新しい超音波検査装置を導入して1年が経過しました。

 

 

 

 

 以前にも書きましたが、この装置はかなり高性能です。当院で導入したのはi800という機種で、i900という最上位機種もあるのですが、画質は同じなのだそうです。したがって、CANONの装置では最高画質であるはずです。画質が良い代わりにお値段もそれ相応で、けっこう大変でした。

 

 なぜそんなにハイスペックな装置を使用しているのか。甲状腺の画像検査で最も重要なのは超音波検査だと何度も書きました。もちろん最高の画像で診断したいというのが最大の理由です。

 

 検診などのスクリーニング検査で甲状腺に腫瘤を認めた、という理由で精密検査目的に紹介されることがあります。その時に検査画像を添付してくれることも多いのですが、高性能の超音波検査装置が使われていて、画像が大変きれいなことがあります。スクリーニング検査の画像のほうがきれいで、精密検査の画像が劣ってしまっては話になりません。そこで最高の画質が得られる機種を使用しているのです。

 

 超音波装置は、メーカーによって画像がだいぶ違って見えます。今まで勤務していた病院はCANONの装置を採用していました。同じメーカーの装置のほうが見慣れていて診断しやすいので、当院はCANONの装置を使用しています。

 最近はインターネットの普及で、あらゆるものが買えるようになりました。医薬品の個人輸入も簡単にできるようになっているようです。便利な世の中にはなりましたが、チアマゾール(商品名:メルカゾール)が普通に売られていることを知って驚きました。

 

「最近動悸がする、汗も多い、手が震える、体重も減った。ネットで調べると、この症状はバセドウ病のようだ。しかし病院に行くのは面倒。チアマゾールというのがバセドウ病の薬らしい。ネットで買えそうだ。」

ということで個人輸入し、内服を始めてしまう。

 

 これは絶対にやらないように。重大な副作用が起きる可能性があるので、定期的な診察、血液検査を受けることをせずに、チアマゾールを内服してはいけません。

 

『日本国内で医薬品医療機器等法を遵守して販売等されている医薬品については、それを適正に使用したにもかかわらず重大な健康被害が生じた場合に、その救済を図る公的制度(医薬品副作用被害救済制度)があります。 しかし、個人輸入された医薬品による健康被害については救済対象となりません。』(厚生労働省のWebページより)

 

 バセドウ病の症状(甲状腺中毒症の症状)に似ているとのことで、甲状腺機能検査を希望される方がたくさん来院されます。しかし実際に甲状腺機能に異常がある方は、かなり少ない印象です。血液検査やシンチの検査でバセドウ病と診断された方だけがチアマゾールによる治療を受けることができます。治療が始まったら、定期的な血液検査が必須です。心配な症状があれば医療機関を受診して診断を受け、正しく処方してもらってください。

 

 

また咲きました。今年ここで咲くのは5回目です。

 「最近声がかすれる」、「声が出にくい」など、声に関する症状を訴えて受診される方がいます。

 

 甲状腺の病気が原因で声に異変が生じる場合、大きく分けて二つの可能性があります。

 

 一つ目は、甲状腺にしこりができることによるものです。甲状腺の背面には声帯を動かすための神経(反回神経)が通っています。甲状腺にしこりができて、そのしこりが反回神経を麻痺させてしまうと、声帯の動きが悪くなり、声がかすれてしまいます。

 

 しこりの種類によって、その後の経過が異なります。しこりが悪性腫瘍の場合、神経に浸潤して麻痺させることになるので、一度麻痺した神経はもう元には戻りません。良性の場合、神経への圧迫、あるいはけん引による麻痺なので、回復が見込めます。例えば、甲状腺嚢胞の場合ですが、内部に液体成分が貯留して急速に大きくなると、神経にダメージが加わって麻痺してしまうことがあります。その場合、内容物を注射器で吸引して小さくすると、麻痺が改善してきます。

 

 二つ目は、甲状腺機能低下症によるものです。慢性甲状腺炎(橋本病)によって甲状腺ホルモンが低下してしまうと、声帯がむくむことによって声のかすれが起こる場合があります。甲状腺ホルモン剤を内服して機能を正常化させれば、声のかすれも改善します。

 

 声の異常をきたす可能性のある甲状腺の病気をご紹介いたしましたが、実際には声の異常から甲状腺疾患が発見されることはそれほど多くありません。声の症状がある場合、まずは耳鼻咽喉科受診をお勧めします。ファイバースコープでのどの中、声帯を診てもらってください。異常がなければ、甲状腺の検査を考えましょう。もし声帯の動きが悪い場合、前記の通り甲状腺が原因のこともありますが、他の原因の可能性もあります。甲状腺の検査を進めながら、引き続き耳鼻咽喉科でもご相談ください。

 

 

 

 家のバルコニーで、コンクリートの隙間からまた花が咲いていました。

 

 

 甲状腺腫瘍の診断に重要なのが穿刺吸引細胞診です。超音波で腫瘍を見ながら細い針を刺して細胞を採取、それを顕微鏡で見て、良性か悪性かを判断する検査です。

 

 注射器に針を付けて腫瘍に刺し、軽く吸引して針の中に細胞を採取します。針で切り取ってくるイメージです。針の中の細胞を空気で押し出してガラスの上に乗せ、薄く押し広げてからアルコールに浸します。それを染色した後、顕微鏡で見て診断します。

 

 針が確実に腫瘍をとらえなければ細胞は採取できません。その点では大きな腫瘍は容易ですが、小さい腫瘍は難しい傾向にあります。深い位置にある場合も難易度が上がります。

 

 穿刺吸引細胞診を受ける方へ、検査時の注意点です。

 

 甲状腺は物を飲み込んだり、発声したりすることで動いてしまいます。針を刺す前、刺している間は声を出すこと、つばを飲むことは控えてください。刺した瞬間に「痛い」と言って動いてしまうと、せっかく狙った腫瘍が超音波の画面から消えてしまい、狙い通りに刺せません。

 

 大きく深呼吸するのもやめてください。呼吸で甲状腺は動きます。息を止める必要はありませんが、普通の呼吸かやや浅めの呼吸がいいと思います。

 

 針がうまく腫瘍をとらえても、必ず細胞が採取できるとは限りません。取れた細胞が少ないと、十分に診断できません。また、血液の流れが豊富な腫瘍の場合、注射器で吸引した際に血液が引けてしまうと細胞がうまく回収できません。

 

 少しでも多くの細胞を採取して診断率を向上させるために、いくつかの工夫がされています。

 

 通常通り、針の中の細胞を空気で押し出した後に、針の中に残っている細胞を液体で洗い流して、少しでも多くの細胞を回収するということが行われています。専用の液体を用いて洗い流して回収するのがLBC(液状化細胞診)です。また、フィルターによって余分な血液などを除去して細胞を回収する方法もあります。

 

 当院は小さなクリニックで検査数も少ないため、LBCやフィルター法は行っていません。細胞が採取しにくい場合には、近隣の大学病院や専門病院を紹介しています。

 私たちは新しい知識を入れるために論文を読んだり、学会に参加して勉強したりしています。知識の整理のために、教科書を買って読んだりもします。まだまだ知らないこともたくさんあるので、教科書はとても役に立つのですが、ときどき明らかに間違ったことが書かれていることに気づきます。最近、とある初心者向けの超音波検査の本の内容で、髄様癌の記載が不十分であることに気づきました。

 

 超音波検査で髄様癌を診断するのはなかなか難しいのですが、その所見は大きく二つのパターンを取ることが知られています。形が悪くて明らかに悪性に見えるタイプと、どう見ても良性にしか見えないタイプです。しかし、その超音波検査の本には、良性所見に見えることしか書かれていませんでした。実際には悪性に見えるタイプと良性に見えるタイプは半々くらいですので、良性に見えるとしか書いていないのは不適切だと思います。

 

 その本にはあらゆる臓器の所見が書かれているので、紙面の都合上まれな腫瘍である髄様癌の所見を細かく書くことは不可能なのでしょうが、まったく知らない医師や技師はそれを信じてしまいますよね。

 

 明らかな説明の不備以外にも、図表の間違いなども結構起こります。(当たり前ですが)編集の段階では全く気づいていないのです。複数人がチェックしているにも関わらずミスが起こります。人間のやることですので、ミスをゼロにすることは簡単ではありません。ただ最近ではインターネットの普及により、ミスがあれば訂正文が配信されますので、そこで正しい内容を確認することができます。

 

 インターネット上で得られる情報に怪しいものがたくさんあるのは皆さんご承知と思いますが、本として出版されていれば大丈夫だということでもありませんので、気をつけたいものです。