迷子少年と猶予世界 -3ページ目

迷子少年と猶予世界

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お題:夏休み前日、戦場、いつも眠くてフラフラしてる子供



小学6年生で初めて同じクラスになった女の子、美月ちゃん。
フレンドリーでクラスの中心的存在の彼女は、人見知りの僕にもよく話しかけてくれる。
それで帰り道もほぼ同じ方向なので、いつしか彼女は僕の唯一気の許せる友だちになった。

3ヶ月が立ち、7月19日。最近の彼女はいつも眠そうにしている。というか、クマがひどく顔色も悪い、足取りもおぼつかなくて、いつ倒れるかと本気で心配になる。
そんなある日の帰り道、

「今年の夏休みは一緒にどっか行こ?」

と彼女が提案してきた。まんざらでもない誘いなので僕はうなずいた。
すると彼女は大喜びして、

「約束ね!」

とフラフラしながら帰っていった。



次の日。
いつもの待ち合わせ場所で美月ちゃんを待っていたが現れず、そのまま一人で登校、ロッカーで彼女の上履きがそのままなのを確認する。

「あれ、今日は来てないのか……」

最近彼女の体調が悪かったこともあって、何かあったのかと不安になりながら教室に向かっていると、誰かに肩を叩かれる。

「あれ?美月ちゃん!?」

ホームルーム中で誰もいないはずなのに、と驚きながら振り返ると、そこに立っているのは美月ちゃんだった。
だが、なにかがおかしい。
すぐさま僕はそう気付いた。
そして彼女の第一声、

「あなたはわたしのクラスメイトですか?失礼ですが、わたしを教室に連れていってくれませんか」

その瞬間僕は寒気を覚えた。
なぜなら、口調やセリフ以前に、彼女は目も、口も閉じたまま喋っていたからだ。
そして僕は得体の知れない恐怖に襲われて、その場から逃げ出した。



教室へ飛び込んで、僕は自分の席で震えていた。
いつもどおり進んでいく授業。いつもと何も変わらない日常。
その中に、僕をとりまくこの世界に、一つの違和感が紛れ込んでいる。それがひどく怖かった。
彼女は、美月じゃない。美月がふざけているようにも見えない。
美月に化けた宇宙人?美月の形をしたロボット?そっちのほうがよっぽどしっくりきた。
じゃあ本物の美月はどこいった?
宇宙人に殺された。連れ去られた。改造された。そんな嫌な想像ばかり頭を巡って、それが冗談にはとても思えず、子供みたいに泣きたくなった。
その時、

「うわっ!!」

教室のドアのガラス越しに、あの美月がのぞいていたのだ。
目をつぶってはいるが、彼女はじっと僕を見ているようだった。
僕はたまらず椅子からひっくり返った。
ダメだ、僕も殺される……美月ちゃんのように、宇宙人に殺されるんだ!!

「あ、美月ちゃんだ!」
「こら美月、なにをしてる!さっさと教室に入れ!」

クラスメイトが、先生が、美月に気付いてドアを開ける。
ダメだ、そいつをいれちゃダメだ!そいつは美月ちゃんじゃない、聞いてくれ、みんな殺されるんだ!!



授業終わり。
美月ちゃんの席にクラスメイトが群がっている。
なぜか、そこに座る美月を取り囲んで、いつも以上に楽しそうにしている。

「……ねぇ、なんなの?」
「あれ、笹木くんは美月ちゃん初めて?」
「……なにが?」
「美月ちゃん、たまに夢遊病になるんだよ!」
「む、夢遊病?」
「寝たまんま学校に来ちゃうの!で、そのまま1ヶ月くらい寝たきりなんだよ?」

……いやいや、そんなことあるわけ、
ていうか、どう見ても違和感だらけじゃないか!裸足だし、口を閉じたまま喋ってるんだぞ!?



そして、疑問を抱えたまま放課後になった。
帰り道が同じ方向なので、俺は恐る恐る美月に話しかけてみた。

「笹木さんって言うんですか。これからしばらくよろしくお願いします」

相変わらず不気味だが、特に害があるようには思わなかった。
僕より馴染みの深いクラスメイトが言うなら、夢遊病なんだろうか……。
そのまま、美月とちょっと打ち解けて、家路についた。



「今朝美月ちゃんから留守電があったわよ」

家に帰ると母さんがそう言った。
見ると、今日の午前3時頃に電話があったみたいだ。

その伝言には、こうあった。
「わたしは、体を宇宙人に乗っ取られているの。一度眠ると、一ヶ月は体を乗っ取られっぱなしになる。それで、もしかしたら明日にはそうなってるかもしれない。
信じられないかもしれないけど、どうか、みっくんだけには信じていてほしい。驚かないでほしい。
わたしは、明日もわたしの中にいる。
わたしの中で、宇宙人と戦ってるから


絶対、遊びに行こうね」





おわり?