぎじゃないか。
その瞬間、私の興奮は確信に変わった。
「11月の獅子座さんへ」というタイトルは、いつの間にか「今、人生の転機を迎えている私へ」にすり替わっていた。
まるで自分だけに向けられたメッセージのように、すべての言葉が響いてくる。
なんて都合のいい解釈だろう。
でも、それでいい。
思い込み、上等だ。
偶然、必然に変えてやろう。
そんな気持ちが湧き上がってきた。
タロットは、偶然引かれたカードから物語を紡ぐものだ。
けれど、その物語をどう受け取り、何を持ち帰るかは、見ている人の自由だと思う。
同じカードを見ても、「そんなわけない」と笑う人もいれば、「よし、やってみよう」と立ち上がる人もいる。
カードが違うのではない。
受け取る人の考え方が違うのだ。
ここで思い出すのが、経営者・稲盛和夫さんの言葉。
人生・仕事の結果=考え方×熱意×能力
足し算ではなく、掛け算。
同じ能力と熱意を持っていたとしても、考え方がプラスかマイナスかで、結果の方向まで変わってしまう。
これはなかなか、恐ろしくも面白い話だ。
「どうせ無理だ」と考える人は、挑戦する理由を探さない。
「もしかしたら、いけるかもしれない」と考える人は、できる方法を探し始める。
もちろん、前向きに考えたからといって、すべてがうまくいくわけではない。
それでも、最初から自分の可能性を閉じてしまうより、ずっと面白い景色が見られるのではないだろうか。
そもそも、新しいことを始めるときに、確かな根拠なんてどれほどあるだろう。
恋愛も、仕事も、創作も。
「きっとうまくいく」という保証など、どこにもない。
あるのは、「やってみたい」という気持ちと、「できるかもしれない」という、少々都合のいい思い込みくらいだ。
でも、その思い込みがなければ、最初の一歩すら踏み出せないことがある。
だったら、勘違いする能力も、立派な才能なのかもしれない。
今回の動画で、私が何より面白いと感じたのは、占い師さんの言葉だった。
カードを読み解きながら驚き、喜び、ときには迷い、それでも最後には、見ている人の背中を押してくれる。
未来を言い当てることより、未来に向かう気持ちを生み出すこと。
そんな言葉の力に、私は惹かれた。
たった一本の動画を見ただけで、明日が少し楽しみになる。
自分の選んだ道を、もう少し信じてみようと思える。
それは、なかなか素敵なことではないだろうか。
あのフェニックスが2回現れたことで、私の未来が約束されたわけではない。
けれど、あの瞬間に生まれた高揚感は本物だった。
そして私は、その高揚感を、ただの気分で終わらせたくないと思った。
あの日の偶然が、いつか人生の転機を振り返ったとき、「あそこから始まった」と思える出来事になっていたら面白い。
偶然を必然にするのは、カードではない。
そのあとを生きる自分自身なのだから。
恋愛も、勘違いから始まる。
人生の好転も、勘違いと思い込みから始まる。
そう考えると、人生はまだまだ面白い。
さて、次はどんな勘違いをしてみようか。
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